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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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冒険者の死

デグ視点です。

初投稿してから1年経ちました。

お読みいただける皆さまに感謝を。

「会いたかったよアヤメ〜。」

竜翼の里を訪ねてきたアヤメ殿にレイカ様が抱きついていた。

アヤメ殿は苦笑しながら話している。


「デグ、追手はどうだった?こっちは出港時にアヤメが[死霊武者]を叩き斬った。」

一緒に来たチャシブさんに確認され、リザードマン黄色族の足軽衆とレイカ様が射撃戦をしたと話した。


「そういや[妖魔筒]が新調されてるな。前のより少し長いか?」


「見た目は[オルガ式妖魔筒]だけど、中身は別物だよ。なんとミニエー弾を使うライフルなんだ。」

自分のかわりにレイカ様が答える。


「ライフリングにより、弾にジャイロ効果が発生するから、弾道が安定して射程距離も……」


「マニアック過ぎて分からねえよ。」

チャシブさんはサラッと受け流した。


「むぅ!マニアックじゃないよ!」

レイカ様は主張するが、自分には意味が分からない。


〘おかえり菖蒲。歩き巫女にはなれた様だな。〙

毎日の様に訪ねて来ている竜桃殿が翼を大きく広げ舞い降りて来た。


「ただいま竜桃。」

アヤメ殿が両手を広げ、舞い降り降りた竜桃殿の頭を抱きしめる。

村人は皆頭を垂れ、チャシブさんは唖然としている。

当たり前にしているのは自分とレイカ様ぐらいだ。

いや、もう一人居た。


「おかえりアヤメ。」

白髪のハイリザードマンの少年が声をかける。


「竜白……。」

アヤメ殿は微妙な表情をし、それだけ呟いた。




「うーん、これから[竜の卵]会議を行います。議題は[アヤメと竜白君の結婚について]です。」

里の外れで[竜の卵]4人と[竜の姉弟]2人の計6人が顔を合わせる。


「レイカが司会だと、どうも緊張感に欠けるな。」

隣で呟く声が聞こえる。


「じゃあチャシブ、司会する?」

どうやら聞こえたらしい。


「俺はゴメンだ。」

隣で慌てて首を振っている。

普段ならアヤメ殿が仕切るのだが、当事者故だろう沈黙を保ったままだ。


「まず互いの気持ちはどう?」


「僕はその……菖蒲と結婚したい。ハイリザードマンは色々ままならないけど、母上から菖蒲が許婚と聞いた時は、ハイリザードマンに産まれたのも悪くないと初めて思った。」

竜白殿が伏し目がちに話す。

食うには困らない高貴な産まれにも悩みはある様だ。


「私にも異存はありません。竜白へ恋愛感情がある訳ではないですが、デポさんが前に聞かせてくれた様に結婚してから好意が生じるらしいから……。」

確かデポ姐さんは、自分にもそんな話をしてくれた。


「むぅ、結婚って、互いに好きあってするんじゃないの?」


〘好きあってなど……。エルフではあるまいし、寿命ある人間では子が成せず衰退してしまうぞ。〙

確かにソロス村でも、結婚相手は本人達が嫌わない限りは親や、長老、村長が決める場合が多かった。

当人同士が好きあって結婚するのは、10人に3人ぐらいだ。


「デグ、竜が何を話しているか分かるか?」

チャシブさんに問われ自分が通訳する。


「俺以外全員、古竜語が分かるのかよ……。」

自分が分かるのはレイカ様の治癒魔法を手伝ったオマケなのだが。



「うーん、次に結婚した場合アヤメは冒険者を続けられるか?だけど……」


これには、問いかけたレイカ様以外の全員が「無理だろう」と答えた。


「むぅ、リーダーが抜けたら[竜の卵]は解散だよ。」


「正直、レイカ達と旅を続けたい気持ちもあり、私も迷っている。結婚せずに逃げるべきではないかと。」


〘菖蒲だけなら、背に乗せれば逃がすのは簡単だ。ハルピアあたりまで飛べば良いのだろう?〙


「姉上!」


「だが、俺らは斬首か火炙りか。それにこの島が内乱になりかねないぜ」


司会役のレイカ様が発言したので、それぞれが勝手に発言を始めてしまった。

しかしどうすれば良いのだろう。

アヤメ殿が抜ければ確かに解散はせずとも、大きな変化は強いられる。

兄者なら何と言っただろう。

ロバート殿なら、そして、兄者の仇ミケならば……。


「冒険者は死ぬ事がある。だが1人の死が全員の死に繋がらない様にするのがリーダーだ。」

自分も発言する。


「アヤメ、[竜の卵]を生き延びさせる最善策を教えてくれ。自分の頭では分からない。」

何故か皆が黙る。


しばらく後アヤメ殿が呟いた。

「なるほど、そうか。冒険者としての、歩き巫女としての、私は死んだのだな。」

そしてアヤメ殿が薄っすらと笑う。


「遺言として、次のリーダーはブレナにする。[竜の卵]を存続させるか解散するかはハルピアに戻ってから決めて欲しい。私のパーティ資金の分前は放棄する。」


「アヤメ〜。」

レイカ様は涙目だ。


「俺がブレナに文を出すよ。」

「しかし、デグ。お前は冒険者なんだな。」

チャシブさんが意味の分からない当たり前の事を呟く。


〘母上に話してレイカ達への結納金も弾んで貰う。それにデグ、名乗る時に[竜翼の里]のデグと名乗るが良い。そなたが勇名を馳せた時、我が里の名が広まる様にな。〙

竜桃殿が何故か上機嫌に告げた。

結婚が社会システムに組み込まれていた以前では現実世界でも自由恋愛からの結婚は少数派でした。

現在では奇妙に思えるデグの考えもほんの数世代前までは当たり前だったのです。

婚活が産業化している現在と、どちらが良いのかはわかりませんが、少子化が無縁だった時代もあったのです。


私の黒歴史がまた1ページ。

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