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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第12章 兎達の戦い

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夢見

謎の爺さんの視点です(笑)。




「高司祭、あのトロールは至高神の自称聖都行きの船に乗りました。」

お付きの弟子の1人である助祭が報告をくれる。


「これで、あの未来は変えられますでしょうか?」

思い詰めた顔の弟子に性急に尋ねられ、儂は答えた。


「条件が揃えばの。」

儂が話したトロールと同レベルの質問とは我が弟子ながら情けない。


あのトロールの方が余程知的じゃった。

まぁ、あのトロールは心身ともに特別製ではあったのじゃが。



半年前から妖魔本神殿の夢見が繰り返し見る夢があった。


[予知夢]の天啓持ちである夢見が繰り返し見るのは細い目をしたノーブルヴァンパイヤが不死者の帝国を建てる夢。


アンデットが世界を蹂躙し、二足歩行生物の3分の1が不死者になると言う悪夢。


緊急事態に英雄リューリュの協力も取り付け、妖魔本神殿は幾人もの司祭や冒険者を世界各地に派遣した。


夢見が何度も見るヴァンパイヤ視点の夢の風景が何処かをやっと突き止めたのが3ヶ月前。


水面に映る細い目の奥に光る真紅の瞳。

かつて[永遠の神]に幼子を捧げる教団が存在し、その捧げられた幼子の生き残り。

闇に還らず、2度目の呪われた生を望み、滅ぼされた、おぞましき教団の忘れ形見。


その細目のヴァンパイヤが最初に見ている光景は至高神聖王国派の本神殿がある、聖王国の聖都の南門と分かった。



じゃが、夢見が最近の夢の中で見た運命を変える条件が分からない。

夢見が運命変更の条件を見るのは運命の分岐が近い証拠。


「正義を求める乾いた魂と妖魔に宿りし勇者の魂を邂逅させよ」

夢の中の神のお告げ。


その意味を求めて本神殿は改めて、世界中に冒険者や司祭を派遣した。

人間、妖魔世界だけではなく、魔族領までも含めた徹底した捜索。


儂がハルピアまで来たのは、その密命の為。

世界の3分の1を[永遠の神]の信徒に渡す訳にはいかぬからじゃ。


そしてつい先程、妖魔神殿を眺めるトロールに偶然出会い話をした。

最初、魂を見てしまう儂の目には人間に見えたトロール。


話してみて驚いた。

トロールの中身は何の手違いか、異世界から来た人間じゃった。

儂は、このトロールこそ[妖魔に宿りし勇者の魂]と確信した。

そして、今に至る。


「条件が揃ったなら夢見が違う夢を見るはずじゃ。」

弟子に改めて告げた。



しばらく後、本神殿への帰還命令と共に夢見が見た夢が報告された。

夢では、細目の旅司祭とトロールが楽しげに旅をしていたそうじゃ。

この章は、これで終わりです。

よろしければ感想、評価を、よろしくお願いいたします。

外伝で分けた方が良かったかな?

とか、気になりますのでコメントもよろしければ……。


私の黒歴史がまた1ページ。


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