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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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高原へ

ブレナ視点です。

色々思う所はあったが、魔術師ギルドを出て、御前会議の会場になる高原に向う。


近日に開かれる臨時会議の議題は竜翠の息子竜白の降婿先の話で、先例を破り龍鱗の里の一般竜人になるらしい。

つまりはアヤメ殿と竜白の結婚を決める為の会議だ。


竜の真意が分からないので何とも言えないが、アヤメ殿が竜の義娘となれば冒険者など続けられないだろう。

魔王を討伐する勇者一行ではあるまいし、政治的に微妙すぎる。


「最近、師匠の里は密貿易で潤っている様っすからね。竜としても繋がりは太くしたいんじゃないっすか?」

護衛としてついて来てくれたチャガラさんが言う。


「密貿易と知れ渡り大丈夫なのですか?」

政治的事情が分からない私が質問すると、チャガラさんは笑った。


「三族五家、みんなやってるっすからね~」

この島の法である御前会議で[貿易品は火蜥蜴の港を通し、その利益の1割は太守の物とする]と決まっている。

御前会議の議事録は文に纏められ公布されるので文字が読めれば法を理解する事は容易い。


竜への税も、そこから納められるのだが、公船以外に独自の船で交易し、利益を誤魔化すなどは日常茶飯時の様だ。

竜は細かな実質的統治はリザードマンや竜人に任せる方針らしいので、ある程度までなら放任しているらしい。


「まぁ、度を越したら、竜が飛来して瞬殺されるっすからね。付け届けするとか大金を寄付するとか、色々あるらしいっすよ。」

公正な政治とは言えないが、公明正大な無能より、清濁併せ呑む有能が統治者としては相応しい。

竜は基本は「自治分権」の方針で島を上手く治めている様だ。




「そういえば、茶渋姉には何て話すつもりっすか?それとも秘密にするっすか?」

チャシブには秘密に出来ないだろう。

だが、正直に話すのも勇気がいる。

正直まだ決めていない。

その事を話すとチャガラさんは頷く。


「いや、白檀姉の言った通りっすね。『男はヤッテから考えよる。だから何故って聞いても無駄や。そういう生き物なんやから』って聞いたっす。」


「あっしは訊かれなきゃ言わないっすけど、訊かれたら多分嘘つけないっす。」

そう、だから遠からずチャシブに知れる事になるだろう。

アヤメ殿には痴情の縺れはパーティを殺すから、別れたなら、どちらかに出て言って貰うと宣言されている。

今回の場合出て行くのは自分になるのが筋だ。


「ただ、茶渋姉には曖昧にしとくと良いっす。普通なら臆病っすから訊かれないっす。ただ、あの女と縒りを戻すなら、あっしが[雫]の錆にするっすよ。」

どうやら、チャガラさんはチャシブが、なるべく傷つかずに済む方法を模索している様だ。

私は黙って頭を下げた。




夕方。

高原下にはテントが立ち並び、ちょっとした市の様相を見せていた。

そして少し離れた所にはリザードマン部族や竜人家の兵が詰めている。


「二人共、こっちだ。」

甲冑姿の一刀殿が手招きしている。


「土の家が代表を辞退し、我が木の家が火の家を抑えて代表になった。」

今回の臨時御前会議は荒れそうだと噂している。


アヤメ殿が島を出た理由の虚偽報告、街やその近郊での暗闘、竜の姉弟の暗殺未遂、竜は激怒しており太守が解任される可能性まで出ていると聞いた。

任期10年2期までの太守は権力と富が約束される地位。

途中での解任は不名誉だけでは済まない。


「茶殻とブレナ殿は足軽待遇で護衛兵に紛れ込める。」

紀一刀(きのいっとう)を名乗る一刀殿は木の一族でも有力一族のひとりらしく、我々を護衛に上手く捩じ込んでくれた。


「一刀は本人の意に反して、刀術より政に才がありそうなんすよね。」

チャガラさんは呟く。

「刀に関しては熱血バカなんすが、それ以外は冷静に利害を客観視出来たり、根回ししたり、有能なんすよ。」

湯屋で激高したり、道場でアヤメ殿に敗れたイメージからは遠い。


「さぁ出発っすよ!」

リザードマン三族の族長と今回の竜人五家代表、木の家の当主、そして火蜥蜴の太守が、それぞれ護衛を連れて高原へ進み始めた。

そして、この島の(あるじ)竜翠が舞い降りる。

太守は竜の島の外務、通産を担っています。


私の黒歴史がまた1ページ。

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