岩
前も書きましたが、妖魔の共通言語はエルフ語です。
ダークエルフ訛があります。
我々[茶色い雪兎]がノウル伯領で英気を養い出発して、数日が経つ。
新米冒険者が2組が勝手に同行していた。
どうやら商隊護衛でノウルまで来たが帰りの便の臨時雇用がなく、資金が尽きる前に規模の大きなリキタ伯領まで引き返すらしい。
片方は軽戦士のお登りセットで若い男5人。
もう片方は老戦士にリザードマン刀下げた若い男、下級神官の女、若い女の恐らくシーフ。
最初、若い男共のパーティーが馴れ馴れしく話しかけてきたが、フィーバーが大剣を抜き一喝したら大人しくなった。
性交渉したいなら、街で金を出せば値段なりの妓女が相手にしてくれるだろうに勘違いも甚だしい。
ただ街を離れた無法地帯では力に物を言わせたり、相手の弱みに、つけこむなどは日常茶飯時。
冒険者の敵は妖魔や魔獣だけではない。
夜
我々が街道を離れ夜営の準備をしていると少し離れた所から怒声が上がる。
ギフトに命じて偵察させると、どうやらゴブリンが出た様子だ。
ゴブリンなら、数さえ居なければ新米パーティーでも相手になる。
そう思い放っておいたが、戦いの怒声が止まない。
仕方なしに全員で近づくとゴブリンリーダーの指揮の元でゴブリン10 匹以上が老戦士率いるパーティー、確か[痩蛙]とか言ったはず、と戦っていた。
致命傷ではないが既に全員が負傷している。
「加勢する!」
私が叫ぶと同時にプラティーンの弓が音を立てゴブリンを次々と射抜いた。
フィーバーが大剣を構え、ハイレンはモーニングスターを振り回しながら突貫する。
「かたじけない!」
老戦士とリザードマン刀の若武者も防戦から反撃に転じた。
魔術の出番はなく、ゴブリンリーダーが戦死するとゴブリン達は逃げ始める。
追撃も、そこそこに私は疑問を解決する事にした。
「もう一組のパーティーはどうした?」
私は尋ねる。
「妖魔インプを追いかけ森の奥に進んだ」
と若い女シーフの返答がきた。
マズイかもしれない。
インプは大抵、用心棒を連れている狡猾な妖魔だからだ。
治療を終えた[痩蛙]と[茶色い雪兎]で森の奥に進む。
最初、インプが岩に腰掛けている様に見えた。
岩の前には死体が3つ転がっている。
[透明化]((使1残3)
インプが姿を消しながらダーク訛りのあるエルフ語で叫んだ。
「〘また敵が来たぞ[朝露に舞う小烏]〙」
すると岩が動き突進してくる。
「〘おでを、その名で呼ぶんじゃねぇ〙」
岩に見えていたのは妖魔トロール。
何故かトロールにはキラキラした固有名を持つ個体がいるが、呼ばれる事は嫌う。
パーティーに散開を命じながら、学院で習ったそんな事を思い出していた。
[魔力付与](使4残4)
トロールの様な大型妖魔戦は長期戦になる。
前線で武器で振るう老戦士、若武者、フィーバー、ハイレンを魔術で援護した。
ギフトは私の直掩に、あたっている。
プラティーンは何本か矢をトロールに射掛けたが、岩の様な皮膚に弾かれ攻撃を断念した。
悲鳴が2つ上がった。
透明化していたインプがその毒のある尾で下級神官を襲ったのだ。
透明インプの接近に気がつかないのは直掩のシーフの技量不足。
一瞬現れたインプをプラティーンの矢が射抜き仕留めたが、下級神官も激しく痙攣し倒れる。
シーフの少女は応急手当をしているが……。
「ハイレン!気にするな!」
負傷者の治療より戦いに集中してもらう。
前線の均衡が崩れる方が恐ろしい。
防御の硬いトロールを、このまま削りきるのが最善手。
だが若武者に、その割り切りは出来なかった様だ。
気合い一閃、トロールに上段から斬り込みにゆく。
トロールは長い腕の硬い所で正面から受け止めた。
リザードマン刀が澄んだ音を立て折れ、トロールは受け止めていた腕を素早く繰り出して若武者を殴打する。
嫌な音が響き若武者が崩折れた。
即死だろう。
均衡が破れトロールが攻勢に出てくる。
「プラティーン!魔法。撤退する!」
[火球][煙幕](使2残2)
[火球][煙幕](使2残4)
[鼠火球](使1残1 )
私とプラティーンで攻撃魔法を連打し、煙幕を張り、その隙に前衛が下った。
火球2つ。
普通の妖魔なら、とっくに死んでる魔術量だが少し怯んだ程度でしかない。
威力は皆無だが、最後の地面を回転しながら飛ぶ火球がトロールを惑わせている間に我々は走って逃げた。
[痩蛙]はついて来ていないが、助ける余裕はない。
妖魔を嫌う至高神には悪いが、トロールが後から来る商隊を足止めしてくれる事を密かに願った。
トロールネタ入れて見ましたが、分かる人だけニヤついて下さい
私の黒歴史がまた1ページ。




