待ち合わせ
ブライ視点です。
人によっては気分の悪くなる描写があります(笑)。
僕の生まれたモースの里は山脈に近く貧しかった。
[妖魔の神]が授けてくれたという、色とりどりのトウモロコシの実は小さく、英雄リューリュの授けてくれた農業魔法技術を使っても食べるので精一杯。
物々交換で済んでいた頃ならまだ良かったらしいが、銀貨、金貨の貨幣が力を持つと換金出来る物のない里は、いっぺんに寂れてしまった。
今ではアルガ族、オルガ族から借金をし、実りの季節に僅かに返しては、また借りるという先の見えない暮らしになっている。
そんな中、オルガ族から提案されたのが今回の[バジリスクサボテン育成計画]。
同じ様な境遇の隣の里と組んで換金出来る植物を育てる計画だ。
隣の里はゴブリンを従える技術を持つが、今時ゴブリン使いを当てにする者など滅多にいない。
ウルガ族などと気取っているが、実態は貧しい里の集まりだ。
そうして、モースの里と隣の里はオルガ族に更に借金を重ね、軍資金を捻出して計画を推進したが、共に旅に出たゴブリン使いは貧しい里を捨てた。
今上の魔王はゴブリン使いを雇用しているらしいとハルピアで聞いてから、稼いだ金を里に持ち帰るのが馬鹿らしいとボヤいていた奴だから仕方が無い。
そして、個人的に借金をして購入したトロールを失った僕は里に帰れない。
本来は、砂漠で借りたラクダの様にトロールを買い戻してもらうはずだったからだ。
里に帰ると僕は破産する。
[バジリスクサボテン計画]でモースの里は持ち直すかもしれないが、僕はドワーフ管理の鉱山で、鉱夫奴隷として借金を返し終わるか、死ぬまで働く事になるだろう。
奇跡的に事故に合わなかったとしても、奴隷として60年以上鉱山で働くなんてゴメンだ。
里に帰れないとなると、冒険者にでもなって稼がないと明日がない。
先ずは盗賊を仲間にして、出来たら神官か司祭を引き入れたい。
絶対必要な戦士にはアテがあった。
夕方
煙たなびく妖魔筒を持って船を見ている。
人間達の言う妖魔筒はランニングコストが高いので使い方を考えないといけない。
ただ非力な僕でも使えるので悩ましいところだ。
約束通りの茶番劇を終えて港で佇んでいると彼女が近づいてきた。
「フィーバー大丈夫かい。」
僕は声をかける。
「あぁ、鎧着てても、これぐらい泳げなくちゃ傭兵は務まらないからねぇ。」
器用に立った状態での泳ぎに彼女は切り替えた。
「でも、軍を辞めるんだろ。」
「帰ったら、お嬢様様に告発されて軍法会議。そうなりゃアタイは縛り首になっちまうからねぇ」
夜中に盗み見たアロマのメモには、これからの計画が書いてあった。
僕は手を差し出しフィーバーを海から引き上げる。
全身から海水が滴り落ちている。
彼女はポニーテールを絞り水を落とした後、あたりを気にせず下着を残して装備を外し始めた。
既に何度か見ているが、フィーバーはスタイルが良い。
つい目が行ってしまう。
「それで冒険者に?それとも芝居が上手いから旅芸人にでもなる?」
見惚れているのがバレない様に冗談をいった。
「芝居が上手いだって?」
声のトーンを変えて彼女が聞き返す。
「あの距離で妖魔筒が当たらないのが分からないのは素人だからさ。そもそも射程距離が足りないし、万が一届いてもダメージはないからねぇ」
さっきの事と勘違いしている。
「そうじゃない。僕との事を隠し仰せたじゃないか。」
「それは、貞淑なお貴族様やオボコのハイレンにゃ想像力が足りないだけさね。気に入ったなら試してみないとねぇ」
「まぁフィーバーは色々百戦錬磨だから……」
下着まで脱ぎ捨てそうだったので、預かっていた身体を拭く布と、替えの下着を手渡し後を向いた。
僕の初陣はフィーバーだった。
成人してすぐの夜。
砂漠の月が輝いていたのを覚えている。
発情期でもないのに、自分が抑えられなかった。
今まで散々な目に合わされたのに僕は夢中になった。
その後、夜営の度に戦を重ねた。
たまに勝てる様になったが、今でも大抵は僕が圧倒されて終わる。
でも、うん、悪い戦いでない。
「アタイは、百戦錬磨かい?言うねぇ坊や。まぁ、あんたが一人前になる様、引き続きアタイが鍛えてやるよ」
濡れた下着を渡して寄越した。
振り向くと抱きしめられる。
僕は人目を気にせず、フィーバーと唇を重ねた。
注意書き
①この世界は15才成人です。
②そして現実世界15才以上推奨の小説です。
③この世界の鉱山は事故が多く、安全に配慮されてない事がほとんどです。
現実世界での鉱山とは違います
④破産に対する概念が現実世界と違います。
「う~ん。教育に悪くないよ配慮すると大変だよぅ。ケリー先生!」
私の黒歴史がまた1ページ。




