砂漠の花
岩と砂の入り混じった砂漠
そこにレパタの宝は眠る。
冒険者の手記より
サンドチューリップ
地中に生息する妖魔でミスリル鉱の鉱脈の近くを何故か好む。
縄張りを持ち、基本単体で行動する。
肉食で地上を歩く人や動物を捕食する為、ドワーフ語では[ミスリルの守護者]と呼ばれ、人間共通語では、その口を閉じた姿がチューリップの蕾の様に見えるのと、ランドルト山脈の西にある砂漠に多く生息することから、サンドチューリップと呼ばれている。
そのチューリップの花にあたる部分は見た目は石の様だが、金属を多く含み非常に硬く、また実際ミスリルを多く含む為、その死骸は高値で取り引きされる。
その一瞬、私は教団の講義を思い出していた。
そして、その口を閉じた姿は確かに石のチューリップの蕾に見えた。
レパタの民の偵察をするため、ギフトは音も無く、砂の上を滑る様に歩いていく。
レパタの民のテントまで後少しの所で振り返りハンドサインを送ってくる。
[総数4、歩哨1も油断し眠っている]
[歩哨は殺れそうかい?]
[分かった]
フィーバーとの短いやり取りの後ギフトが投げ短剣を投じた。
首に短剣を生やして男が倒れる。
[残りも片付ける]
ギフトが接近戦用短剣を抜き、簡易テント内に入ってゆく。
「歩哨が素人だと、昼寝の代償が高くつく。リーダー覚えときな。」
フィーバーの呟き。
やがてギフトが現れ
[クリア]
サインを送ってきた。
行きと違いギフトが足早に、こちらに
戻ってくる。
日が中天にかかり信じられない暑さだ。
永眠したレパタの民ではないが日陰で休息を取るべきだろう。
私達はテントを取りだそうとしていた。
「いけなイ!その歩き方では駄目ダ!」
案内のデザートリザードマンが突然、叫ぶ。
するとギフトが、下から飛び出してきたサンドチューリップに、いきなり呑まれた。
突然の事に悲鳴さえない。
ギフトを呑み込んだチューリップの蕾は砂を巻き上げながら地下に潜ってゆく。
「ギフト!」
私は叫んで走り出した。
そんな馬鹿な。
あんなに呆気なく喰われてしまうなんて!
「[ハイレン、馬鹿!戻れ!サンドチューリップはこの時期、雌雄2匹で活動する!]」
ブライ君が後からエルフ語で叫んでいる。
え?
気が付いた時には私は[第3クオーター]に抱きかかえられ飛翔していた。
後でサンドチューリップの口が閉じる金属音が聞こえる。
[お前、世話が焼ける]
着地後、全力で駆けるトロールがレパタの民側の岩場に着いた時、そう呟かれた。
なるべく岩場を伝い、みんなの所に戻るとフィーバーに頬を張られる。
「細目、お前まで素人みたいな真似すんじゃないよ!」
口の中が切れ血の味がする。
「しかし、まいったねぇ」
デザートリザードマンが言うには、サンドチューリップは一度食事をすると、数日は出て来ないという。
だからもう1匹さえ空腹を満たせば、安全にサボテンの回収作業が出来る。
逆に言えば数日内に何か喰わせないといけない。
生き物としての振動をさせずにサボテンに近づく方法もあるが、失敗すれば可哀想なギフトと同じ運命を辿る。
「ハイレン、奴隷にサボテン回収を命じて。」
アロマが突然言う。
「成功すれば良し、失敗しても良し、合理的でしょ?奴隷なんだから。」
相手にされないからって、対応が厳し過ぎる。
「容赦ないねぇ。さすが貴族様。」
「しばらく前まで『ブライ君、あのね』とか言ってたのはアタイの聞き間違えだったみたいだねぇ。」
アロマの掌返しをフィーバーが皮肉る。
「ハイレン!命じなさい。さもなくば貴女に行ってもらいますよ!」
フィーバーを無視し、しかし後ろめたさからか怒りを見せてアロマが再度言う。
「命ジられなくても僕が行くよ。たダ魔術の使用許可は出して。」
ブライ君が穏やかな表情で告げる。
「坊や、頼んだよ。」
フィーバーが珍しくブライ君を気遣った。
[浮遊](使1残5)
浮かび上がったブライ君がノロノロとサボテンに近づく。
サンドチューリップは基本振動で獲物を探るというが、100%ではないらしい。
「ハイレン、そのトロールにも行く様に命じて。」
アロマが、さらに命令してくる。
[ハイレン、俺、奴隷でない、対等伝えて]
私が話そうとするとその前に[第3クオーター]が返事をした。
!?人間共通語理解している?
「ハイレン!」
アロマが苛立たしげに催促してくる。
「[第3クオーター]は対等契約により、拒否すると主張してます。」
「妖魔と対等?貴女は従軍司祭のクセに妖魔と通じてるのね。」
アロマは当て擦りをしてきたがそれ以上は話さなかった。
だが……。
[ハイレン、対等、契約違う、ブライ奴隷契約した、俺との契約は解除、契約魔術は複数契約出来ない、俺、自由意志でここに居る]
トロールが恐ろしい事実を告げてきた。
つまり今、このトロールは自由なのだ……。
寄生○の捕食イメージです。
寄○獣衝撃的だったなぁ
私の黒歴史がまた1ページ




