南門
ようやく兎の章終わりそうです。
少し短めです。
ハイレン視点です。
夕方の鐘が鳴り、門が閉まる直前に聖都を出た。
最後に一度だけ振り向いたが、閉まる門を見て、また涙が出そうになった。
大丈夫、いつか戻れる
自分に言い聞かせる。
それに[生きて]と条件をつけなければ、回収班に処分されたらすぐだ。
首ぐらいは持ち帰られるだろうから。
南門から1番近い森の端、半刻あまり歩いた所にその猟師小屋はあった。
灯りはついておらず、見張りも居ない。
あたりは、すっかり暗くなり、待ち伏せ警戒でなければ、ランタンに灯りを入れる暗さだ。
居る。
待ち伏せの気配がする。
そっと小屋に近づく。
すると、後から微かに音がした。
躊躇わず振り向きざまに、手にしていたモーニングスターを横薙ぎに振り抜く。
もし、これで後に居たのが一般人なら、私は立派な殺人者だ。
だが、その心配は杞憂に終わり、鉄球は後から忍び寄っていたスカウトの側頭部を砕く。
先ずは1つ。
舌打ちと共に、茂みからリザードマン刀を持った男が斬り込んで来る。
初見殺し。
私の唯一の必殺技。
相打ち上等で、モーニングスターを上段から振り抜く。
今回も賭けに勝った。
相手は受ける為に刀を戻したが、鉄球は刀をへし折り、相手の頭に直撃する。
これで2つ。
後の小屋から声がする。
「あのクソ司祭。何が兎狩りだ!話が違うぜ。」
私が振り向くと片手剣を構えた3人が既に包囲する様に陣取っていた。
構えから分かる。
手練れだ。
この3人に連携されては、手も足も出ない。
だが、どうにかして、後1人ぐらいは闇への旅路に付いて来てもらおう。
私がモーニングスターを頭上で回転させタイミングを測っていると……。
咆哮と共に上から岩が降ってきた。
まず岩が着地で目の前の1人を潰す。
2人目は岩が正面から殴りつけると大きく、ひしゃげ倒れる。
3人目は背を向けたが、そこは私が鉄球を叩きつけ沈黙させた。
[あの爺さんが言った通りだ]
岩が喋る。
ぐももった低い声。
[遅くなったな、すまん、ハイレン]
エルフ語?
しかし、この声は……。
「[〘第3クォーター〙?何故こんな所に?]」
降ってきた岩が、いや岩の様なトロールがそこに居た。
知ってはいたが、驚異の飛翔からの制圧。
恐るべきトロール。
いや、ハイパートロールと言うべきか?
しかしハルピアから、どうやって聖都まで来たのだろう?
私は再度問うた。
「なぜ聖都に?」
[もちろん、ハイレンを助けにきたんだ。]
当たり前の様にトロールは答えた。
聞けば、あの後すぐにブライ君とは別れたらしい。
ブライ君は約束があると言っていたそうだ。
私がフィーバーの最後を話すと、笑う。
[なるほど、茶番だ。]
私は意味が分からないと伝える。
[前にも、言ったろう?茶番だ]
トロール流の言い回しは、やはり意味が分からない。
質問を変え何故私を助けに?
と改めて尋ねた。
[運命だからだ]
今度は運命ときた。
更に分からない……。
取り急ぎ、5つの遺体に祈祷をすると、私と[第3クォーター]はその場を離れた。
私の黒歴史がまた1ページ。




