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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第12章 兎達の戦い

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乾いた魂

う~ん。明るい話を書かなきゃ。

ハイレン視点です。


アロマが近衛省に移動になり、聖騎士アロマになった。

軍務省第2傭兵隊特務班、冒険者名[茶色い雪兎]は私1人になったが何故か解散は命じられない。

まさかバジリスク討伐しろとかは言われないだろうが、少し心配している。



軍務省の正規軍と近衛省の聖騎士によるバジリスク討伐は魔獣を発見すら出来ず失敗。


同時に実施された典礼省による冒険者への討伐依頼はリスクの測れない少数のパーティが受注するも全滅か依頼破棄。


軍務省第1傭兵隊によるバジリスク討伐は巻狩り作戦により魔獣を発見するも多数の死者、石化者を出し失敗。


内務省軍と緊急事態省によるバジリスク討伐が計画されているが、軍務省も汚名返上の為の計画を検討しているらしい。


そうしたなか、私は軍務司祭からの呼び出しを受けた。



呼び出された部屋は普段使用される建物とは違い、いくつかある特務班のみが使用する小さな建物内にあった。

中には軍務司祭と軍務助祭のみ。

人員の補充や任務の伝達ではない様だ。


「ハイレン従軍司祭。悪い知らせだ。」

軍務司祭が顔をしかめながら言う。


「君に近衛省を通じてイエレアス家より告発状が出ている。」

イエレアス家?アロマの家だ。


「容疑は[上官への不服従]並びに[妖魔への内通]、これは軍法会議への召集令状だ。」

軍法会議の有罪率は9割以上、しかも令状が発行済みとなると神殿を通じての取り下げ交渉の余地もない。


「そんな馬鹿な!私は……」

私は確かにアロマのヘイトを、買ってはいただろう。

だが、消される程とは思えないし、消される様な秘密(スキャンダル)を得た記憶もない。


「ハイレン従軍司祭、もし弁明するなら、ここではなく軍法会議で行い給へ。弁護人も付くだろうから。」

憐れみ深い目で軍務司祭は私を見る。

そうした弁護もあって、なお有罪率が9割以上なのだから……。


「だが弁明せず、軍法会議にかかる前に任務で王都を出る選択肢もない訳ではない。典礼省のバジリスク討伐依頼は生きているし、君はまだ表向き[茶色い雪兎]と言う冒険者だ。ここに冒険者の店宛の依頼受託の書類もある。」


「無論、依頼を果たさない限り2度と王都には戻れなくなるが……。」

つまり依頼を受け失踪しろと言うことだ。

神殿の孤児院出身の私に身内はないが、失踪すれば二度と聖都には戻れない。


「本日中を持って[茶色い雪兎]を解散する様にという命令書も来ている。」


「どうするかね?」

つまり、今、決めろと……。

一瞬目を瞑り考える。

私は依頼受託書だけを持ち部屋を飛び出した。



が、軍務司祭にお礼をしていないと気が付き振り向いた。

扉を開けようとすると声がする。


「司祭、よろしかったのですか?彼女が捕まれば脱走幇助。そうでなくても、イエレアス家の恨みを買いますよ。」


「抜かりはない。それにこれは先方の希望なのだよ。」


「イエレアス家の?」


「軍法会議の記録は公文書になる。結果は縛り首だとしても、ある事、無い事を証言されて記録に残るのはよろしくない。」

「例え、それが事実の証言だろうともね。」


私は再度、回れ右をすると、そっと部屋から離れた。

未練はサッパリなくなったが、悔しさで涙が溢れた。



夕方

「勇者の旅立ち亭」で典礼省の依頼を受けた私は1人南門に向かっていた。

冒険者として依頼遂行中なら、門での検問を事実上スルー出来る。


聖都にあった僅かながらの財産を全て処分し、軍務司祭が手配したという[茶色い雪兎]の新メンバーの待つ聖都郊外の森に向かう。


「依頼を果たすつもりなら、メンバーを紹介する。」

軍務司祭の推薦状を冒険者の店で受け取った。


罠だとは分かっている。

待ち伏せている相手は脱走兵回収班5人。

前の回収班は魔獣と戦い、全滅したとの噂だが、回収班に素人を配属しないだろう。

素人か……傭兵に誇りを持っていたフィーバーの口癖だった。

妙に感傷的になっている。


情報を聞いた、同じ院を出た幼馴染には「素直に逃げろ」と助言された。

旅司祭にでもなり、機会を待てと。


だが、私は、この世界にカケラでも正義があるのかを知りたい。

そして、どうせならば意地を通して死にたい。

聖力は4しかなくとも、啓示を受けた正義の神、至高神の司祭なのだから、1つぐらいは不条理と戦った証が欲しい。


門へと足を早める。

愛用のモーニングスターの鎖が微かな音を立てた。

最近久しぶりに対面で食事をした友人の話。

数年前、コロナ禍で退職勧奨を受け退職した時の話をしてくれたが、何より悔しさで一杯だったと教えてくれた。

使い捨てらた感が酷かったと。

労基に行ってでも、意地を通せば良かったと嘆いていた(会社はコロナによる補助金をシッカリ受けていたらしい)。


世界は不条理に満ちている。


私の黒歴史がまた1ページ。


出発前に振り向くと、本音が聞こえてしまうのは某ゲームからです。

[エリクサー]より[男油]の方が効きそうだけどなぁ

(笑)

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