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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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傀儡の術

アヤメ目線です

「アヤメ、あんな小さな帆船じゃ大陸までは無理じゃないか?」

夜。

私と茶渋は港近くで潜伏しながら、日が暮れ月が出るタイミングを待っていた。

叔父を通して、案内の船長(ふなおさ)には話を通してある。


「大陸まで行く訳ではありません。目指すのは下龍鱗の里です。」

海沿いの漁村、下龍鱗の里の(おさ)の次男に私の姉、紫陽花は嫁いでいる。


外貨を得る為に、義兄と共にハルピアに出稼ぎに出ているが、それは半分だけ真実だ。

実際は妖魔族のヒューヒュの下で忍び働きをしている。


私と同じく父の意に反して家を出た竜胆兄が魔王レイナに仕官しているのには驚いたが、やっている仕事は似た物だろう。


「それにしたって、この暗さで舟出せるのかよ。」

茶渋の懸念も分かる。

だが真夜中に月明かりだけを頼りに漁に出る船もあるぐらいだから大丈夫だろう。


問題は追手の方だ。

リザードマンの黄色族は見当違いの方面を探っているが、竜人族の土の家は忍びを使って、こちらの動きを掴んでいる様子だ。

出港前に必ず仕掛けてくる。

私は呼吸を整え、時を待った。




金属音がする。

この音は鎧武者の歩む音だ。

しかし妙だ。

足音が一つしかしない。


「おい、アヤメ。あれってアンデットだよな。」

少し離れた所にボンヤリとした赤い光に包まれた鎧武者が大太刀を手に歩いている。

顔全体を覆う面頬をつけ、目は爛々と紅く輝いている。


「竜人五家、土忍びの[傀儡の術]。[死霊武者]を使役出来るとは驚きです。」

傀儡の術はアンデットを使役し、暗殺や破壊工作をする死霊術。

一般的な教団全てを敵にまわす為、表には出せない技術の一つと聞いている。


「汚れ仕事のプロじゃないかよ。どうすんだよ。」


「傀儡師の気配はしないので、遠隔操作。どうやら土の家も一枚岩ではない様です。[死霊武者]さえ倒せば脱出、出来ます。」

私を確実に仕留めるなら、傀儡師を近くに置き、生きている武者達と連携するはずだ。

それが出来ないのは、土の家の一部(・・)だけが動いているからだろう。


「んな事言っても、鎧武者に刃は通らねえよ。アンデットに鎧の隙間突いても、ほぼ効かねぇし。」

茶渋の指摘は正しい。


冷夏なら神力の力ずくで滅ぼせるだろうが私の神力では[死霊武者]相手では多少弱らせるぐらいが精一杯だ。


「ひとまず逃げようアヤメ」


「ここを逃せば、街を出る次の機会はありません。」

私は[杜若]を抜いて[死霊武者]の前に出た。

[聖刀の煌き](使用3残1)

ここは一二三流奥義に賭けるしかない。

私はいつもの様に八相に構える。


対して[死霊武者]は大太刀を上段に構えた。

多分来るのは、上竜牙流[縦一文字]

人間なら胴がガラ空きの、隙の大きな構えだが、動く鎧武者たるアンデットには関係ない。

大太刀の重さと、膂力で、真っ二つに叩き斬れられるだろう。※

受けるも、退がるも叶わない。


相手が生者なら弾き、二刀目で斬る事も出来る。

だが、死者とあっては、それも叶わない。


なれば[見切り][斬る]しかない!

一、二、三。

やはり[縦一文字]がきた。

打ち下ろしの刹那を見切り、前に出る![竜加速](使1残0)

奥義![兜割り]



私の一撃は兜を斬り、兜は割れた。

金属音を立てて鎧武者が倒れ、そして灰になってゆく。

流石の[杜若]も刃こぼれしたが、魔剣の再生能力で、2〜3日すれば直るだろう。


「あれを見切って躱すのかよ……。」

茶渋が呟いている。


一刻後、私と茶渋は火蜥蜴の街を離れ船上の人となっていた。

※膂力がアンデットに当てはまる表現か微妙です。


一文字斬りと言う技を聞くと現代人は縦に振り下ろす技かと思いますが、昔の一は横薙ぎなんですよね。

だから縦一文字にしました。

丁字路をT字路と勘違いするのに似ていますね。


私の黒歴史がまた1ページ。

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