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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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普通?

久しぶりのブレナ目線です。

ブレナって誰って?


学院出た正魔術師ですよ。


予定より遅れて入港した火蜥蜴の港は騒然としていた。


近々、リザードマンの族長や竜人の長を集め会合が開かれるらしい。

昨日船の上空を旋回していた竜が島に戻り、火蜥蜴近くに降りたらしいが暴れたりした訳では無い様だ。


チャシブの話では、この火蜥蜴の街の近郊で行われる会合なので、この街の太守たるリザードマンが事実上のホストになるとの事だ。


「まぁ、近くと言っても会合の高原まで半日はかかるし、高原に入れるのは、リザードンの三大部族の族長と竜人五家の代表、火蜥蜴の街の太守の5人のみ。後は高原の下で待機する決まりだ。一応、竜が飛んできて参加するから高原で開催するんだが大抵はテントで話あって終わりだそうだ。」


「ふ~ん。詳しいねチャシブ。」

レイカさんが興味津々で、聞いている。


「スラムとはいえ、この街の出だからな。それに会合は普通年末に開催され、竜が飛び去ったあとは、そのまま無礼講のお祭りになるから、まぁ……色々稼ぎ時だったりした。」

チャシブは至高神の簡易神殿に併設されている孤児院から、シーフギルドに売られて育ったと個人的に聞いている。


「臨時会合があるってのは何かあるんだろ。まぁ魔王と諸王国軍が合戦したから対応の協議かもな。まさか聖女絡みだったりして……。」

茶渋の冗談をレイカさんはスルーしてアヤメ殿に話を振った。


「アヤメも、お祭りに来たりしたの?」


「いえ、私はこの島でも更に田舎の生まれですから、話に聞いた事があるぐらいです。」

そういえばアヤメさんは、この島の東側(・・)にある里の出身と聞いた。

だからだろうか?

チャシブが歯の根が合わない程怯えていた竜が近づいても、平然と佇んでいた。


「それより冷夏、竜が昨日飛んできた理由の方を教えろよ?竜と念話で何を話したんだよ。」

チャシブがレイカさんに尋ねる。


「う~ん、アヤメは元気か?とか、なんか騙された!とか言ってたよ。」


「意味わかんねぇよ!アヤメ、竜を騙したりしたか?」

私もサッパリ話が見えない。

それ以上に竜と対等に話せて平然としているレイカさんにも驚いた。

やはり聖女は普通ではない。


「それこそ意味がわかりません。私の里でも竜に会えるのは里長と若衆の代表だけです。しかも村祭の時に挨拶に行くだけですよ。」


「村祭で村長が竜に挨拶に行くって、どんだけ修羅な村だよ。」

チャシブが言うと、アヤメさんは苦笑した。


「普通の田舎です。大人なら歩いて一刻ぐらいに竜が住んでるだけで。」

私とチャシブは呆れて乾いた笑みを浮かべる。

デグさんは少し肩を竦めただけだ。

こちらも絶対普通じゃない。




私達が宿を取った[双頭の蜥蜴亭]は、よくある冒険者の店の様だ。

ただ客層が半分以上、リザードマンなので、ハルピアのデポさんの店より、異国に来た感が強い。


店の主人は見た目は人間だが、もしかしたら竜人かも知れない。

部屋を頼むと6人部屋を5人で使って良いと言われた。

料金は朝食付きで銅貨10枚。

至って普通の店だ。


「親父。ここらで、お勧めの湯屋は何処だい?」

チャシブが主人に話かける。


「冒険者向きなら、火蜥蜴の湯だな。銅貨2枚で、ゆっくり出来る。船で着いたんだろ?一杯飲んだら行ってきな。」


「お連れの男性陣向けなら、香油の湯だな。おっと口が滑った。」

主人が笑いながら、サラッと言う。


「だ、そうだ。デグ。」

チャシブが一瞬だけ、こちらを見て話す。

いや、チャシブ。

そんな睨まなくても、心配いらない。

そんな度胸も、予算もないから。


「いくつかある麦畑宿も香油の湯の近くだ。だが、そこから裏通りに入っちゃいけねえよ。まぁ雰囲気が変わるから冒険者なら分かるさ。」

チャシブの視線を見て宿の主人は余計な事を言う。

少し気まずい。


「あぁ、境にある人買い神殿は越えねぇよ。」

チャシブはスルーして答えたが……人買い神殿?


「ん?なんだい。簡易神殿の別名知ってるなんて、この街は初めてじゃないのかい?」


「俺はな。」

チャシブが人数分、銅貨を置いてエールを頼み、皆テーブルに着く(レイカの分はジンジャー水だが)


「航海の無事に乾杯!」

前回祝えなかった船旅の無事を今回は祝った。

竜という絶対者がいる島の政治は特殊になります。

魔術師ギルドという金融機関があるこの島では、竜のねぐらに金銀財宝はありません。

(ドラゴンのタンス預金が多少はありますが。)


私の黒歴史がまた1ページ。

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