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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第12章 兎達の戦い

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配属

ハイレン視線です。

私達は、また軍務司祭に呼び出され3人で突っ立っていた。

軍務司祭を待っている間、内心はともかく見た目は直立不動にしている。

今度の任務はなんだろう?

補充の人員は来ないのか?

様々な疑問が浮かんでは消える。


そうしていると、軍務司祭が2人の少女を連れて入ってきた。

最悪だ。

クーア隊長とローエルフの変わりにしては貧弱すぎる。

黒目ソバカスのギフトも含めて少女3人、厳しい任務になりそうだ。


「兎ども、新しい隊員と隊長を紹介する。」

クーア隊長の事は説明がない。

知っているので改めて訊く様な野暮もしないが、私達は、つくづく使い捨ての消耗品だと実感させられる。

これが曲がりなりにも正義の至高神を司る聖王国とは……。

従軍司祭は冒険者になるよりはマシだが厄介な仕事だ。



「まず、こいつはチシナ、魔術師だ。魔力は6。」

暗い色の髪に暗い目をした少女を軍務司祭は紹介する。

紹介された少女は敬礼はしたが1言も発しない。

規律が比較的自由な第2傭兵隊とはいえ、誰も礼儀を教えてないのだろうか?


「次に貴様らの新しい隊長、聖騎士見習いのアロマ・アギオ・イエレアス。」

こちらは対象的に金髪の長い髪を後に丁寧に結んだピカピカの貴族の少女。


「この度[茶色い雪兎]に着任しました。アロマ・アギオ・イエレアスです。アロマと、お呼び下さい。」

何か勘違いしているか、失脚したお偉いさんの身内あたりだろう。


「アロマを隊長とし任務にあたる様に。」

やれやれ。

実戦経験のなさそうな、若い貴族様に第2傭兵隊の特務班の隊長が務まる様には思えない。

となりではフィーバーが溜息を密かにつくという器用な技を見せている。


「早速だが任務の説明をする。貴様ら[茶色い雪兎]には……」

軍務司祭から、私達に命じられたのは、ハルピア北西にあるレパタ王国跡へ行きバジリスクサボテンを採取し持ち帰る事だった。

通常はリザードマンの商人から蜂蜜漬けにしたバジリスクサボテンを購入するのだが、石化病の治療薬の材料として、蜜壺1つ金貨1枚が今は7枚にまで跳ねあがっている。

任務に必要な魔導具を魔術師ギルドに借りてでも、自前で栽培出来る様にするつもりだろう。



任務の説明を聞き終えた私達は[魅惑の伯爵夫人]へと向かう。

フィーバーがハルピアに着任したばかりの新隊長に旨い料理を食べさせたいと主張したからだ。

私がペティ君の素晴らしさを主張したわけではない。

リザードマンやダークエルフとすれ違う度に緊張した顔をする隊長へ、フィーバーからの、ちょっとした嫌がらせだがハルピアを知ってもらうには一番の店なはずだ。

もう一人の新米は一言も発せずについて来ている。


店に入るとアロマ隊長が腰の片手剣をいきなり抜こうとした。

フィーバーが、ここぞとばかり隊長の腕を捻り上げる。

「貴様、何をする!」


「何をするって?ここはハルピアで1番飯が旨い飯屋なんだ。注文をするに決まっているじゃないか。」

フィーバーは手早くエールとツマミを頼み隊長の手を離す。

「隊長、飯屋で剣を抜くのは、ご法度ですよ。」

ギフトも悪い顔をしている。


「違います〜ここは食事も出してますが〜冒険者の店ですよ〜」

この店のオーナーにして、ハルピアの領主、魔族のデポトワールが、にこやかに笑いながら訂正した。


「でも〜剣を抜くのは〜ご遠慮ください〜」

ふんわり、新隊長を注意してテーブルに案内してくれたが、隊長は憮然とし、新米は顔を青ざめ冷や汗をかいている。


「チシナ?どうしたの?汗が酷いよ。」

悪ふざけが過ぎたかと、ギフトが新米を心配して声をかけたが返事がない。


「チシナは以前任務中に魔族に囚われて心身共に弄られています。肉体は回復しましたが、今でも言葉を失ったままと報告書にありました。」

隊長がギフトに伝える。


「隊長?この魔術師喋れないって言ったか?」

フィーバーが聞き咎め呆れる。


「魔術師が詠唱できなきゃ、どうするんだよ。」

中魔法なら詠唱は要らないが使い手は限られる。

魔術師を配属したと言う書類上の数合わせで配属された可能性が高い。


エールの入った木製のジョッキ5つに持ってレイカルさんがテーブルまで来た。

すると、突然チシナが[魔族殺し]を小袋から取り出した……。

メンテナンス前にスベリ込み。


どの世界でも現場見ない軍上層部は[書類上は問題なし]なら大丈夫。

例)装備の足りない露兵は自腹したりするが、書類上は十分な装備が配布されている。


私の黒歴史がまた1ページ

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