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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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再会

ブレナ視点です。

人によっては気分の悪くなる描写があります。

竜の島の魔術師ギルドは、この火蜥蜴の街にしかない。

なので金融部門はハルピアと同じぐらい立派なのだが、研究部門は地方都市レベルで学園部分は基礎レベルのみの開設になっている。


まぁ、基礎レベルを卒業したら、ハルピアに渡れば良いだけだから、合理的ではあるのだが、研究部門の案内が全てリザードマン語表記なのは閉口した。


「魔術師殿、何かお困りですか?」

見かねたのか、女性職員が声をかけてくる。


「ありが……。」

返事をして図書館に案内してもらおうとしたが、一瞬言葉に詰まった。


「あ、その、図書館は、どちらになるだろうか?」

動揺を隠し、平静を装って何とか言葉を捻り出す。


「ちょうど良かった。私、図書館職員の一人なんです。ご案内しますね。」

女性職員と連れ立って歩き出したが、私の動揺は治まらない。

そんな私の内心を見透かす様に声をかけてきた。


「図書館の前に食堂で、お茶にしましょう。気分が落ちつきますよ。」


「後、私はシュリー、間違ってもマリーとは呼ばないでくださいね。」

後半の言葉は囁く様に言われたが、私の耳には大きく響いた。




「よくある理由です。正魔術師にはなったし、ギルド職員にも潜り込めた。ただ安い給与から奨学金返済を天引きされると、生活はギリギリ。それで副業をするしかなくなった。それだけです。」

彼女は、ごく自然に話した。

それでも、冒険者になるしかなかった私よりも恵まれているとは思うのだが、色々あるのだろう。


無料の茶を飲みながら話をする。

彼女も職員だからー杯は無料なはずだが、白湯を飲んでいる。


「にがいの苦手なんですよ。仕事でなら飲まざる得ないですけど……」

暗に昨夜の話をしているのだろうか?

チャシブには頼んだ事さえない事を彼女はしてくれた。


「ブレナさんは腕利きの冒険者なのですね。冒険者になって短期間で奨学金を完済出来るのは少数派と聞いてます。」


「いや、仲間に恵まれただけです。私の実力じゃない。」

茶渋も話していたが、レイカの天賦の才とアヤメの実力で[竜の卵]は食べている。

私に実力があれば[エール樽]は存続していたし、アロンとサムスが行方不明にならずに済んだはずだ。


「それにしても、ですよ。」

彼女はそう話すと穏やかに笑った。

こんな美人に昨夜、色々してもらった記憶が蘇る。

改めて欲望が頭をもたげると同時に、茶渋への後ろめたさが頭をよぎった。


「今日は図書館で調べ物ですか?」


「えぇ、そんな所です。仲間が物見遊山に出かけたので、私は、しばらく本でも読もうかと。」

嘘だ。

権力者相手に[竜の卵]でまとまっていると一網打尽になりかねないので、別れたのだ。


アヤメさんとチャシブは火蜥蜴から秘かに脱出を図り、人目に付くレイカさんとデグさんは数日監視の目を引き付けその後、街を出る。

私は魔術師ギルドへ潜伏し、仲間からの連絡を待って動く。

そういう予定になっている。


そして、互いの行動予定は最低限しか知らない。

知らないものは、魔術を使っても調べられないからだ。


「シュリーさん。導師がお呼びです。」

他の職員から声がかかった。


「図書館まで、ご案内出来なくて、ごめんなさい。」

「しばらくは、こちらにいらっしゃるんですよね。私も次の副業は、しばらく後なので、サポート出来る事あれば、お声がけください。」

彼女はそう告げると図書館への行き方を教えてくれ、席を立った。

微かに花の香りがした。




夕方

私は途方にくれていた。


[申し訳ありませんが、宿泊施設は閉鎖いたします。復旧次第、掲示板にてお知らせいたします]


聞けばつい先程、長期宿泊していた魔術師が部屋で勝手に実験を行い部屋を一つ吹き飛ばしたとの事だ。


「トーマス、またやらかしたのかよ。」


「それでいて、毎回本人は軽症なんだから不思議よね?」

いつもの事なのか、学院生達に動揺はない。


他の短期宿泊者は冒険者の店や、通常の宿へのチケットを貰い文句を言いつつも去ってゆく。

だが私は足の付きやすい宿に泊まるリスクは避けたい。


悩んでいると、また

「魔術師殿、何かお困りですか?」

と、同じセリフ、同じ声で尋ねられる。

振り向くと、そこには彼女……シュリーが居た。


「とりあえず、食堂で一緒に食事をいかがです?」

あの後、ギルドの食堂で食事をし、今はギルドの外れにある職員寮の彼女の部屋にいる。


「宿に帰りづらいなんて、彼女さんとケンカでもしたんですか?」

盃に濁り米酒をお酌しながら、彼女は言う。

[浴衣]という着物に帯を締めただけの彼女は色っぽく、目の遣り場に困る。


「いや、ケンカをした訳ではないのだが……」

チャシブの顔が思い浮かび、思わずそう答えると、彼女は笑った。


「ここは彼女なんて居ないとウソをつくタイミングですよ。それに、もう互いの肢体を知ってるのですから、目を逸さないで大丈夫です。」

自身の盃にも米酒を注ぎ、口に含みながら囁く。


「訳ありなのでしょう?宿泊施設が直るまで、居てくださって結構ですよ。かわりに……」

少し間を置いて続きを彼女は告げた。


「しばらくの間だけ、彼女にしてください。」

そうして唇を合わせ、しなだれかかっ

てきた。


チャシブの顔が一瞬、浮かびあがったが花の香りにすぐ塗り潰されてしまった。

また、外角に投げて見ました(笑)

見逃してくださると助かります。


私の黒歴史がまた1ページ。


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