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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第12章 兎達の戦い

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トカゲの尾

[高速詠唱]はその後の詠唱と魔術の想起を早め、事実上2つの呪文をほぼ同時に発動させたり出来ます。


「パトリ、マトとガラが殺られた。」

大地母神広場に雪崩れこんできた内務省軍から逃れ、私達クレオ一党は街外れの隠れ家に向かっている。


パトリの取り巻き5人の内2人は先行して隠れ家に向かっているらしい。

そして残り3人は殿(しんがり)を勤めていたが、内2人が死に戻ったのは1人。


先行した2人を除けば、クレオ、ロカ、パトリ、戻って来たジルク、そして私クーアの5名がクレオ党になる。


「内務省の奴ら、これを機会にスラムを一掃するつもりかも知れない。」

仲間を失ったパトリが悔しそうに呟く。


「それは無理さね。3日もすれば元通りさ。だからアタイらは4〜5日は隠れ家で丸薬作りだよ。」

どうやらクレオは手慣れている様だ。




暗闇をパトラが持つ暗いランタンの灯りで進む。

やがて街外れの1角が見えてくる。


「あそこがアタイの第2工房さ。」

そのまま歩いて行こうとするクレオを私は止めた。

何かがおかしい。

ジルクとパトリにハンドサインを送り灯りを絞らせた。


「[なんだよ。それにお前がなんでギルドのハンドサイン使えるんだよ]」

パトリがハンドサインを返してくる。


「[先行した2人に明かりも灯さず待てと命じてましたか?]」

疑問を無視し、確認事項を伝える。


「[俺が見てくる]」

ジルクが忍び足で隠れ家に近づいた。


[照明弾]

突如として辺りが明るくなる。


「居たぞ!生死は問わない!捕らえよ!」

矢を射る音が聞こえ、ジルクが矢で針鼠の様になる。

先行した2人も生きては、ないだろう。


「ま、待ち伏せ?何故だい?」

クレオは動揺している。


「先生を売った裏切り者がいるんだ。そうだろ!魔術師。」

また疑われている。

だが私には不可能な裏切りだ。


[高速詠唱][煙幕][鼠火球](使3残3)

魔術を発動し、私達は来た道を戻る。


「パトリ、第2工房の存在を知っている人物は、どのぐらい居ますか?」

暗に私は存在を知らないと伝える。


「……、俺ら以外にはポピぐらいだ。だが調べようと思えばギルドなら簡単に調べられる。」


「では、このタイミングでクレオを売って得をするのは誰ですか?」

パトリは沈黙する。


「ポピは有り得ないよ、クーア。アタイには、まだ価値があるはずさ。」

クレオも事実は分かっているはず。

ただ認められるかは別になるが……。


「ロカ、[ムゲットメモ]の転写は持ってますか?」


「いえ、ポピ神官のテントに置いてあります。」


「!?いつの間に白本を手に入れたんだい?アタイはまだ……。」


「[英雄]は多少面倒にはなりますが、レシピさえ有れば再現可能です。聖女の薬の正体は公表されました。内務省に存在が知られ、度々密偵が来る様な人物を匿う利点はありますか?」

クレオも沈黙した。


「待てよ魔術師。[英雄]って何だ?」


私の返答前に大声が響く。

「居たぞ!かかれ!」

[疾風][照明弾]

煙幕対策に先手を打たれた。


「クソ!ここは二手に別れよう。魔術師、ロカを頼んだ。先生はこっちだ。10日後ソート村で。」


[高速詠唱][闇夜][鼠雷球](使3残0)

照明弾に対抗し、また触れたら感電する魔術を放ち、私はロカと暗闇を走った。


「ロカ、ソート村の位置はわかりますか?」

ロカは頷く。

「しかし、クーアさん。どうやって聖都から出ますか?貴女は指名手配されていると聞いてます。」


「そこは何とかします。とりあえず朝になって門が開かないと話になりません。食料も必要ですから、冒険者の店に行きますよ。」


「大丈夫なのですか?」


「堂々としていれば大丈夫です。」

一晩ぐらいなら、冒険者の店に居られるはず。

犯罪者照会の為に、冒険者の店ギルドに話を通すのは面倒な手続きが必要になるのだから。




冒険者の店、[勇者の旅立ち亭]は初代勇者が立ち寄ったという老舗だが、本当かどうかは怪しい。

店に入り女2人分の宿を求めると女性パーティと相部屋なら、朝食込みで銅貨10枚と無愛想に言われた。


了承し、カウンターに2人して座るとホットエールを頼む。


「今日の[お触れ]が出てから、どいつもこいつもホットで頼みやがる。手間賃分値上げしたいね。」

苦い顔で主人がエールを出す。


「明日、明後日には皆、そうするでしょうね。冒険者辞めて、薪売りでもしたほうが儲かるかしら?」


「山を管理する農民達に殴り殺されたくなきゃ止めときな。」

私は肩を竦めてみせる。


「外は何の捕物?魔族でも出たの?」


「毒消し草を買い占めたバカがいるそうだ。盗賊ギルドの資金みたいだから、切られた尻尾が逃げてるんだろうよ。」


盗賊ギルドが見放したとなると逃げ切れる確率は極端に低くなる。

私は、もう一度肩を竦めてホットエールに口をつけた。

ロカだけでも、逃さなくては……。

買い占め、闇の金、様々な利権、特権、そして裏切り。

聖都に渦巻く汚泥がクーアを呑み込まんと口を開ける。

次回[英雄]

クーアは生き延びる事が出来るのか!



昔のアニメの次回予告風、後書きしてみたかったんだよぅ〜。


私の黒歴史がまた1ページ。

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