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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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火蜥蜴の夜

前半ブレナ目線です。

後半の目線はチャガラ?視点です。


「これからどうするっすか?」

[双頭の蜥蜴亭]で夕食を取りながらチャガラさんが言う。


「うーん、実は鈴蘭さんとアヤメからケリー先生に手紙を預かったんだよ。」

レイカさんが困った感じで告白する。

「ただハルピアの珍獣熱が冷めてないと困った事になる……。」


「珍獣?って、龍星号っすか?」


「バカか?騎獣大蜥蜴なんて珍しくも、なんでもないだろ?」

チャシブが突っ込むが、私を含めた皆の意見をデグさんが代弁する。

「いや、珍しい。少なくとも人間の領域では馬が一般的だ。」


チャシブがそうなのか?

と言う顔でこちらを見るので頷いた。

「あっしはバカじゃないっす」

自慢げなチャガラさんにチャシブは悔しそうだ。


「しかし、リキタ伯領に行くにはハルピア経由が最短です。ハルピアには立ち寄るだけにして、単独行で移動するのはどうですか?」

私の提案にレイカさんは考え込む。

確かに珍獣、いや聖女熱が冷めてなければ、ハルピアから出られなくなる恐れまである。


「ハルピアに寄らずに魔術と金融の街ニューエンか聖王国の聖都に向かう手もある。手紙は他の冒険者に任せるならな。」

チャシブが提案し、レイカさんは「むぅ」と応じた。


「やっぱり、一度ハルピアに戻るよ。アヤメが結婚した事ケリー先生に直接伝えたいからね。」

レイカさんが決断をするとデグさんが頷く。

アヤメ殿は私をリーダーに後継指名したが、[竜の卵]のリーダーはレイカさんだ。

私はチャシブと共にレイカさんのフォローにまわる事に決めている。


「なら、明日の夕方の船で出発っすね。」

そういうとチャガラさんは席を立った。


「[くらわんか]にツケを払いにゆくっす。」

ふらふらと店を出て行く。


「私は大地母神に泊まるよ。フロアさんがお迎えした猫さん達、撫でる約束しているんだ。」


「自分はレイカを大地母神殿に送って、その足で湯屋に行き泊まる。」

レイカさんとデグさんも出て行く。


「ブレナ、腰に来ないぐらいでな。」

去り際にデグさんが余計な一言を残し、私とチャシブは顔を赤くした。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



遠くから見ても赤提灯が灯っているのが見える。

安くて旨い[くらわんか]。

ツケを払う前に一杯飲むのも悪くない。

この島を出たら米酒も芋酒も手に入らないと茶渋姉に聞いている。


[くらわんか]の縄のれんを潜ると、女将さんに、「奥でお客様がお待ちですよ。」と小声で声をかけられた。


誰だろう?

島を出る事を知った道場の仲間かな?

そんな感じで[くらわんか]奥の小部屋に通される。


え?

何で、こんな所に?

なんだろ……頭が……。




「来たか雫」


「お館様、太守就任おめでとうございます。御息女も[竜白]様に嫁がれ……」


「余計な挨拶はよい。聖女の仲間(パーティ)には潜り込めたか?」


「はい、憑依した肉体が聖女の仲間の知り合いですので。」


「ならば良い、聖女の情報を適時伝えよ。必要なうちは護るが、害になる様なら消えてもらう、良いな?」


「はい、仰せのままに。」




[くらわんか]の女将に揺すって起こされる。

どうやら奥の部屋で寝ていた様だ。

「あれ?あっし寝てたっすか?」


「はい。いらっしゃって直に芋酒を開けられて。」


「……そうっすか。」

何か変な夢を見た気がするし、酒には弱くないはずだが、疲れてたのかも知れない。

音からするにもう閉店時間を過ぎている様だ。

随分寝ていたらしい。


「空腹で煽る様に飲んでは酔いますよ。何か食べる物を運びますね。」

そんなに待たず豚肉を甘辛く煮た物と白飯などを膳に乗せて運んでくる。


「出発は明日ですよね?寂しくなります。」

女将が微笑む。

師匠を巡っての最大のライバルと思っていた相手だが、まさか娘の方に出し抜かれるとは思わなかった。


「そうっすか?その言葉だけでもありがたいっす。」

飯を喰いながら返事をする。

旨い。

それに、スラム上がりを気にかけてくれていた数少ない相手に感謝しかない。


「よろしければ、一献付き合ってくださいな」


「いいっすよ。」


その後、遅くまで米酒の入った別れの盃をゆっくり味わった。

私の黒歴史がまた1ページ。

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