砦跡
ジグ視点です。
雨風強いときに無理に動くと遭難しやすいといいます。
濡れると、体調も崩しやすくなりますし、旅人には悪い天気です。
領都まであとわずか、明日の夕方、街の門が閉まる前までにはつけるだろう。
ただ、昨日から雨が降ったり止んだりで、今も雨がいつ降り出してもおかしくない様子だった。
「雨の中歩くほど、急ぐ用事はないだろうミケ?」
ロバートさんが確認する。
ミケさんが頷く。
「なら決まりだ、砦跡に行こう。あそこなら多少なりとも過ごしやすい。」
街道から少し外れるが、領都が出来る前の砦跡が近くにあった。
地元を旅する住人なら知っている場所で、森に囲まれた小さな丘になっていて、水捌けが良い。
やがて再び、雨が降り始め、砦跡につく頃には本降りの雨になった。
「少し、妙だ。」
あたりをぐるっと見てまわった後にロバートさんが話す。
「あちらに張ったテントがそのままになっていた。」
「先客がいるかと思って、声を出しながら近づいたが、誰もいない。」
雨が酷くなってきていた。
あたりが白く見える。
「テント近くに争った跡はない。多分、森に水を汲みにいき、なにかあったのだろう。」
「この雨の中での移動は反対。」
ミケさんが話す。
「あたりが見えるここの方が戦いやすい。」
「だが、荷物の数からして4人行方不明だぞ?」
それを無力化したなら、相手はそれなりの戦力なはずだ。
ロバートさんの懸念もわかる。
「だったら尚更、森で待ち伏せされたら、一網打尽。」
話し合いのすえ、夜になる前に雨が止んだら、移動する事にした。
しかし、日がくれる迄に雨は止まず、かえって酷くなる気配までする。
結局、破棄してもいい様に、張ってあった何者かのテントで野営をする事になった。
夜。
ミケさんと、レイカさんの魔法組は寝かせている。
男3人で2人起き、1人眠るローテーションで警戒中だ。
今は弟がイビキをかいている。
「このまま朝になりゃいいが。ゴブリンだと1ダースはいる計算だ。」
「もし、そうならどうします?」
自分が尋ねると
「領都まで行って、依頼を受けてから戻ってくるさ。」「街道沿いにゴブリンの巣ができたら討伐依頼出るからな。」
確かにただゴブリンを倒しても金にはならない。
雨は降り続いている。
闇の中でボンヤリと黄色い何かが動いている。
それは段々と近づいてきた。
天候悪い。
農業が主産業になるこの世界では必ずしも「悪い」
訳ではありません。
私の黒歴史がまた1ページ。




