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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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阿呆と雫と用心棒

茶渋目線です

「あ!茶殻先生。良い所に!」

妓女見習いが俺らに声をかけてきた。


数人の男衆が妓館を守る様に立ってはいるが、怒声を上げている方の面々は全員リザードマン刀を帯刀している。

男衆は[葦原]の規則で基本無手なので分が悪い。


昔、店の勢力争いで男衆が斬り合う事があって以来そういう規則が出来たとシーフギルド時代に聞いた事がある。

だが、今の様に武装した相手と揉める事があるので用心棒という稼業が出来たそうだ。


俺からしてみれば無駄な規則を無くす方が良いと思うのだが、一度出来た規則を無くすのに必要な根回しなどの手間を誰も取りたがらないので、そのままになっているらしい。



「何だ?このアマが用心棒か?」


「先日は、うちの門弟が世話になったそうじゃないか。」

喚いている男達は総勢7名。

うち6名は帯刀しており、後の1人は杖を持っている雰囲気から魔術師の様だ。


「門弟って、あの刀抜いた酔っ払いっすか?師匠に箒で叩き出された奴っすよね?」

まずい。

茶殻は変に正直なので、相手が怒り出す事を口に出す恐れがある。


[相手を刺激するな。]

俺はハンドサインを送ったが茶殻は無視した。


「貴様らは客として来た、うちの門弟から金品を剥ぎ取り、卑怯にも複数人で殴りかかり、重傷を負わせた!」


「そうだ。用心棒!この落とし前をどうつけてくれる!」

男達は凄む。


「変な事訊くっすね。店で暴れたゴミだから師匠が箒で掃き出しただけっすよ?その後、袋叩きにしたのは料金回収の男衆の仕事っす。」

茶殻は昔はから全く空気が読めない。

このままじゃ……。


「なに!我ら上竜牙流の門弟をゴミだと言うか!」

言わんこっちゃない。

相手を更に怒らせた。

相手は剣客に魔術師付きで7人。

どうすんだよ。


「この店は客を選ぶっす。金を積んでも妓女達はゴミを相手しないっす。ゴミの相手は用心棒がする決まりっすよ」


「なら、貴様に相手にしてもらおうじゃないか!」

男達、全員が抜刀する。

店から覗いていた妓女達が悲鳴をあげる。

俺も悲鳴をあげて逃げ出したいが妹分を見捨てる程、非情にはなれない。


「抜いたっすね。なら、こちらも[雫]を抜くしがないっす。」


「バカ!逃げるぞ!茶殻!」

俺は叫ぶ。

俺らさえ逃げれば、奴らも店に斬り込んだりはしないはず。

そのうち流石に自警団が来るだろう。


「逃げねえっすよ。用心棒は舐められたら(しま)いっす。」

全くアヤメといい、茶殻といい、俺の周りの竜人は刀に取り憑かれているヤバい奴しか居ない。


茶殻が抜刀し、冷夏が言っていた蜻蛉に構えた。

男達は皆、中段に構える。

正直この人数差で殺り合うとは考えていなかったのか相手の何名かに戸惑いが見える。


?。

おかしい。

刀を抜いた茶殻が笑みを浮かべている。

俺が見たことない邪悪な笑みを。


「イェアエア!!!」

茶殻が仕掛けた。

速い!

男の一人を、まるで巻き藁を斬る様に真っ二つにした。


「イェアエア!!!」

間髪入れず二人目に斬り込んでゆく。

流石に相手も刀で受けた。

が、そのまま茶殻は刀を振り抜いた。

受けた刀が二人目の男の頭蓋を割る嫌な音がして相手は倒れる。


「イェアエア!!!」

三人目はアヤメと同じ様に足捌きでかわそうとした。

だが茶殻は振り抜く軌道を変えて三人目も捉える。

三人目は胴を半ばまで斬られ悲鳴をあげながら吹き出した内腑を集めている。


「おりゃぁ」

俺の方に男の一人が中段に構えたまま鋭く踏み込んで来た。

まじかよ。

でも、遅い。

いや、相手の動きが、よく見えるからか遅く感じる。

ムッカ島でミノタウロスの高速突進をいなした時に比べ遅すぎる。

俺は近接攻撃用短剣を抜き、突進を躱しざまに相手の首筋を薙ぐ。

相手は血をまき散らしながら倒れた。


と、後方で魔術師が詠唱を終えようとしている。

唱えているのは多分[火球]だろう。

こちらも遅い、遅すぎる。

左手で抜いた投擲用短剣を魔術師に向かい投げる。

狙い違わず首に短剣が吸い込まれ、魔術師は倒れた。


残りは二人。

だが、もう決着はついている。

仲間五人を失った二人は背を向け走り出そうとする。


「イェアエア!!!」

え?

茶殻が背中から袈裟切りにもう一人斬って捨てた。

残り一人は……信じられない速さで走り、逃げ去った。


「勝負はついてたろう茶殻。」


「刀は極力抜いてはならない。だが抜いたなら必ず斬るべし。」

茶殻が蜻蛉に構えながら、こちらに振り向く。

目が座り、口には笑み、そして訛がない。

ヤバい。


ゴメン、ブレナ。

俺は帰れないかも……。

そう思いながら、茶殻と対峙する。

ミノタウロスの時と同じく竜力を使えば初太刀は躱せるかも知れない。

しかし、その後は……。


と、茶殻が何時(いつ)もの顔に戻り、刀を布で拭って鞘に納める。


「いや〜、一人逃したっす。あっしも、まだまだっすね」

訛も元に戻っている。


「茶殻、お前……何かに憑依されてるよな?」

恐る恐る俺が尋ねると、サラッと返答が返ってきた。


「ある意味そうっす。この刀は[雫]。師匠が斬った妖魔カルトの闇司祭の愛刀だった業物っす。」


「鞘から抜くと、あっしの竜叫流を最適化して恐れ知らずに、してくれるっすよ。」

完全に呪われた刀だ。

だが……どうやら呪いが完全に機能していない?


「だから妖刀[雫]ってのはヤッカミだと思ってるっす。でも夜中にカタ付く時は少し困るっす」

う、こいつは昔から肝が太いというか、阿呆というか……。

俺は内心、頭を抱えた。

阿呆最強説(笑)

それはさておき、規則が出来ると変えられない事まで、竜の島には持ち込まれた様です。

「改善点あればドンドン出せ」

と言う奴程反対するか、「じゃあやって見て」と言いつつハシゴ外すからね〜。

ハシゴ外され(評価的に)転落して(精神的に)強打した経験ありますか?


私の黒歴史がまた1ページ。




私は、もちろんあります(苦笑)。

そして愚痴った友人から

「史書に曰く、『水に写して人、姿を知り、人に写して、運命を知る』という。お前さんを見て、改善策を出すなんていう愚か者は居なくなるだろう。お前は同僚を守ったのだ。」

と、素晴らしく後向きな(笑)慰めをもらった記憶があります。


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