表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

236/385

硝煙香る聖女

デグ視点です。

レイカ様と二人[竜翼の里]に向かって歩いている。

荷物を[龍星号]と名付けた大蜥蜴に載せている為、旅路は随分楽になった。


「レックスタイプなのに草食なんだよ。」

レックスタイプと言う意味が無学な自分には分からないが、[龍星号]はレイカ様に良く懐いている。

粗食に耐え馬力もあるこの大蜥蜴は良い拾い物かも知れない。


「?」

そう遠くなく戦いの音が聞こえた。

この先の丘の向こうで何者かが争っている。

風に乗って火の臭いが流れてくる。

レイカ様と頷き合うと、自分達は走り出した。




「蜥蜴共に止めを刺せ。小竜とはいえ狩れば大金持ちだ!」

自分達が来た小道と島を東西に繋ぐ街道の合流地点で戦いが起きていた。

片方はピンク色の小竜とリザードマン1人、竜人1人、竜人には珍しく尻尾もある。

もう片方は10名程の人間の傭兵。


傭兵は元々は20名程度いた様だが、半分は既に焼かれていた。

だが、リザードマンは負傷し、小竜も翼の根本を槍で貫かれている。


「竜白様、お逃げ下さい!」


「姉上を見捨てて逃げられるか!」

どうやらリザードマン達の方が劣勢の様だ。


「デグ。この島では竜が重んじられてるんだよね。」


「あぁ、傭兵達は非合法なハンターだろう。兄者に聞いた事がある。竜の素材は莫大な値が付くと。」


だが「竜と戦う」などと言うのは、「自害したい」と言うのと同じことだ。

[竜穴に入らずんば、小竜を得ず]

などと言うのは他人にリスクを取らせる為か、無謀な事をする為の言い訳に過ぎない。


「ドラゴンさんに加勢するよ!」

レイカ様は手早く[妖魔筒]に弾を込めると傭兵の隊長らしき人物を狙撃した。

隊長らしき人物は胸を撃たれ倒れる。


「新手か!」


「見たところ2人だ!5人まわれ!」

近付く迄に、更に2人レイカ様が射殺したが、3人が迫る。


雄叫びを上げ、自分は突っ込む。

すれ違いざまに1人を真っ二つにしたが、残り2人は組みし易いかとレイカ様に向う。


と、[龍星号]が猛然とダッシュし、1人を弾き飛ばし1人に噛みつく。

どうやら大蜥蜴は草食ではなく雑食らしい。

弾き飛ばされ倒れたところから、何とか立ち上がった1人を後から戦斧で引き裂いた。



それからは戦況は一気にこちらに傾き一方的になった。

レイカ様の正確な狙撃で数か減ると、弱っているとはいえ、竜のブレスに傭兵達は焼かれてゆく。

結局1人の生存者も無しに傭兵達は全滅した。

逃げ出した者も今度は後から狙撃したからだ。

硝煙香る聖女。

それが今のレイカ様といえるだろう。




「しっかり、しっかりして下さい。姉上!」

「僕がワガママを言ったばかりに!」

ピンク鱗の小竜は死に瀕している。

負傷していたリザードマンはうずくまりこちらも重傷だ。


「デグ、タイミング見て槍を抜いて!治癒魔法をかけるよ。」

泣き叫ぶ竜人、いやハイリザードマンを尻目にレイカ様は治療を始める。


「でも、この傷じゃ」

ハイリザードマンは彼が姉と呼ぶ小竜が致命傷を負っていると分かっているのだろう。


「泣くな少年!お姉さんは、ちょっぴり神力が大きいんだよ!」

レイカ様は叫ぶ。

聖女(レイカ)様なら癒やせるかも知れない。


「大地母神よ、この小竜の全ての傷を、癒やし給え」

詠唱が終わる直前に槍を引き抜いた。

竜血が自分とレイカ様に降りかかる。

(使30残2)

ピンク鱗の小竜の傷が全て癒えた。


「わぁ、姉上!姉上!」

ハイリザードマンの少年が小竜に抱きつく。

レイカ様は残りの神力でうずくまっていたリザードマンを癒やすべく、また祈っている。


〘これ、竜白。聖女殿にまず感謝せぬか!〙


「聖女様!ありがとう。」

ハイリザードマンの少年がレイカ様に感謝を告げる。


「どういたしまして、でも私は聖女じゃないよ。」

リザードマンを癒やし立ち上がったレイカ様がいつものセリフを言う。


〘聖女殿、御冗談を。普通の人間は神力30など持ち合わせてはおらぬ。感謝する。〙


〘そちらの戦士殿にも感謝を。〙

そういえば、いつの間にか竜が発する唸り声が言葉となって伝わってくる。


〘戦士殿、それは我が血を浴びたからだ。いや、申し遅れた。我は竜翠の娘[竜桃]そちらは弟の[竜白]。〙


「私は鈴木冷夏。冒険者をしている大地母神の歩き巫女だよ。」

レイカ様が自己紹介をする。


自分は[冒険者のデグ]と名乗った。

ソロス村から追われ、また自分としても捨てた村だからだ。

いつか帰れると思っていた甘い自分。

[ソロス村のデグ]は兄と共に闇に帰ったのだ。


〘竜白、火蜥蜴の街に菖蒲を探しに行くのは中止するぞ。一度[竜翼]に戻る。〙


「ん?アヤメに会いに行くつもりだったの?それだと行き違うよ。アヤメは上龍鱗に向かってるはずだから。」

竜翼の里と上龍鱗の里は峠を越え徒歩一刻半と聞いている。


聖女(レイカ)様はアヤメを知ってるの?」


「うん、友達で冒険者仲間だよ。」


「そうか。アヤメは僕の幼馴染で。許婚なんだ。」

レイカ様がびっくりしている。


〘竜白はハイリザードマンだから、後、二年で成人する。その時アヤメは確か十九。ちと遅いが、遅すぎはせぬだろ?〙

アヤメ殿に死んで欲しい者達が多い理由が分かった。


「むぅ、十九で、ちと遅い方なのか……」

レイカ様はいつもの様に呟きをしている。


祈祷を済ませ、自分達は戦場を後にした。

ゴブリン達の気配がする。

傭兵達の死骸はゴブリン達の腹を満たすだろう。

戦いに敗れた者の定めだ。

ハイリザードマンは竜人寄りの姿をしています。

が、竜人には生えない尻尾があります。

(角は竜人でも生えます。)


私の黒歴史がまた1ページ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ