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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第12章 兎達の戦い

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貴人に情なし

聖騎士見習いのアロマ・アギオ・イエレアス視点です。



私達[茶色い雪兎]はバジリスクサボテンを入手し魔都ハルピアまで戻ってきた。

ハルピア神殿の軍務司祭に帰還報告をし、魔族デポの[魅惑の伯爵夫人]に向かう。


3日後の聖王国行きの武装商船で帰国するが、それまで休暇が貰えた。

その間を部下達が、忌まわしい魔族の宿で過ごすと言うので、それに付き合う形だ。


忌まわしい魔族の宿は食事だけは信じられない位に美味しい。

あのペティとか言うハーフエルフを購入したいと、ハルピアの金の亡者共が打診するのは頷ける。


あと、しばらくの我慢。

帰国後、私の身柄は軍務省から近衛省に移り聖騎士に任じられる事が内定している。


正規軍から特務班に出向させられた時は、どうなるかと感じていた。

部下達に理念を語り、意識を改善してあげようとしたが無駄だった。

やはり雑草は薔薇にはならない。


残念ながら、フィーバーとハイレン2人は帰国後、告発され軍法会議を経て処分される。

少し可哀想だが、イエレアス家の面目の為には、やむを得ない。


報告時、軍務司祭が部下達を憐れむ目で見ていて、(感づかれるではないか)とイラッときた。

部下達は危険に対しての嗅覚は鋭い。

野良犬も真っ青だ。


臭いラクダの世話をした事や盗賊に殺されかけ、従軍司祭に泣きついた事など、記録に残されては困る。

聖騎士になる私の汚点は消えてなくなる必要があるのだから。


「いらっしゃい〜あら〜お帰りなさい〜スモールバジリスクは取れましたか〜」

忌まわしい魔族(デポ)が挨拶をしてくる。


「あぁ、2匹取れた。血抜きもしてある。また唐揚げにしてくれたら嬉しいねぇ」


塩の入った袋からフィーバーがトカゲを出す。

いつの間に捕まえていたのだろう?

まったく油断ならない暴力女。

だがエールを5つ頼んだのは彼女なりの感傷か。


「任務の成功と死んだ仲間に」


リーダーとして乾杯の音頭を取った。

部下の2人には休暇と船旅を楽しんでもらおう。

軍法会議で縛り首になる部下達への私からの、せめてもの温情として。



3日後

聖王国行きの武装商船の甲板で私達は出港を待っていた。

船員達が忙しく積荷のチェックをしている。


「竜人シルク200束、乾燥毒消し草10箱、リザードマン刀50振り、ドワーフグラス5箱、積み忘れるなよ。首が飛ぶぞ」


「誰だよ?こんな大きな岩なんか積んだの。」


「それな、書類では、何でも貴重な鉱石らしい。貴族様のご要望さ」


武装商船に偽装しているが本来は軍船。公海に出れば聖王国の軍船に早変わりする。


そして、この船は軍務省所属だから、貿易品の積荷は記録には残らない。

貴族、将軍達の懐を潤す品物に不備があれば平民の命など風前の灯だろう。


船長が私に出港を知らせる挨拶にきた。

貴族を敬う事を知らない不器用な部下に、この10分の1でも謙虚さがあれば、縛り首にはならずにすんだのに残念なことだ。。


私が鷹揚に頷くと船は港から離れ始める。

船が岸を離れてすぐに事件は起こった。


「フィーバー!フィーバー!」

岸辺から声がする。

拡声魔法だろう。

この声は数日前に脱走した奴隷のブライの声だ。


私の従者兼玩具にならなかったダークエルフの少年。

部族に帰れないと嘆いていたから、慈悲をかけてあげようと考えてたのに無視した妖魔。


声につられて船縁にフィーバーが近づくと乾いた音がした。

フィーバーが船縁を越え海に転落する。


私が思わず船縁に近づくと、煙たなびく妖魔筒を構えたブライが、こちらを睨んでいた。

船は速度を上げ、港から離れていく。


これは可笑しい。

あの腕の立つ暴力女が、こんなにも呆気ないなんて。


それに惜しい。

やはり腐ってもダークエルフ。

自らの屈辱をキッチリと晴らして見せた。

ペットに出来れば楽しかっただろうに。


「そんな!フィーバー!船を!船を止めて!」

ハイレンが半狂乱に叫ぶが誰も相手にしない。

まぁ、船は簡単に止まれないからどうしょうもないが……。


軍法会議で暴力女が絶望する顔を傍聴出来なくなったのは残念だけど1つ手間が省けた。


ハイレンがフィーバーを助けに海に飛び込まないかと期待したが、そこまで都合良くは行かなかったので、優しく声をかけ慰める事にした。


海風が心地良かった。

「貴人に情なし」

身分ある人は仕えられるのを当たり前に感じている為、有り難みを感じません。

下手をすると、仕えさせてやっている事を恩に感じろとか言う始末です。


現代では「経営者」と言う生き物が上記に似た考えを持っている事が多いです。


私の黒歴史がまた1ページ。

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