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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第12章 兎達の戦い

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その通りダ

行きは、よいよい、帰りは……


ハイレン視点です。

案内人(リザードマン)、行きと帰りで道が違うのは何でだい。」

歩いていると、突然フィーバーがリザードマンに言った。


「!、そ、それは待ち伏せを避ける為ダ。冒険者の後をつけて、一獲千金を果した冒険者の上前をはねる奴らはいル」


「そうかい、しかし冒険者を待ち伏せするって奴らは目利きなんだねぇ。砂漠に出た冒険者の大半はハズレなんだからさ」

レパタで一獲千金を夢見る冒険者の大半は食うや食わずだ。

そんなに簡単に大金を得られる訳では勿論ない。


「そ、そんな事は無イ、冒険の成否など、出発前の冒険者を見ればわかるだろウ」


「だからさ、見ただけでその冒険者の実力を見抜き、気付かれずに追い、帰りに襲う。余程の実力が無いと割に合わない商売だ。違うかねぇ?」

レパタの街の近くでは襲うのは流石に難しい。

レパタの街にも自警組織はある。


離れた場所で待つには水や食料が必要になる。

誰かが獲物を連れてくると分かっているなら別だが……。


「信用してないのカ。雇われた時話したが、本来バジリスクサボテンの生息地は秘密なんダ。お前達を信用して、リスクを取ってるんダ。」


「違うだろう?博打で借金を抱えたアンタは多額の報酬と引き換えに案内を申し出た。アタイらを信用して雇われた訳じゃない。違うかい?」

ギフトがレパタの街の情報屋から仕入れた話を元に誘いをかけた結果雇ったのが彼だ。


「で、オマエは考えた。サボテンを採取してから裏切るのが1番儲かるってね。」


「……その通りダ、……。」

突然、案内人のリザードマンが走り出す。


「ダークエルフのガキを殺せば、トロールのコントロールは効かなくなル。金髪は貴族ダ。」

突然右手側に岩場が現れ、その影からリザードマンと人間の混成盗賊団が8人現れる。

[幻影魔法]で隠されていたらしい。


矢がブライ君に3本、[第3クォーター]を除く他の3人には1本づつ飛来する。


フィーバーはブライ君を突き飛ばしながら自身も回避し、私の前には[第3クォーター]が出て庇ってくれた。

アロマの肩には矢が刺さるが、防具の性能が良かったのか平気そうだ。


[俺の影に入れ]

4人が隠れるには小さな遮蔽だが第2射は全てトロールの岩の様な皮膚で弾かれた。


ブライ君が妖魔筒で反撃を開始する。

発射間隔はあるが、どうやら1人は射殺したらしい。


「やるじゃないかブライ。しかし、持久戦はこちらが不利。このままじゃ干上がっちまうからねぇ。」

向こうは岩場に隠れながら交代で戦えるがこちらは釘付け、水も飲めない。


「おい、アロマ!突貫しな!」


「フィーバー、私を戦死させたいのですか?半分も行かずに針鼠です。」


「さっき裏切り者が叫んだから大丈夫さ。あんたは殺さずに捕まえたら金になる。おっちょこちょいが射ても鎧の性能で死にはしないさ。」


「まぁ、アンタは上官だし、このまま負けてもアンタだけは輪姦される位で済むからねぇ。無理にとは言えないさ」


アロマは貴族らしからぬ舌打ちをすると盗賊に向けて突撃する。


「殺すナ!足を狙エ!」

突撃したアロマに矢が殺到する。


「ブライ!援護しな、アタイに当てるんじゃないよ!」

[俺も、突貫する。ハイレン(うしろ)走れ!]


アロマに矢が4本刺さり倒れた。

ただ脚に2本、胴に1本、腕に1本だから手当が間に合えば助かる可能性はある。


ブライ君が、また1人射殺した。

残りは裏切り者を入れて7。

だが……。


「トロールなんかと殺り合えるか!」

[第3クォーター]が、近づいただけで蜘蛛の子を散らすように逃げ始める。

背を向ける相手を更にブライ君が射殺し戦闘は終結した。




「どうだい?助かりそうかい?」

アロマを治療する私に向かってフィーバーが聞いてくる。


「痛い、痛い、死にたくない。回復を、回復をかけて!お願い!」

矢尻を取り除かないと、回復魔法で傷が塞がらない為、先ずは矢を切り取る必要があるが、ちっとも大人しくしない。


「ブライ君、アロマに、これを噛ませて。」

痛みに耐えさせるのと、うるさいのを防ぐ為、ボロ布を渡す。


「しっかりしなよ隊長!アンタは聖騎士になるんだろ。直ぐにハイレンが楽にしてくれる!怖がる心配はないんだよ。」


妙に切迫感があり、それでいて優しくフィーバーが話す。

言い方も台詞も絶対わざとだ。


「ハイレン、何とかならないのかい?」


何とかも何も、アロマの部分的に金属で補強された鎧は完璧に機能し胴や肩は、ほぼ無傷だし、腕も、かすり傷、太ももの傷も重要な血管は避けているから死ぬ心配は殆どない。


「うー、うー、ひにたくなひー」

ただ人間はショックで死ぬ事もあるから、あまり煽らないで欲しいのだけど……。


「至高神よ。この者の傷を全て癒し給え」(使3残1)

私が神聖魔法を使うと傷口が光った後に塞がる。


「ハイレン~」

アロマが泣きながら抱きついてきた。


「まだ、何処か痛みますか?」

私が尋ねると、子供の様に首を振る。


「怖かった。チシナみたいに手遅れだって言われるかと……。ハイレン〜」

フィーバーが笑い転げている。


「聖王国の聖騎士は恐れ知らズと聞いていたガ……」

ブライ君は肩をすくめる。



裏切り者のリザードマンがサンドチューリップ狩りの囮に身を落としたのを知るのは少し後の事だった。

「サンドチューリップ狩りについて」

砂漠でサンドチューリップを狩るにはまず囮がいる。

囮に特殊な痺れ薬を背嚢一杯に持たせ出現予測のある砂地を歩かせる。

致死の薬には何故か喰い付かないし、痺れ薬も背嚢一杯でも効き目は鈍い。

痺れ薬を取り込んだサンドチューリップを掘り出し、止めを刺し、縄をかけ運ぶ。

こう書くと簡単そうだが、多人数で効率よく行わないと、逃げられたり反撃にあう。

正直、犠牲が出ることの方が多い。

ただ、これだけの危険を冒しても希少なミスリルが手に入れば採算は合うそうだ。

因みに囮は襲われる直前背嚢を捨て逃げる。

多額の成功報酬が約束されているが、事実上建前になっており、大抵はそのまま捕食される。

[ある旅司祭の記録より抜粋]


私の黒歴史がまた1ページ。

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