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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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撹乱

レイカ視点です。


余談

日本の多くの地域で大雨が降る日の投稿です。

安全な所でお読みいただけると幸いです。


私とデグさんが大地母神殿を訪ねると、前回とは違い数人の信者が拝殿に居た。


「先日のアヤメ先生が、いらした日以来、参拝にみえる方が増えてます。」

神官見習いの花さんが嬉しそうに話す。


「あぁ、もちろん。レイカ様の影響もございますよ。」

取ってつけた様な追加説明に私は笑った。


「私は散歩先で猫さん撫でてただけだからね。」


「それなのですが、最近喜捨をいただく方に『猫の聖女に約束したから』と話す方がいて……何かご存知ですか?」

私は首をかしげる。


確かあの時、神殿ではなく何故路地で治療しているのか訊かれ「たまたまだよ。猫さんに感謝して」とは言ったけど……まさかね。




「たのもウ!神官長はいるカ!」

外からリザードマン訛の人間共通語で声がする。

私が覗きに行こうとすると、花さんに声をかけられる。


「あの、神官長がお呼びです。」

なんだろう?

外は良いの?と花さんに尋ねると、今はフロワさんが対応しているそうだ。


神官長に会うと開口一番に言われた。

「レイカ様、レイカ様上級神官が、今この神殿での最高位神官です。対応をお願いいたします。」


「ふぇ?でも、私は歩き巫女だよ?」


「それに、私は昨日より持病の腰痛が……。」


「治癒魔法かけるよ?」


「そ、それには及びません。」


うーん、どうやら私に対応を押し付けたいみたいだ。

仕方ない。


「対応するけど、どうなっても、知らないよ。」

私は言い残し、デグさんと外に出る。

ただ、念のため蜜蝋を染み込ませた紙で封じられた弾薬を鞄からいくつか取り出し、[ミニエー式妖魔筒]に押し込める様に準備した。

一袋で一射出来る様になってる。


(レイカに任せるとは、神官長は勇気があるな。)

うるさいぞ、マドウ。



外に出ると、神官長が尻込みした理由がすぐにわかった。

武装したリザードマンたちが、神殿を囲んでいたからだ。


リザードマン達の数は30名以上。

弓兵が10、槍兵が20、レックスタイプの大蜥蜴に乗った騎馬が2騎。

(いや騎蜥蜴だろう?)

騎馬武者2騎は甲冑を着込み、後の者達は胴丸を身につけている。

そして、必ず何処かに黄色い布を巻いていた。


「蒼天、既に堕つってやつかな?」

(全く違うぞ。リザードマンの黄色族だな)

私の冗談にマドウが真面目に答える。

さすがに私でも黄巾党とリザードマンが違う事ぐらいは分かる。

そして、もし攻め込んで来たなら、なす術はない事も。

煉瓦造りの拝殿以外、周りはテントで、敷地の塀は、あちこち崩れているからね。


「繰り返ス。この神殿にいるアヤメと言う神官を引き渡セ。」

下馬もせずに隊長っぽいリザードマンが話している。


「ですかラ、アヤメ殿は本日は、いらしておりませン。」

フロワさんが答える。


「ウソをつくな!後から来たではないか!」

私が近づくのを見て隊長が叫ぶ。


「あの方はレイカ様でス。」

フロワさんが説明してくれたが、隊長さんは小声で副長さんに何か尋ねている。

[遠隔盗聴](使1残38)

(これなら聞こえるだろう?)

魔術って便利だぞマドウ。



「(姫様も、その取り巻きも、アヤメとか言う竜人の顔など知らぬ。それらしき首と聖印を渡せば納得するのではないか?)」


「(隊長?しかし、その後どうするのです。間違えましたで済みますか?)」


「(だが、居ないから手ぶらで帰るなどは出来ぬ。せめて、責任者の首ぐらいは持ち帰えらねばならぬ。)」


「(神域への不介入は竜の御前会議でも認められた事、それを違えるつもりですか?)」

副長が正論を放つが隊長は笑った。


「(焼け野原を神域とは呼ばぬ。争いになったとして、焼いてしまえば良かろう。)」


むぅ!酷い事言ってる。

でも、暴力の前に正論が意味が無いのは前世でも、この世界でも同じだ。

うーん、どうしよう?

その時不意に

「冒険者は舐められては駄目よ」

というミケさんの言葉が浮かんだ。



「貴様が責任者カ。待ちかねたゾ」

隊長さんが槍を小脇に構えたまま話す。


私はガン無視して、大声で、デグさんに話しかける。

「神域で下馬もしない、田舎武者と私は話さなくてはなりませんか?」

フロワさんは驚き、デグさんは頷く。


ハッタリは重要だと思うが、内心は、また心臓が止まりそうな程、緊張している。


「貴様!田舎武者だト?」

隊長さんは激高したが、副長さんは慌てて下馬し名乗る。


「黄色族、足軽頭補佐のアンブル。あちらは足軽頭のアロガン。」

隊長さんは渋々下馬した。


「鈴木冷夏、上級神官です。大地母神殿に何かご用ですか?」

なるべく丁寧に、でも事務的に話す。


「この神殿にいるアヤメと言う神官を引き渡セ。隠すと為にならんゾ!」


「人間共通語苦手なら、リザードマン語で話す方が良いですか?足軽頭にもなり、口のききかたを知らぬとは思えませんが。」

わざとらしく、嫌味を言う。

前世で病弱だった私に上から目線で嫌味を言う人はいたが、私が嫌味を言うのは初めてだ。


「いエ、人間共通語で大丈夫でス。アヤメ殿が何処にいるカ?ご存知ありませんカ?」

副長さんが間に入る。

うーん、副長さん苦労してそう。


「少なくとも、当神殿には来てません。ただ、養女に迎えたいと打診してきた家があるとか。リザードマンに分かるとは思いませんが、アヤメは見目麗しいのです。」


「やはり火の家あたりカ……。」

隊長さんと副長さんが相談している。


「邪魔をしタ」

うーん、黄色族のリザードマン達は去ったが、もしかすると、関係ない人達を巻き込む抗争の火種になったかも知れない。


私が悩んでいると、

「レイカ、予定通り撹乱出来た。早目に火蜥蜴を出た方が良いだろう」

とデグさんが言ってくれた。

保身を計る責任者。

もし、近くにいらしたら、この話のイイネを押して下さい(笑)


もし凄くイイネが押されてたら……。

「みんなそうなんだ。」と慰めになります。


暴力は正論に勝る。

それが暴力の持つ力で、平和だの唱えても奪われた土地や人、物は戻りません。


私の黒歴史がまた1ページ。

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