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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第12章 兎達の戦い

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運命の条件

[第3クォーター]視点です。


俺は[茶色い雪兎]から離れ、ハルピア近郊まではブライと共に旅をした。


途中ゴブリンを食べたりしたが、このあたりは転生した時に話かけてきた神だか、悪魔だかが調整(・・)してくれたのだろう、当たり前として捉えている。


もし、前世の精神、感覚のままだったら、とうに発狂しているだろう。

捕らえた獲物を貪り食うのは、同じ生でも、刺身や卵を食うのとは訳が違うからだ。

そういえば、卵を生で食べるのは日本人ぐらいだったか?


全てが、すごく遠い出来事に感じる。

無論、異世界なのだから比喩ではなく遠くに来てしまったのだが……。



ブライと別れると、ハルピアの妖魔神殿に向かった。


ハルピアの妖魔神殿はこの大陸でも有数な神殿なので、観光も兼ねて参拝しようと思ったからだ。

それに、何かの予感があった。

これが神の啓示と言うのだろうか?


そういえば、この世界には悪魔の概念が見当たらない。

[悪神も、また神也]

と言うが、一神教の影響がないからだろう。

神と対立するのは他の神なのだ。

前世と違い、奇跡や恩寵と言う形で神が実在するのだから一神教は無理がある。


そういえばブライは、夜な夜な関係していたフィーバーを迎えに行くと言っていた。

冒険者になるらしい。


本当は俺をオルガ族に買い戻してもらわねばならないらしいが、契約魔術のない今、俺は奴隷に戻る気はない。


この世界に慣れる前にダークエルフ達に捕まり奴隷にされたのは不幸な事だったが、妖魔としてのイロハが学べた授業料だと飲み込む事にしている。


奴隷になると言うのは自分が家電製品や車などと同等に扱われると言う事だ。

それなりにコストが、かかっているので壊すつもりで使う主人は少数派だが、[壊れても仕方が無い]ぐらいでは使われるので厳しい。


ただ、比較的恵まれた環境でアスリートだった俺と違い、不定期雇用で勤めていた友人は[契約きれたら使い捨て]が辛いとボヤいていたので、前世にも奴隷的環境はあったのだろう。

更に[奴隷的に働いているのは自己責任]とまで言われるのだから、たまったものではないと嘆いていた。



妖魔神殿を参拝すると、同じ妖魔でも、トロールは珍しいらしく声をかけられた。


「そこの人、いやトロールか?どうして、ここに。」

話かけてきた老人は目が悪い様だ。

一瞬、人間に間違えられた。


「色々あったが、自由になったので物見がてら参拝にきた。」


「信心深いトロールは珍しい。更に物見をするトロールは始めてじゃ。」


「折角じゃ茶を進ぜよう。あちらの庵に来ると良い。」

変わった爺さんだ。

見れば司祭服を着ている。

なるほど、妖魔神の司祭か、人間では変わり者になるだろう。



「なるほど、それは大変じゃったのう」

庵で茶を飲みながら身の上話をすると、老司祭は溜息の後、そう呟いた。

話すと気さくで話のわかる司祭だった。


茶を飲むのは前世以来で、久しぶりだ。

この世界では高級品で人間でも、そうそう飲めないし、トロールで茶を飲んだのはこの世界では初めてだと思う。


「で、これから、どうするつもりじゃ」

俺が、まだ何も決めてないと答えると、司祭は突然言った。


「ところで、細目の人間の女に心当たりはないかの?」


[ある]と俺は答える。


「あるならば、船に乗り聖都へ行け。行かねば、その女は殺される定めから逃れられぬ。」

俺は驚いた。

この爺さん天啓持ちなのか?

話の中でハイレンの容姿には触れていないからだ。


[天啓か?]


「儂ではない。じゃが、役に立たぬ[天啓]じゃよ。未来が視えるが、いつ誰の、どんな未来が視えるかランダムなのじゃ。」


[未来は変えられるのか?]


「条件が揃えばの。」

俺が船に乗ると言うと、爺さんは偽造書類を手配し、手続きをしてくれたうえに、銀貨までくれた。


「聖都の南門近くで待つが良い。条件が整う事を祈っておるよ。」


そして俺は船に乗った。

どうやらハイレンの[死の運命]を変える条件は俺らしい。

文章の途中の神や奴隷に関する記述は[第3クォーター]の感覚を記述したものです。


この物語はフィクションであり、実在する団体、人物とは関係ありません。


ふぅ、定形文。


私の黒歴史がまた1ページ。

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