表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

215/385

妹分

久しぶりの茶渋(チャシブ)目線です。

茶渋って誰って?


竜人のスカウトだ。

シーフ?今は冒険者で食ってるからな。

スカウトだ。

火蜥蜴の湯は街1番の湯屋だ。

離れた源泉から湯を引いている為、銅貨2枚と安価ながら湯量が豊富なのが売りらしい。

もっとも、この島の生まれなら、温泉が珍しい物ではない為、そこまで驚く店でもない。

この街ならスラム生まれでも、無料の湯に漬かるぐらいは出来るからだ。

中は広々としていて、何人もの客が身体を洗ったり、湯船に、つかったりして寛いでいた。


「アヤメ、チャシブ、温泉だよ。お温使い放題だよ。」

冷夏がはしゃいでいる。

船では水が貴重な為、身体を拭く事さえ、ままならなかった。

火蜥蜴港に着くと、船から降りた少し臭う冒険者や船員が男女問わず押しかける。

俺達も例外ではない。


「髪が洗えるのは助かる。髪がゴワゴワになるけどな。」

俺は脂で髪が汚れているので、石鹸で洗っている。

着ていた服も洗濯に出している。

石鹸も洗濯も勿論、金がかかるので、

「今回はパーティ資金で出すよ」

とは言われているが、贅沢に慣れていない俺は正直困惑していた。


それに前に同じ様に洗ったはずの菖蒲と冷夏の髪がゴワつかなかったのを不思議に思っている。

俺はブレナと付き合い始めてから、容姿に気を使っていた。


「ん?リンスがあるよ。香りからレモン汁にしたいけど高いからね。お酢なら安いし。」

リンス?

なんだろうそれは。

俺が尋ねると


「う~ん、アルカリに傾いた髪を中和して整えるんだよ。」

と謎の答えが返ってきた。


そういえば、大地母神の歩き巫女の髪の艶が違う事が最近多いと聞いてはいた。

リキタの大地母神殿由来の秘密があるらしいが神官でもない限り知るのは難しい。

大金になるならシーフギルドが探るかも知れないが、そうでないなら命を賭けるシーフはいない。

リキタの大神殿の警備は、それだけ厳しい。


「やっぱり秘密があったのかよ。冷夏、俺にも教えてくれよ。」

周りの女性達も聞き耳をたてている。


それから、しばらく火蜥蜴の街では酢の値段が少し上がったそうだ。



「あれ?もしかして茶渋ネェ?」

湯殿から出て、火蜥蜴の湯の休憩所で休んでいると、一人のナイスバディに話かけられた。

休暇所は男女別なので問題ないが、女の私から見ても薄い湯衣しか着てないと目の遣り場に困る女性だ。


「あっしすよ。妹分の茶殻っす。」

驚いた。

俺の知っている茶殻は

「茶殻でなく、鶏ガラだろ」

と言われていた女の子だ。

だが、良く見ると、口元のホクロの位置も変わりない。


「茶殻か?嘘だろ?あれから三年しか経ってないんだぞ!」

俺がハルピア行きの船に密航して火蜥蜴を離れたのが三年前。

冒険者の店には、そこらへん嘘の経歴を伝えてるが冒険者の過去など気にする奴はいない。


「妖魔の神の御加護っすかね?」

その一言で、見た目は変わったが中身はあまり変化ない事がわかった。


俺も過ごした至高神の簡易神殿、通称人買い神殿に居たのに何故か茶殻は妖魔神を信仰していた。

しかも理由は

「ダークエルフってカッコイイじゃないっすか。」

という理由からだ。


しかも当時、たしなめた司祭に

「司祭様だって、至高神より(かね)を信じてるじゃないっすか。」

と言い放ち、半殺しにあった強者(ツワモノ)だ。

あの時は確か、茶蕎麦姉が取りなしてくれた。


「茶蕎麦姉はどうしてる?」

茶蕎麦姉は確か俺らと違い花街に売られたはずだ。


「白檀ネェなら良い暮らししてるっすよ。一刻(にじかん)一緒に茶を飲むだけでも銀貨十枚はする売れっ子っす。」


「実は、あっしの雇い主は白檀ネェの居る店で、あっしは用心棒してるっす。」

茶蕎麦姉はどうやら白檀と名を変えたらしい。

しかし茶殻が用心棒?

今の茶殻なら売り物の方になっていても不思議ではない。


「茶渋ネェ。あっしは売り物の方じゃねえっす。相変わらず表情が分かり易いっすね。」


「シーフとして、ポーカーチェイスが出来ないのは駄目だって言われてたっすよね?」


「それを言うならポーカーフェイスだろ!それにお前は言葉が選べないって言われてたろ?」

推定7才で売られたシーフギルドで、指導役の老シーフに鍛えられた。

茶蕎麦、いや白檀姉の様に花街に売られた方が飯が食えるから当時は羨ましかった。

シーフギルドに一山幾らで売られた俺らは神殿からすれば不良品だ。

それでも、鉱山に売られた連中よりはマシだった。


「それに俺はシーフじゃなくスカウトだ。冒険者をやってるんだから。」


「どっちも同じっすよ。言葉遊びっす。」

この変な正直さは変わってない。


「あっしは容姿が目立つ様になって盗みが出来なくなり、危うく夜鷹になりかけたっす。喋りが駄目で美人局も出来なかったっすからね~。」


「でも、そこで白檀姉と師匠に出会って、今は用心棒っす。」

互いに三年の間に色々あった様だ。


「茶渋〜将棋終わったよ〜」

冷夏の声がする。


「まだ火蜥蜴に居るなら飯でも食うっす。仕事中以外は竜叫流の道場に居るっすから。」

茶殻はこれから湯船に入るのだろう、慌ただしく去っていった。

「大型連休?新しい菓子か何かか?少なくとも、俺は食った事がない。」

友人のセリフ……。



私の黒歴史が、また1ページ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ