表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

217/385

叔父

久しぶりのアヤメ視点です。(しつこい?)

アヤメって誰かって?


落ちこぼれの竜人です。一応、冒険者[竜の卵]のリーダーをしています。


「むぅ」とか「う~ん」とか言いつつ冷夏は休憩所の将棋では連戦連勝している。

ちょっとした菓子(餅を揚げた物や水菓子)を賭けて指しているのだが、冷夏の強さは格が違う。

小さな籠一杯に戦利品を集めて、さて、どうしようか?と思案している。


「冷夏、もう一度湯船に行きましょう」

私が誘うと「茶渋はどうする?」と茶渋にも話かけている。

やはり、わかっていない。


「お、俺は……その……」


「茶渋、明日朝に[双頭の蜥蜴亭]で合流しましょう」

私が強引に口を挟むと、茶渋は、そそくさと出て行った。


「冷夏、馬に蹴られますよ。」

私の一言に、「むぅ」と唸って顔を赤くしている。

[恋路を邪魔すると馬に蹴られる]は竜の島に伝わる俗説だ。

だが、冷夏も聞いた事があるという。


「そ、そうだよね~。2人とも若いもんね〜」

私達も、そう齢は変わらない。

少し、ズレているが冷夏らしい。



改めて湯に、ゆっくり浸かり冷夏と二人女湯を出ると、デグが男女3人組と話をしながら待っていた。

え……まさか。


「?!、アヤメか?いつ戻った。」


「お師匠、お師匠に若い美人の知り合いいたなんて、初耳っすよ。」

スラム訛のスタイルの良い美人と闘気が滲む若者を連れて、私の叔父がそこに居た。


「叔父上、お久しぶりです。」

内心の動揺を露にも出さぬ様、細心の注意を払いながら返答する。

私が島に戻った事は、隠しておきたかったが思う様にはならないらしい。


「いや、しかし見違えたぞ。すっかり垢抜けたな。」

島を出たのは3年以上前、叔父と話したのは更にその前なので、それはそうだろう。


「アヤメは神官見習い卒業したから、髪も少し伸ばしてるしね。」

冷夏の囁きに私は苦笑する。

叔父は多分、平民(・・)の神官見習いが、オカッパ頭にする事は知らないので髪型は気にしてないはず。


「そちらの、べっぴんさんは?」

叔父に改めて尋ねられた。


「初めまして。鈴木冷夏です。大地母神の神官をしています。友人として、冒険者仲間として菖蒲さんにはお世話になっています。」

冷夏が、よそ行きの挨拶をする。


「左様でしたか。拙者は上竜鱗の龍真と申す。竜叫流の刀術師範をしております。菖蒲の叔父にあたります。」

叔父も挨拶を返す。


「こちらは弟子の一刀と茶殻」

そして、若者と女性を紹介してくれた。

しかし、若者は別として若い女性を弟子にするとは珍しい。


「お二人とも、叔父の弟子ですか?」

思わず尋ねると、

「そうっす。将来的には別っすけど、今はまだ弟子っす。」

と女性から返事がきた。


「こ、これ。姪が誤解するではないか!」

叔父が動揺している。

私は笑った。

堅物の叔父は変わってないらしい。


「デグ殿と飯でも食おうと話していた所だ。菖蒲の話も聞きたいし参ろう。」

やはり、そうなるのは避けられないか。


「いや〜デグ殿が菖蒲の冒険者仲間とは世間は狭いですな。」

全くだ。

叔父がデグに話かけている。

私は、そっと溜息をついた。




料理屋[くらわんか]は安価な料理と竜の島独自の酒を出す良い店の様だ。

一刀と呼ばれた若者は座敷の隅の方で、一人芋酒を傾けてるが、茶殻女史は空気を和ませる為かスラム訛で積極的に話かけてくる。


「デグ殿、超マッチョっすね。龍鳴館なら多少割引出来るっすよ。」

龍鳴館は女子供でも知る高級妓館。

デグは冷夏の方を一瞬チラッと見た。


「冷夏殿の聖印の紐、上級神官色じゃないっすか。」


「う~ん、無料診察で頑張ったら、いつの間にか任命されたんだよ。」

22回の神聖魔術使用を頑張ったの一言で済ませる冷夏は、やはり竜だと思う。


私と言えば叔父と差し向かいで座り、濁り米酒を傾けている。


「なるほど、義姉上と同じ道を歩む為であったか。兄からは内腑の病の治療の為と聞かされておった。」

なるほど、娘が家出し大陸の大地母神殿に行ったより、島で治らぬ病の治療の為大地母神殿に行かせたの方が外聞が良い。


実際は母、鈴蘭の元に居た方が治る病は多いだろう。

冷夏の大きな神力による奇跡を除けば、医術、薬術と神聖魔術の組み合わせが一番病は治る。

母の医術、薬学はケリー先生曰く大地母神殿より「数歩先を歩いている」そうだ。


「しかし、すまぬが菖蒲。そなたの神力は確か四。大地母神より啓示を賜ったのは喜ばしいが、歩き巫女として身を立てるには、ちと足りぬと見るが。」

杯を傾けながら叔父は一般的な正論を語る。


「それを言うなら叔父上、私の竜力は(いち)。竜人として里で生きる(すべ)の方がありません。それに歩き巫女として足りぬ分は刀にて補おうと思います。」


「刀で食うは刀を喰うよりも難しい。旅のうち、何処ぞの馬の骨に引っかかるならまだしも、いずれ異郷の土に還る事になろうぞ。」


「歩き巫女は種。いずれに根付くか闇に還るかは大地母神の思し召し。現に母は父と出会い、村に根付いたではありませんか。それとも、叔父上は母は何処ぞの馬の骨に引っかかったと、お考えですか?」


「い、いや、その様な意味で申したのではない。」

叔父が慌てて否定していると、突然、茶殻女史が話に割って入ってきた。


「一本!師匠の負けっす。師匠、神官に口論で勝てる訳ないっすよ。」

多少酔っているのか、赤い顔をして笑っている。


私が杯をあおり、叔父が顔を顰めたまま唸っていると、店の外から一人の男が飛び込んできた。

大地母神の聖印は様々な素材で作られていますが、それを身につける為の紐の色と本数は神殿内の役職や地位により違います。

なので、その色の規則さえ知っていれば一目で相手の立場がわかるのです。

(大地母神見習い読本より)


私の黒歴史がまた1ページ。


オマケ

この世界では信仰対象になる神像は公式には造られません。

例えば、大地母神。

エルフ、ドワーフ、人間、魔族、etc.など様々な種族が信仰しているので大地母神をどんな姿(種族)で造れば良いのか分からないからです。

ただ貴族や有力者が自身の種族に似せて作らせたり、芸術家が独自に制作したりはあります。


うーん。私の考える女神様は、大きな鎌を持った黒いフードの奥にね……。

(口の悪い魔導書!冷夏さんに何を教えてますか?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ