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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第13章 竜の島

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ドラゴンさん

久しぶりの冷夏視点です。

冷夏って誰って?


主人公だよぅ

(多分な……)


私が大きなクシャミをして、アヤメが心配してくれた。

海風は寒くなく、逆に心地よいぐらいに感じている。

船上では水が貴重品なので、体を拭くことも出来ないので肌も髪もベタついているからだ。


夕方には火蜥蜴の港に到着する様で、船員さん達が忙しく動いている。


前回は嵐にあったり、大変な航海だったので「今回は穏やかな航海だったね」とアヤメと話していた時、それは起きた。


(たしかフラグを立てるとか言うのだろう?)

うるさいぞマドウ。



「船長!り、竜が接近してきます!」


「航海士!航路は?東に流されてないか?」

チャシブの話では、竜の島の東半分は完全に竜の領土(テリトリー)らしい。

西半分にしても、形式上は竜が領有していて、リザードマンや竜人などは使用権を所有しているとの事だ。


つまり、船長さんはテリトリーを侵犯した心配をしてるんだけど、ドラゴンさんが、その気になれば何処を航海していても無駄だと思うんだけど……。


「だ、駄目だ!」

船長や船員が甲板に、ひれ伏している。見ると私達[竜の卵]以外は、大半の人がそうだ。

リザードマンに至っては100%ひれ伏している。


でも、チャシブがブレナさんに抱きついているのは本気に怯えているのかな?と少し疑っている。

見せつけたりはしないけど、ラブラブだからね。


『そこの魔導書、尋ねたい事がある』

ねえマドウ、ドラゴンさんが呼んでるよ。


(念話だから冷夏。竜が呼んでいるのは、我ではなく我々だと思うぞ。)

う~ん、やっぱり混じってきてる?


『魔導書、聞こえていないのか?』


「(聞こえてますよ。ドラゴンさん。なにが訊きたいのですか?)」


『ドラゴンさん、と呼ばれるのは10年ぶり、いや10年ちょっとになるか。』


「(ふぇ?じゃあ皆は、なんて呼んでるの)」

(元日本人のクセに敬語の概念がないのか?冷夏)

むぅ。確かに、この島の領主相手に、さん付は悪手だったかも。

身分違いの概念はあっても、実感出来ない社会だった私の前世社会は恵まれていたのだろう。


『そなたは冷夏と言うのか。てっきり憑依され意識などないと、思っていたのだが……』

う~ん、もしかしてマドウとの契約って取り返しつかない事なんじゃ……

(力なく契約を結べば、そうなるだけの事。冷夏は既に心配ない。)

あの時は、そんなこと言ってなかったぞマドウ。


『改めて問う。冷夏よ。隣に佇む娘は龍鱗の上里の菖蒲(アヤメ)か?』

多分そうだけど、私は念の為確認する。


「ねぇ、アヤメ。アヤメって龍鱗の上里出身で間違いない?」

神殿で初めて会った時、そう聞いたと思う。


「えぇ。間違いないですよ。龍鱗上里のアヤメで。もしかして冷夏、旋回中の竜と念話してますか?」

私は頷く。


「なら、上手く切り上げて下さい。このままでは船が、あさって方向に流されます。」

アヤメは肝が座っている。

上空を旋回する竜の前に立っているのは私とアヤメ、そしてデグさんだけだ。

チャシブは本気で怯えている。

疑ってごめんチャシブ。

デグさんは私を庇う様にして立ってくれている。


「(ドラゴンさん。間違いないよ。)」


『大病は癒えたのか?』

ん?アヤメが病気してたなんて聞いた事がないけど……


「アヤメ?何か大きな病気してた?」


「幸い大病とは無縁で、至って元気です。って、冷夏???」

だよね~。

何か勘違いしてるか、人違いじゃないかな?


「(アヤメは病気してないって。人違いじゃないかな?)」


『いや、そうか。長達め、謀ったな。』

大きく咆哮すると、竜は踵を返し飛び去った。


竜の咆哮には人を怯えさせ、また金縛りにする効果があるらしい。

船員さん達が、小水を漏らしたり、気を失ったりしていて、船が港に着いたのは翌朝になってからだった。


(確か、ドラゴンカルトの教えに、竜の魂を持つ者と、それと共に歩む者は竜を恐れないとある。あながち間違いではない様だ。)


ん?マドウ?何か言った?

私の黒歴史がまた1ページ。

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