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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第12章 兎達の戦い

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聖王都

大陸の東端に位置し、西門を出て数日真っ直ぐ進むと[聖なる盾]と呼ばれる山脈の連なりにぶつかる。

南北2つの門は、それぞれ街道の起点になっており、至高神、聖王国派の本拠地兼聖地がある事から巡礼者が絶えない。

朝食を終えた私達は[勇者の旅立ち亭]を出て王都の東に位置する港に向けて歩いている。

宿の主人は遠回しに逃げるなら、とっとと逃げろと言ってくれていた。

単に店での厄介事を嫌っただけかも知れないが。


すでに2人そろって陸路で王都から出る事は難しい。

ならば、東の港から船で王都を出る。

そう考え港まで来た。

事実上それが唯一の脱出路だろう。


ただ、それも[1人でなら]が条件になる。

2人では出港前の内務省巡検に引っかかり広場の晒し首の仲間入りだ。



「ロカ、船長と話してきました。あの商船ならハルピアまで1人銀貨20枚で乗船出来ます。」

食事と水も最低限は出るし、出港は風の関係で夕方。

1番早く聖都を離れられる。


「この[ムゲットメモ]の原本と写本を持って言って下さい。写本はハルピアの[魅惑の伯爵夫人]で[竜の卵]と言う冒険者か、留守ならば主人のデポに買取ってもらうと良いでしょう。」

そして、それを路銀に東のリキタ伯爵領に行き大地母神殿のケリー上級神官を訪ねる様に伝えた。


「聖女ムゲット研究者のケリー女史なら[ムゲットメモの原本]と[ムゲットの孫弟子]の貴女を悪い様にはしないはずです。」


「クーアさんは、どうするのですか?」

ロカは自分より、私の心配をしている。

彼女に何故未だ啓示がないのか不思議でならない。

下手な神官より余程聖職者に思える。


「私は何とかします。今までも、上手く生き延びて来ました。」

今までの経験は未来を約束しない。

そんな事は分かっている。


「本当に生き延びられるのですか?」

正直分からない。

だが、それを言えばロカは船に乗らないだろう。

2人で死ぬのは馬鹿げている。


「大丈夫です。勝算のない作戦には出ませんから。」

嘘だ私には勝算などまるでない。


「私に嘘は通じません。貴女は……。」

彼女の言葉を私は遮った。


「ロカ、貴女なら立派な神官になると信じています。私は嘘をついていますか?」


「クーアさん……。」

嘘に真実を被せる。


夕方、ロカを乗せた船は聖都を離れた。




聖都の西門は南北の門と違い民間に開放されていない。

西門を通れるのは官位のある貴族、官僚、軍人や軍への納入業者だけだ。


それでも、西門の前には行列が出来ている。

近衛省管轄の騎士団、軍務省管轄の正規軍と傭兵隊2つ、内務省軍に、さらに典礼、外務、財務と聖都には役人や軍人が山程いるからだ。


私は、そんな列を横目に門に向かってどんどん歩いてゆく。

門で検査をしている内務省軍人が目に入ってきた。

夜には門を閉めねばならない。

だが、もし高官や高位軍人の出入りを妨げればタダでは済まない。

その隙をつく、我ながら酷い作戦だ。



「おい、お前。列に並べ。何を勝手している。」

内務省の兵士が、みすぼらしい姿の私を呼び止める。

これが仕立ての良い軍服なら敬礼だけでスルーされるのだが。


「任務中だ。通るぞ。」

スラムで掘り出した内務省の身分証明証を見せる。

[内務省特別公共安全局]

密偵の身分証とハッタリで門を抜けられるか?

ロカの様な天啓持ちが居れば、即終了。


「少し、待て。」

内務省の兵士だけあり、少し態度が変わった。

不機嫌を演じ畳み掛ける。


「待て、だと?貴様、誰に口を聞いている。階級と名前を言え。」

さて、どう出る。


「あ、いえ、お待ち下さい。」


「階級と名前は!質問に答えろ!その耳は飾りか!」

内務省の西門番は胃の腑を痛める。

その噂に掛けた茶番。


「何を揉めておる。こちらも急いどる。内務省如きが聖騎士を何時まで待たせるつもりか!」

隣にいた騎馬の年寄りもキレた。


奥から先の兵と共に壮年の内務省兵が出てくる。


「申し訳ございません。聖騎士様。お通り下さい。そちらの、ご同輩もご苦労さまです。部下の非礼はご容赦を。」

私は身分証を引ったくる様に取ると

「お務め、ご苦労」

とだけ言って堂々と門から出た。



茶番がバレ、近くの森で立て籠もる事になったのは、それから3日後になる。

魔法ある世界で、顔パスがまかり通るなら、検問は意味がないですね~。。

魔術で変身出来るから

「今ここに儂が来なかったか?」

「馬鹿もん、そいつがル○ンだ」

が出来てしまうので(笑)

え、例えが古い?


私の黒歴史がまた1ページ。

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