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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第12章 兎達の戦い

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暴力

気分の悪くなる描写があります。

ご注意下さい。

[英雄]は次回です。


半刻もしないうちに砂漠に倒れこんでいるダークエルフの少年とその傍らに控えるトロールに追いついた。

トロールは近づく私達を見ると少年から離れてゆく。


「[ブライ怪我酷い。治癒魔法必要。]」

トロールが話かけてくる。


「[助ける、仲間。殺す、諦める。俺離れてる。]」


「こいつは何を話してるんだい?」

フィーバーが聞いてくる。


「この少年を助けるには治癒魔術が必要で、助けるかの判断は任せると話してます。」

トロールのエルフ語を通訳する。


「伝えてあげなよ。死なない程度に癒やして尋問するって。その後は(ハイレン)玩具(おもちゃ)になっちゃうけどって。」

ギフト……。

私を何だと思っているのだろう。


トロールには取り急ぎ傷の様子を見ると伝えた。

ブライと呼ばれた少年の背には矢が刺さっている。

アロマに手伝わせ傷を開き矢尻を抜き

、治癒魔術をかけた(使1残3)。

致命傷ではないが、傷を治しきるには再度治癒が必要な怪我だった。


「[名前と所属は]」

私は本音ではもう一度治癒をしたかったが仲間の目が、それを許さない。


「[ブライ。モース里のブライ。ウルガ族]」

後手に縛られ苦痛に顔を歪めている。

ペティ君に似た感じの可愛い少年だ。


「[旅の目的は]」


「[バジリスクサボテンを[時間圧縮水晶]に封入して持ち帰る事。]」


「[バジリスクサボテンを何に使うつもり?]」


「[……]」

質問に答えない。

その様子を見てフィーバーが背中の傷口を蹴りつける。

呻き声を上げて苦しむブライ君。


「耳を削がれたくなきゃ喋れと伝えな。アロマ、ナイフを準備しなよ。」

アロマが青い顔をしながら、ナイフを準備する。


「[正直に喋って。そうしないと耳を削がれてしまう。]」


「[話しても、どうせ嬲り殺すつもりだろ?]」


「[正直に話せば、そんな事はしない。条件次第では自由にしてもいい。]」


「[自由?金も水もなしで砂漠に放り出されても、嬲り殺しと変らない。手を汚さない分、そっちは気が咎めないだろうけどね。]」


「ハイレン。一応(・・)訳しておくれよ。」


「砂漠に放り出すなどされず、助命すると約束して欲しいと訴えてます。」


「なるほどねぇ。坊やは命が惜しいわけだ」

もう一度フィーバーが傷口を蹴る。

傷口が開き出血が再開した。

私が、もう一度治癒を使おうとするのを

止められる。


「坊や、ふざけてないで質問に答えな。血が足りなくなるよ。」


「[質問に……]」


「訳さなくて良いよ。この坊やは人間共通語が分かってる。耳を削ぐって言った時に反応みせてたからね。アタイはふざけた冗談は嫌いなんだよ。」

更に今度は腹を蹴る。


「腹筋が足りないねぇ〜坊や。優しい従軍司祭様の治癒が間に合ううちに……。」

また蹴る。

今度は胸、骨が折れる嫌な音。

「喋るんだよ!」

ブライ君が咳き込む。

肋骨が完全に折れているだろう。


「フィーバー、死んでしまいます」

流石に抗議した。

ギフトはあたりを警戒するフリをして離れているし、アロマは目を背けている。


「そんなヘマはしないさね。だが、まぁそうだねぇ。1度治癒してやりな。」

私は再度治癒魔術を掛ける。

聖力の残りは2。

背中の出血を先に止めたが完治には遠い。


「素直に話すんだよ、坊や。耳や歯はあった方が便利だろう?」

アロマからナイフを受け取りフィーバーが再び近づく。


「バジリスクサボテンで何する気だったんだい坊や。」


「そ、育てて売るつもりダった。モースの里は野菜とか育てる魔法技術はあるガ貧しい。僕ガ派遣されるグらい戦える人数も居ない。」

訛のある人間共通語で懸命に話す。

顔には暴力に屈した悔しさが滲む。


「じゃあ、その筒はなんだい?妖魔の新兵器なんだろ?」


「これはオルガ族ガ、ヲタク工房に造らせた火打石式の試作品を貰った。姉がオルガ族に嫁いデるから。火縄持ち歩かないブん携帯しやすい。」

やはり試作品だった。

見た所、石弓の様に[威力はあるが使い勝手悪い武器]を押し付けられたのだろう。


「あのトロールは?」


「名前は[第3クオーター]。契約魔術デ契約しているガ[対等契約]ダから自由に動かせる訳ジゃない。」


「魔術が使えるのかい?魔力はいくつだい坊や。」


「魔力は6ダけド契約魔術で4は固定消費しているから実質2」


「そうかい。じゃ最後だ坊や。死に方を選べるなら、斬殺と絞殺どちらが希望だい?」


「…………。」


「おや?また(だんま)りかい?坊やは痛いのが好きなのかねぇ。」

胸ぐらを掴んで持ち上げる。


「待ちなさい!フィーバー。もう見てられません。彼は全て話ました。彼が自身の神に誓って服従を誓うなら[茶色い雪兎]隊長の命で投降を許可します!」

ついにアロマが切れた。

抜剣しフィーバーに近づく。

フィーバーもブライ君とナイフを投げ捨て大剣を抜く。


「ハイレン、彼を治癒しなさい!」

私は詠唱を始めた。


「そしてフィーバー、貴女は大剣を収めなさい!今なら、上官反抗罪にせず許します。」

ギフトが投げ短剣を構えている。

どちらに投げる気だろう?


2人は、しばらく睨み合う。


「……、わかったよ隊長。ちと調子に乗りすぎたようだよ。すまなかったねぇ」

フィーバーが先に武器を収める。


アロマも武器を収めたが汗が滴り落ちている。

少しだがリーダーを見直した。


ブライ君は服従を誓い投降してくれた。

ブライが最初沈黙したのは貧しい部族を恥じたからです。


現場のベテランパートと雇われ店長の対立。

旗幟を不鮮明(・・・)にして立ち回るの厳しかったなあ~。


私の黒歴史がまた1ページ。

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