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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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茶姉妹

茶渋視点です。


「茶殻先生。お怪我は無い様ですが返り血が、お着物にベッタリですよ。」

「どうぞこちらへ。お供の方もどうぞ。」

龍鳴館の男衆が死体を片付け始め、妓女の雛が俺達を案内してくれる。


「違うっす。茶渋ネェは、あっしのお供じゃなく客人っすよ。」

茶殻は否定してくれたが、俺には正直どうでも良い。

早く、生臭い返り血を拭いたかった。


妓女達が入った後の湯に茶殻と一緒に入る。

茶殻の鱗は左右の脛の部分、普段は布を巻き隠している。

服も今頃、洗濯魔法で洗われているはずだ。

そういえばブレナも、そして冷夏も洗濯魔法を入手したいと話していた。


「茶渋ネェ、店に貴重品として預けてた野暮ったい銀の指輪は彼氏のプレゼントっすか?」


「ちげえよ。」

茶殻が見たのは、ハルピアを離れる時に情報屋のシンデレラからもらった銀の印台指輪だ。

一度借りた金の指輪の様に重くはないが、やはりギルドの秘密の文様が彫られ微かに魔力が付与されている。


ブレナにはハルピアで何かアクセサリーをプレゼントすると言われたが断った。

ブレナは知らなかったが、冒険者の男女でプレゼントをするのは不吉とされている。

嫉妬した死神に狙われるとも、永遠(アンデット)の神が永遠の愛を祝福してくるとも言われていて、呪いがかかるらしい。


湯を出て服を着ると何故か茶殻とは別に、店で一番高価な部屋ヘ通され上座に膳が用意してあった。

高価そうなツマミと米酒が乗っている。

何か、やな予感がして席を、そっと立って聞き耳をたてる。


「茶殻先生!何で事前に知らせてくれないんです!」


「へ?言ったっすよ。あっしと白檀ネェの幼馴染を連れてくるって。」


「なに言ってんです!先生にハルピア盗賊ギルドの幹部待遇の幼馴染がいるなんて初耳ですよ!」


「人違いっす。茶渋ネェは冒険者(スカウト)っすよ。」


「違いません!店の魔術師にもシーフギルドにも確認させました。あの指輪は本物で所有者も[仲裁者]で間違いないです。」


「女将、料理が出来ました。白檀の準備も、もう少しです。」

人が近づく気配がしたので席に戻り酒に手をつける。

手をつけてないと信用してないと取られ話がより(コジ)れるからだ。

まぁ、既に十分拗(コジ)れた気がするが……。


襖が開き、龍鳴館の女主人と料理の膳を持った妓女の雛そして不思議な顔をした茶殻が入ってくる。


「茶渋様。お待たせしております。白檀も直ぐに参りますので。」

女主人が前に座り、雛は膳を置き手をついた一礼をして下がる。


「なぁ、やっぱり何かの間違いじゃないっすか?」

俺の左手に座った茶殻の前には膳はなく濁り米酒のみ。


「先生、また御冗談を。」

女主人は袖で顔を隠し笑いながら言うが、目は(なに言ってんだコイツ)と雄弁に語っている。


「茶渋様は大地母神の聖女と至高神聖神派との抗争を仲裁した方。一説では聖女の怒りを鎮める為に、聖神派はシーフギルドに小国が買える程の大金を払い茶渋様を紹介していただいたと聞き及んでおります。」


「茶渋ネェ、マジっすか?」

茶殻が驚いた顔をして訊いてくる。


「あぁ、仲裁したのは事実だ」

米酒の杯を開けながら言う。


『俺の実力じゃねぇ。偶然が重なり、結果としてそうなっただけだ。俺はケチなスカウトだよ!茶殻。』

とはシーフギルドの顔を潰すから言えない。


「お待たせいたしました。白檀でございます。」

その時、声がかかり襖が開く。

畏まった色彩の塊が両手を付き、頭を下げそこに居た。

豪華な衣装に身を包み、匂う様な色香を漂わせた高級妓女が顔を上げる。


「え、茶渋なにしてん?ハルピアのギルド幹部の相手って聞いたんやけど、手の混んだ冗談?」

素に戻った白檀もとい茶蕎麦姐がそこにいた。


「やっぱ、そうなるっすよね。」

茶殻が呟き。

女主人だけが唖然としていた。




「茶渋、聖女さまって、どんなかた?」

茶蕎麦姐が訊いてくる。


「そうっすよ。あっしも知りたいっす」

そういえば茶殻にも話してなかった。


「茶殻は会ってるよ。冷夏が聖女だ。ただ騒ぎになるから、他に話すなよ。」

ハルピアみたいにはならないだろうが、騒ぎはゴメンだ。


「そうなんすか?いや、冷夏さんすか。正直微妙っすね。」

確かに普段の残念な感じは茶殻と変わらない気がする。


「もう!二人だけで。答えになってないやん。何なら連れてきて。」

茶蕎麦姐が怒ったふりをしてツッコミをする。


「いや、まぁ、普段は訛ってない茶殻だと思ってくれたら。」

何とか俺が答えるが……。


「つまりアホなんか?」

久しぶりだが、茶蕎麦姐は相変わらずキツイ


「茶蕎麦ネェ酷いっすよ。あっしはアホじゃないっす。」


「「いや、アホや。」」

声がハモリ、三人して昔の様に笑った。

まるで時間が戻ったかの様だった。


「で、普段でない時は、どないなん?」

真面目な顔で茶蕎麦姐が尋ねてくる。

なんだろう。

そんなに気になるのだろうか?


「底がしれねぇよ。数日前もドラゴンと対等に話してたし、咆哮聞いても『凄かったねぇ』の一言だ。」


「なるほどねぇ、そりゃ化物や。茶渋、喰われんよう、きいつけや。」

もう、手遅れな気がするが、忠告を心に留める。


「それより、茶渋ネェには彼氏がいるっすよ。頭良さげな魔術師っす。」


「ホンマに?もちろん、もうすることしたんよな?どうやった?どうやった?」

う、茶殻、余計な事を!


「それはあっしも、是非聞きたいっす。」


「何なら、あんたに秘技の一つや二つ授けるで。」

突然方向が変わった。

しかし秘技って……。


「あっしも……」


「茶殻は初太刀が、まだやろ!」

その後、色々白状させられたが、色々勉強になった。

茶殻は途中から「凄いっす」しか言わない。


ブレナに試すのは……どうしよう。

俺はそう思った。

呪いの名はフラグ立て(笑)


私の黒歴史がまた1ページ。

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