表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

233/385

戦闘報告

あるリザードマン視点です。

リザードマンどうしなので、リザードマン訛のない日本語でお送りします。


「竜人のアヤメとやらは、まだ見つからぬのか?」

姫様は不機嫌さを隠さず、苛立だしげに尻尾を揺らす。

私を含めたお世話係の数人が嵐を避けるかの様に働いている。


「既に火蜥蜴の街を出ているでしょう。」

誰も答えないと更に不機嫌さが増すので、予想を口にしかけたが、思い留まる。

[真実は必ずしも幸せをもたらさない]

と言う言葉を思い出したからだ。


「歩き巫女のレイカという不心得者は捕らえたか?」

姫様は重ねて問う。

そちらは今、足軽組を一組追手に出している。


「竜翠様を唆したる罪、許し難い。そうであろ?」

皆が黙っているので、一人の新人お世話係が肯定の返事をしている。

私が普段から無口で過ごしているのは、こういう時の為だ。


[口は災いの元]

つい最近も姫の不興を買った同僚が一人、太守からの叱責の責任を押し付けられ自害させられた。

お世話係が足軽組を動かせるはずが無かろうに。

だが庇えば災いが我が身に及ぶ。

器の小さい主に仕えるには小狡い器用さがいる。

不器用な者は淘汰されるしかないのだ。



外が騒がしい。

「何じゃ?不心得者でも捕らえたか?」

姫は相変わらず行儀悪く、尻尾を揺らしている。


「歩き巫女を追った足軽組が戻りました。」

外を見てきたお世話係が報告に戻って来た。


「そうか。で、首尾はどうじゃ?足軽頭は何故報告に来ない?」


「あ、足軽組は戻りましたが……足軽頭のアロガン殿は討死されております。」

言いにくそうに追加報告をする。


「歩き巫女の護衛如きに不覚をとったか?まぁ、陣頭指揮を取る、足軽頭となれば是非もなしかの。」

姫様は、ほんの少し悼む様な顔をした。

だがそれも一瞬。


「で、歩き巫女の首は?首実検をいたす。持って参れ。」

改めて姫様は命じる。


「それが……。取り逃がしたそうにございます……。」

再び、言いにくそうに報告をする。


「なんじゃと!足軽頭補佐を呼べ!」


「いや、しかし……。」


「我が命が聞けぬのか?行け!」

報告していた、お世話係は飛び出して行く。


「そして、そなた!」

突然、私は姫様に指名された。

「足軽共に戦いの様子を訊いて参れ。そなたの父兄は兵法学者じゃったろ?」

私は了解の旨を伝える。

今日は運が悪い。




「歩き巫女が南辻の大岩で待ち伏せしとった。アロガン様は妖魔筒で一撃じゃった。」

話を聞いた熟練兵は銀貨を握らせたら、湧き水の様に喋る。


妖魔筒?確かに至近距離からなら有り得る。

だが、それもせいぜい50メートルまで、足軽頭を討てたとして、その後はないはず。


「それが、どうも特別製らしくてな。遠くから弾が唸ってきよる。弓兵が射掛けたが話しにならん。」

詳しく聞くと250メートル先の大岩の上から撃たれ、手も足も出ずに次々撃たれたらしい。


「突撃した槍十人長なんぞ頭が半分、()うなった。割れた西瓜みたいにの。」


結局、亡骸の回収も叶わず生き残りの足軽達は逃げ帰った。

火蜥蜴の街の入口でバラバラでは街に入れない事に気付き、ようやく、まとまったと言う話だった。


戦いの様子をその後も足軽数人に聞いたが返答は変わらず。

歩き巫女は射程の長い妖魔筒を武器に効率良く戦った様だ。


今さっき、逃げ帰った槍十人長の元、部隊を再編し、10名が荷馬車を引いて改めて亡骸回収に向かった。

姫様に与えられていた足軽組は壊滅したのだ。




「姫様。以上の様に、とても戦いとは呼べない一方的な殺戮でした。最終的な被害は戦死者9名。死肉と装備類を漁っていたゴブリン達との戦闘での負傷者1名です。」


「いえ、戦死は10名になります。先程、治療の甲斐なくアンブル様は亡くなりました。姫様への御報告は叶いません。」

どうやら、闇司祭の治癒が間に合わなかった様だ。

私の前に出て行った、お世話係が横から報告する。


姫様も流石に事の重大さに気付いたのか黙ったままだ。

足軽組32名の内10名が討死。

しかも内4名は足軽頭、補佐、弓十人長、槍十人長。

しかも、一連の騒ぎは街の噂になる事、間違いなしだ。


「父上に申し開きをせねばならぬ。」

しばらく後ようやく、それだけ呟いた。


しばらくは姫様も大人しくなるだろう。

自分で書いて置いて何ですが、

「私は、このリザードマン以下だなぁ」

と思います。

器の小さい者に仕える器用さが足りない。

「自分、不器用ですから……」

と、言える強さもなく、仕え先を変えられる市場価値もない。


は!?また愚痴ってる……。


私の黒歴史がまた1ページ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ