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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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試作品

デグ視点です。


街外れにある鍛冶屋に入るとリザードマンが大鎚を打っていた。

甲高い金属音がリズム良く響いている。

良い音が聞こえる鍛冶屋は腕が良いと兄が言っていた。


「鍛冶屋さんて言う音だね〜」

隣でレイカ様が感嘆している。

表の工房併設の店で[妖魔筒]の修理の話をしたところ。

「親方でないとわからなイ」

と言われて、工程が一段落するまで待っている所だ。


出された白湯を啜りながら待つこと半刻、奥から体格の良いリザードマンが出てきた。


「(隣の戦士ではなく、歩き巫女様の依頼ですか?)」


「(そうです。私の方です。龍真先生の紹介です。)」


「(あぁ竜叫流の……もしかして姪御さん?)」


「(いえ、友人ではありますが、違います。)」


「(これは失礼。病の治療を終え大陸から戻ったとの噂を聞いてたので。)」

流暢なリザードマン語でリザードマンとレイカ様がやり取りをしている。

レイカ様は竜人ではないが、この島の産まれと偽れるぐらいにリザードマン語が堪能だ。


「(?。アヤメって実は有力者の姫様だったりする?)」


「(いえ、ただ竜人五家には養女に迎えたいと申し出ている家があると聞いています。)」


「うーん。アヤメ美人だもんねぇ」

レイカ様が呟いたが自分には意味が分からなかった。




「むぅ〜やっぱりダメかぁ」

壊れてしまった[妖魔筒]を抱えてレイカ様は落胆している。


「出来の良い[アルガ式妖魔筒]だから、作成見本として買い取ル。だが、直しても発射ガスが修理ヶ所から漏れル。」


「そうかぁ~、でも[アルガ式]って他にもあるの?」


「火縄がいらない[オルガ式]があル。金具だけなら、確かあったはずダ。」

リザードマンの親方が奥に引っ込み戻ると小さな壺の様な金具を持ってきた。


「わぁ、フリントロック式だ。」

レイカ様が目を輝かせる。

「こっちの方が密集隊形には向いてるんだよ~」

[妖魔筒]の発射は何度か見たし、触らせてもらった事もある。

扱いが簡単で威力はあるが、運用費用が高く、発射間隔が開く為、個人使用には向かない武器だ。


「しかシ、残念ながら金具の歩溜まりが悪く先行量産で50あまり納めただけデ、制式採用はされなかっタ」

この工房は技術力が高く、ヲタクドワーフ工房の下請けをしているとの事で、レイカ様とも話が合うらしい。


「筒から作って貰うとかかるよねぇ?」


「予算は金貨4枚、でも引き取りあるから2枚で良イ。納期は3か月後だナ」


「うーん、納期がなぁ〜。」

予算は、まだ余裕があるが時間は如何ともしがたい。

すると。

「(親方、あの試作品見てもらったらどうです)」

と、弟子らしきリザードマンが何か話した。


「(なるほど、規格外品だが個人で使うなら良いかも知れん。持って来てくれ。)」


「(ん?何かあるの?)」

更に少し待つと弟子のリザードマンがほんの少し長めの妖魔筒を持ってきた。


「量産品と少し口径が違うよね。え、あれ!ライフリングしてある!ライフリングマスケットタイプだよ!これ!」

意味は更に分からないが、どうやら大変な代物らしい。


「弾は?あ、ちゃんとドングリ型で木製キャップ付いてる。どうしたのこれ!」


「かつての転生者の残した資料を元に作成しタ。ただライフリングの再現が難しイ。これは偶然成功した一つダ。」

ライフリング?

全く分からない。

見かねたのかレイカ様がジャイロ効果が……と説明してくれたが、やはり分からない。


「フリントロック部分は燧石ではなく魔石の雷晶石に装換してあるから着火不良はまずなイ。ただ弾が特殊デ、今ここに60発ちょっとしかなイ。これで良ければ金貨2枚ダ。」


「うーん、使えなくなった私の作った早合と、転生者の資料交換して貰えないかな。弾丸とか炸薬包む紙とか研究必要だから。」

早速、金貨を2枚渡しながら交渉している。


「[魔導転写]なら許可すル。至高神宗派には知られるナ」


「何発か試射していい?」


「もちろんダ。感想を聞きたイ」

レイカ様は弾を何発か掴むと裏庭に駆け出してゆく。

リザードマンの親方も、弟子の制止を聞かず後を追った。(リザードマン語は分からないが、態度でわかる)


自分とリザードマンの弟子はタイミングよく肩をすくめた。

使い捨てられる量産兵器も魅力ですが、何故でしょう、高性能だが訳ありの試作兵器はロマンがありますね(笑)。


私の黒歴史がまた1ページ。

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