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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第14章 旅司祭

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これで勝ったと

クララ視点です。

「指輪よ、照らせ!」[使1残2]

ラアナさんが天に手を向け叫ぶと[照明弾]が空に打ち上がり、辺りが明るくなった。


「亡者共、踊ろうぜ!」


短剣と呼ぶには長く、小剣と呼ぶには短い。

そんな微妙な長さの剣を両手に構えたまま、ラアナさんは亡者達の間をすり抜ける。


逆手に構えられた、それは振っている様には見えず、ただ体捌きに合せて亡者を撫でているかに見える。

だが、ラアナさんが脇を過ぎだ亡者は灰になってゆく。


なるほど、舞を舞っているかの様だ。

動きの比較的遅い亡者とはいえ、ザコは全て任せろと言ったのは伊達ではない。



ザコではない方、赤い負のオーラに包まれた故ゲショス十人長とハイレン司祭は互いに向きあっている。


「シュネッケ様の同窓だけあり、1筋縄ではない方とは見ていましたが……。」

片手半剣を両手に構えゲショスは言う。

「まさか特務班の妖魔(トロール)使いとは……」


「買い被りです。」

答えるハイレン司祭に向けゲショス十人長が先に仕掛ける。


両手持ちの横薙ぎの一撃から片手を離しての切り返し、振るうのが人間なら隙だらけの大振りだが死霊騎士だと必殺技の連続攻撃。

ハイレン司祭はバックステップを繰り返し下がる一方だ。


「逃げ回り時間を稼ぐつもりですか?こちらは息が上がったり、疲労が溜ったりしないのですよ。」

余裕を見せ3度目の片手横薙ぎを仕掛けた時、隙を見たハイレン司祭は踏み込み鉄球を左胸に当てた。


モーニングスターが一瞬輝き、当たったゲショスの胸からは白煙が上がる。

複数の肋骨が粉砕される音も響き、人間なら重傷だろう。


だが、相手はアンデット。

一歩下がっただけで、ここぞとばかり今度は振り下ろしの斬撃。

間合いが近い為足捌きだけでは躱せない一撃だったが、丸い小楯を斜めに当て凌ぐ。


そして逆に横薙ぎの一撃。

鉄球は今度は左脇腹に直撃し、流石のゲショスも飛び退いた。


[幻影濃霧](使1残9)

ゲショスの足元から霧が吹き出す。

「特務班付き司祭は伊達でありませんね。」


改めて見れば20近くいた亡者共も半分以上が灰になり、残りも時間の問題に見えた。

霧が段々濃くなる。


「ですがハイレン。これで勝ったと思うなよ。」

[空間跳躍](使5残4)

ゲショスの声が遠ざかる。

霧が晴れると、そこに[死霊騎士]の姿はなかった。




「あの負け惜しみ野郎は何処に消えたんだ?」

残ったゾンビ、スケルトンなどのザコを灰に還した後にラアナがハイレンに尋ねる。


「近くに[永遠の神]のシンボルが祀られているのでしょう。そこに逃げ帰り回復を待つはずです。」

アンデットは灰にならなければ、時間さえあれば自己修復すると言う。

ダメージを負ったゲショスは今頃呪詛を吐きながら回復を待っているのかも知れない。


「しかしハイレン、アンタ本当に脱走兵か?たいした腕利きじゃねぇか?」


「ある貴族のヘイトを買っています。戻れば軍法会議の末、処刑されます。」

ハイレン司祭はこれといった感情なく淡々と語る。

だが、何故だろう?

悔しさが滲み出ている様に感じた。


「ラアナこそ、その長い2本の短剣は魔剣ですよね?私をザコを一掃するまでの時間稼ぎの囮にしていたでしょう?」


「わりいな。だが気付いてたなら、囮じゃねぇ。作戦って言うんだ。」

笑いながら悪びれずラアナは返した。


「アタイも[茶色い雪兎]とやらに加えてくれ、トロール程じゃないが役に立つからよ」


こうして同行者が1人増える事になった。

この章はこれで終わりです。

よろしければ、感想、評価、いいね、をお願い致します。


私の黒歴史がまた1ページ。


一応連休でしたが、休み前に不条理な切れられかたされ、気分悪く過ごしました。

活字と言う異世界に浸って回復中……。


あぁ現世に引き戻される〜。

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