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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第1章 旅の始まり

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ハーフエルフ

冷夏視点です。

気がつくと、独りで呟いている人扱い(笑)。

まだお昼ぐらいだけど、猟師小屋で布にくるまり、ぼーっとしている。

ジグさんは意識は戻ったけど、動けずに時折苦痛に呻いている。

デグさんはそれを心配そうに見ている。


「(この世界に痛み止めはないの?)」


『薬の事か?あるにはあるが、あまり効かないか、効きすぎるのがほとんどだな。』

『神聖魔法でも治すことが優先で苦痛を取り除くのは後回しになる。神聖魔法は高価だからな。』


「(それって、痛くて死んじゃわない?)」


『もちろん、死ぬこともある。だが、そもそも比較的安価で治療を受けられる前世の日本の方が異常だろう?』


「(そうだったのかも……。)」

気分が沈んできている。

戦闘でハイだった反動もあるけど。


「(そういえば、ハーフエルフについて教えて。あと中魔法とか、[妖魔の書]とか。色々教えて。)」

私は話題を逸らす事にした。

前世の旅は終わったんだから、この世界を知らないと。


『色々教えても、一度では理解が無理だろう』

『そうだなハーフエルフについて教えてやろう。』


『まずハーフエルフと言うのは、通常エルフと人間との間に産まれる罪の子だ。』


「(罪の子?)」

いきなり重い言葉がきた。


『エルフの定めたエルフ法では人間との性行為は禁止されている。だから大抵は人間がエルフを暴行した結果産まれた子だ。』


う~ん。何か、いきなり重すぎるよ。

異世界に人権とかないのはわかるけど、それにしたって。


『ちなみに例えそうだとしても、エルフ法に触れるとして15才の成年になると、エルフの里から追放される。15才までは未成年だから執行が猶予されるそうだ。』


『エルフには高位エルフと通常エルフがいるが、人間との性行為で子が出来るのは通常エルフだけだ。』


『まぁ高位エルフはエルフの森から出てこないから、もう絶滅してました。と言われても驚かないが。』

『ダークエルフについては、ややこしくなるから割愛する。』


「(待ってマドウ。ちょっと理解出来ないよ。ついていけてない!)」


『落ち着け冷夏。どうした?』


「(エルフ法とか、エルフの里とか、高位とか通常とか、マドウの話す、前提がわからないんだってば!)」


「(お年寄りがスマホでネットしたいけど、分からなくて、説明書見たくても、説明書がネット見る前提になってるメーカーだよぅ。)」



「嬢ちゃん。唸ってるが嬢ちゃんも、どこか怪我でもしてるのか?」

ロバートさんが話かけてきた。

唸ってた?私。


「ロバート。淑女には色々ある。私が見るから。」

ミケさん?

「魔導書との交信中なのだろう?」

小声で言われた。

交信中って電波な人扱い?



『最初に解析されていたからな。』

『冷夏の例えも意味不明だが雰囲気は伝わった。』


『高位エルフと通常エルフの違いも後にしよう。成年年齢が高位エルフは150才。通常エルフは15才とかあるが……。』


「う~ん。マドウは教えるの下手くそだよ〜。」


『……続けるぞ。』

『ハーフエルフは1代雑種だ。人間、エルフ、どちらとも子が成せない。ラバとかレオポンとかと同じといえば分かるか?』


ラバ?柚子ポン?


『先程はエルフからみたハーフエルフだったが、人間からの扱いは、孕まず、孕ませず、見目麗しく、希少で、病気知らずの、高級娼婦、高級娼夫だ。』


『エルフはゴブリンとかと同じく、感染症にかからないが、ハーフエルフはその血をひき、感染症にかかりにくい……』


私も人間だけど、人間って酷い。凹んできた。


『……だからハーフエルフは娼館にいるか、貴族の玩具になっているか、冒険者になっている。』

『冷夏。聞いてないな?』


「(ごめんマドウ。完全に凹んでる。世界はやさしくないね。)」

「(契約したこと少し後悔しているよ……)」


『今日はこれぐらいにしておこう。』




(もしもし?口の悪い魔導書さん。冷夏が私の事を死神って言うし、凹んでるし、何やってるんですか?)


『(冷夏がそんなに気になるのか死神よ。)』


(せっかく引けた聖女候補が頓死とかしたらアンインストールですよ。)


『(心配ない。前世でもそうだった。世界を呪っても、冷夏は生きる事に貪欲だからな)』

こういう講義する先生。大学にはいますよね。


私の黒歴史がまた1ページ。

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