表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第12章 兎達の戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

189/385

素人

「人間の敵は所詮人間だよ。」

(某機関の司令の台詞)

明後日にはニキアの街に入るという日の夜、私とチシナは夜衛に立っていた。


冒険者の中には魔術師と司祭は夜衛させないパーティーもあると言う。

戦士より貴重な存在で、魔力、神力はしっかりとした睡眠により回復するからだが、[茶色い雪兎]ではリーダーのアロマが、ぐっすりとお休みになっている。


右の茂みで何か音がした。

そちらに一歩近づくと、矢が私のいた所を掠めてテントに突き刺さる。

腹に矢を受けたチシナは天に向けて右手を差し向けた。


[照明弾](使1残5)

天に浮かんだ照明がユラユラと落ちてきながら辺りを照らす。


「敵襲!」

叫ぶ。

二の矢が飛来するが、動く私とは、あさっての方向に飛んでゆく。

動かないチシナには二の矢も命中している。

倒れ込みながら、チシナは射手がいると思われる茂みに手を差し伸べた。

[火球](使1残4)

茂みが燃え上がり、火だるまになった射手が2人悲鳴を上げながら転がり出てきた。


「貴族の娘さえ生け捕れれば良い!後は殺そうが、犯そうが好きにしろ!」

照明弾に照らされた奥の複数の茂みから8人ほどの男達が飛び出してくる。


「ギフト、その素人を蹴飛ばして起こしな!敵襲だよ!」

こちらもテントからフィーバーとギフトが飛び出してくる。


見れば男達は昨日泊まった村で見た冒険者達だ。

2組合同で我々を襲う事にしたらしい。

貴族は多少、傷物になっても身代金が取れるだろうし、交渉決裂しても女なら金に変える方法はある。


事実上の護衛役の私達も女だから、捕まれば奴らに背徳的娯楽と金銭を提供する糧に成り下るだろう。

つまり、奴らは殺さなくてはならない相手と言う事だ。


今頃ようやくテントからアロマが下着姿に剣を携え出てきた。


「アロマ!チシナは戦闘不能、周りの野郎共は皆敵だ!」

フィーバーが早くも1人を叩き斬りながら叫ぶ。

戦いは乱戦になった。


私には片手剣を持った2人が襲いかかってきた。

見るからに素人レベルなので、私の初見殺しは使えない。

ただ頭上で回すモーニングスターの風斬り音が2人への牽制になる。


「至高神の神罰を恐れぬなら、かかって来なさい。」

私の叫びに、さらに2人が及び腰になった所で踏み込んでモーニングスターを振るう。


先ずは1人、闇に返す事に成功した。

だがその隙にもう一人が斬りかかってくる。

モーニングスターは攻撃力は抜群だが防御には向かない。

だから足捌きで剣を躱しつつ回転してモーニングスターを振り回す。

流石に大振りの一撃は当たらないが間合いを空ける事が出来た。

間合いが空き、1対1なら素人レベルに遅れは取らない。

程なく、もう1人も闇に叩きこんだ。



戦闘は終局を向えつつあった。

ギフトは負傷しつつも1人を倒し、フィーバーも最初の1人に追加してもう2人倒している。

アロマは1人を倒したが、もう1人に後ろから抱き抱えられ、首に短剣を突き付けられていた。


「降伏しな。もうアンタ1人だよ。」

フィーバーが面倒くさそうに勧告する。


「逆だろう!この貴族の女が、どうなっても良いのか?武器を捨てろ!」

男が喚きたてる。


「構わないよ。任務中に戦死なら、仕方ないさね。」

フィーバーが大剣を構えたまま悠々と近づいてゆく。


「な、お願い助けて!」

アロマが真っ青な顔で懇願する。


「[茶色い雪兎]には夜営中、下着で寝る様な素人は、いらないんだよ。」

ギフトも私も同感なので、フィーバーを止めない。


「わ、分かった降伏する。」

男が武器を捨てて両手を上げた。

アロマが慌てて男から逃れる。

フィーバーは露骨に舌打ちして、男に大剣を振り下ろした。



「どうだい?助かりそうかい?」

ギフトを癒やした後(使1残3)チシナの様子を見ているが、もう虫の息だ。

刺さった2本の矢を短刀で取り除いたが私の聖力では治癒魔法をかけても夜明けまで持たないだろう。


ギフトがチシナの横で話かけている。

「矢尻を取り除いたぞ、もう大丈夫だ。すぐに良くなる。」

ギフトが私に目で訴えてくる。

無駄だと判ってても治癒をかけてやってくれと。


私は首を横に振る。

任務中に無駄な聖力は使えない。

可能性は低いが次の襲撃があるかもしれないからだ。


「サ、サムイ……ワ、ワタシハ……ニン……ゲ…………」

チシナが、そこまで話すと沈黙した。

するとチシナの肉体が溶けて、脳だけが湿った音を立てて地面に落ちる。

他の部分は白い液体になり乾いた地面に染み込んでゆく。


何が起きたのか?

ギフトは呆然とし、アロマは近くの茂みまで走り嘔吐を始めた。


「前に魔術師に聞いた事があるよ。魔族のクソったれが作ったドッペルゲンガーっていう魔獣の事をね。」

フィーバーが聞いた話ではその魔獣に脳を喰わせると、その脳の持ち主と同じ姿、同じ記憶を持った存在になるという。


本来は重要人物に成り代わり、混乱を引き起こすはずの魔獣だったが、記憶を引き継いだ魔獣は本人と錯覚してしまい本人として振る舞う為、開発は失敗した。

と伝わっているそうだ。


「心身共に(いじ)られたっていうのは、脳以外は全部って事だった訳さねぇ。」

フィーバーが、フィーバーだけが冷静に事実に向きあっている。


私は他の死体も含めて祈祷を始めた。

[魔族と人は相容れない]

至高神殿での講義を私は思い出している。

しかし、今回の襲撃者は人間……。

人と人も相容れない。


私は夜明けまで眠る事は出来なかった。

メタ的魔族

「そういえば、魔王戦争の頃からのデポ様配下の生き残りのサキュバスは私1人なはずですが、マンティコア卿に貸出した壺入りサキュバスはどうしたんですか?」

「捕虜になったある魔術師の〜性的尋問時に現れる様になった人格を〜格安で譲渡してもらったので〜……。」

「待って下さい!人格が現れるって、それ尋問じゃないですよね?」

「この小説は15才の以上なら〜でも、色々あるので〜それでも良ければ具体的に〜」

「わあワア、それ以上結構です。」


私の黒歴史がまた1ページ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ