縁
デグ視点です。
新章前の幕間のお話です。
時間前後あります。
「島を出て良かったのか?」
島で知り合ったシーフ。
情報屋のアリスが自分に付いて来ていた。
「もちろん。」
そう言って片目を瞑って見せる。
「元々、島じゃ竜力持った竜人に実技じゃ敵わないしね。」
確かに仲間のチャシブさんが見せる超跳躍や縮地と呼ばれる超俊足は竜力の成せる技。
普通の人間では太刀打ち出来ない。
「だから情報屋をシノギにしてたんだけど……まぁ、これも縁って事で」
たしかに宿が襲撃を受け、偶然使う事になった湯屋でサービスを受けた事が知り合うキッカケではあった。
そして、自分が情報を欲しているのも事実だ。
それが竜人の言う[縁]と言う概念なら、多分そうなのだろう。
「それでミケっていうハーフエルフの足取り追えば良いんだよね?」
ハルピアに活動拠点を移し、冒険者兼業で情報屋をするつもりらしい。
「あぁ、そうだ。だが気をつけてくれ。相手は経験豊富な冒険者で中魔法を使う。」
近くに潜伏しているとは思えないが、出会えば容赦なく殺しにかかってくるだろう。
「お仲間には頼まないの?少なくないパーティ資金持って逃げたんでしょ?」
「これは兄を殺された個人的な復讐だ。パーティ資金の持ち逃げなど、自分も含め誰も気にしていない。」
レイカ様はハッキリとは言わないが、自分に復讐を止めさせたいと、お考えの様だ。
ロバート殿とアヤメ殿は引退し、レイカ様を除くと、ミケに因縁残るのは、気づけば自分だけになっている。
「流石、聖女様一行は太っ腹だね。」
アリスは感心したような呆れたような声を出す。
「まずは、当日の足取りを追うよ。ハーフエルフの1人旅は流石にハルピアでも目立つからね。」
「まず北は魔族領だから多分無し。ロバート伯爵と絡みあるから、陸路で東は難しい。」
「残りは陸路で西か海路で船。多分船だね。商隊に1人で急には紛れ込めないから。ハーフエルフなら、なおさらね。」
「船なら港で聞き込めば、とりあえずの行き先は分かると思う。」
アリスは喋りながら考えを纒めている。
無学な自分には考えつかない足取りの追い方。
とはいえ、最後は自分とミケのそれこそ[縁]にはなるだろうが……。
「報告は妓女の文に偽装して渡す様に手配する。大丈夫だよね?」
最近は前に比べ文字が分かる様になってきている。
アリスも竜の島の住人らしくリザードマン語と人間共通語の読み書きが出来るから問題ないはずだ。
「報酬は金貨5枚で本当に良いのか?」
「もちろん。それだけあれば普通1年は食べられるよ。まぁ経費考えても半年は大丈夫。」
「でも……。もう一つ条件出して良い?」
そう言ってアリスは擦り寄ってくる。
「朝までまだあるからさ。もう一回しようよ。」
「そんな事なら、構わない。……」
自分はアリスを改めて抱き寄せた。
どんなシチュエーションで話してたか最後に分かるネタ。
やってみたかったんです。
はい。
私の黒歴史がまた1ページ。




