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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
11章 聖女の足跡

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新伯爵

辺境伯って先に名乗って後から承認の例もあります。

(開拓民の責任者が伯爵を自称するとかなど)


私達[竜の卵]はパライバ商会の商隊と共にノウルの街に入った。

ロバートさんが、つい先日伯爵になったと聞いて凄くびっくりしたけれど、ノウルの街は前と変わっては見えない。

強いて言うなら翻る旗が新しくなっているぐらいかな。


『もらったのは原価タダの爵位だろう?頑張れと言われたのと、かわりあるまい』

う~ん、まぁそうだけど……。

でもマドウ、高位貴族になりたい人は多いし、承認欲求とか人にはあるんだぞ。


それから、宿で旅装を解いていると、城から使者が来て伯爵(ロバート)様が[竜の卵]を呼んでいるという。

迎えの馬車に乗り、着の身着のまま、お城に向かった。

前の時はマンティコア討伐の、ご褒美だったけど……。


お城に到着すると夕食会を開くので、それまで湯を使ったりして、ゆっくりして欲しいと言われ部屋に案内される事になった。


城の入口広間には黒い鬣のマンティコアの首が誇らしげに飾られている。

マンティコア卿とアダ名されるロバート・ノウル伯爵の居城。

質実剛健な国境の城に私達は入ってゆく。


『すっかりロバートの手柄だな。死んだ墓なき冒険者など、もう誰も覚えてはおるまい。』

[将功成りて万骨枯る]だっけ?

う~ん、マドウの言う通り、でも現実ってそうなんだよね。


そういえば、お城で途中の中庭を通る時に視線を感じて振り返ると、豪華なドレスを着た可愛らしい娘がジット私とアヤメを睨んでいた。

ロバートさんの姪御さんか誰かかな?確かに怪しげな冒険者が城内を闊歩してたらガン見するよね。


『怪しい自覚はあるのだな』

むぅ、冒険者だからね。

それで、ミケさんが言ってた、舐められたらダメなんだよ。


そのあと、湯を使って部屋で寛いでいると、チャシブにドレスが用意されていて連れていかれた。

公の番では大地母神官の私は儀式用の上級神官着、アヤメも下級神官着を着るからドレスは着ない。

チャシブは、そうはいかないんだよ。


「待てよ、ズリぃよ。俺も神官着とかにしてくれよ。」

この分だとデグさんも貸衣装だろうな。

申し訳ないけど、アヤメと想像して笑った。

因みに正魔術師ブレナさんには魔術師としての正装があるからね。



「よう、嬢ちゃん達。急に悪いな」

部屋にロバートさんが訪ねて着た。

う~ん、口髭なんか生やして、前世のちょいワルオヤジって感じかな。

無精髭生やしてたベテラン冒険者は、もう居ない。


「ハルピアやデポの動きが知りたくてな。」

真剣な顔をしているロバートさんと薄っすらと笑うアヤメ。

正直ちょっと怖い。

最近知ったんだけど、アヤメって真剣な時って薄っすら笑うんだ。


「デポさんの仲介で魔王は資金を掻き集め、妖魔族とも不可侵条約を延長し、国に帰りましたよ。」


「やはりそうか……。魔王はその資金で兵を掻き集めて魔王館を発った。まぁ妖魔が表面上中立なのは助かるな。」


「兵力差はどのくらいなんです?」


「それなら、これに書いてある。俺の集めた情報だがな。」


魔王討伐軍

北方騎士団6000

聖神教団兵10000

傭兵団3000

聖神騎士団5000

諸王国軍連合25000

計49000


魔王軍

魔王親衛隊1500

セバス公軍3000

平民弓箭兵6000

リザードマン傭兵3000

ケンタウロス騎兵3000

ゴブリン5000

高機動ゴーレム2

計21502


紙に書いてあった兵力差は2倍強、正面から衝突したら魔王軍に勝ち目はなさそうだ。


『う~ん、確かに戦は数だ冷夏。だが戦場を選び適切に指揮すれば、まだ勝負にはなるぞ。』


そういえば大魔法で吹き飛ばすとかはしないの?

『第一次魔王戦争で人間側が流星召喚で魔王城を湖に変え、魔王が報復で西部の国を3つ、核融合魔法で砂漠にしてから、条約で禁止している。』


『ちなみに魔王館は湖の畔に建っていて風光明媚だぞ。』


う~ん、前に私、山賊砦吹き飛ばしたけど……。


『禁止条約は国家間の紛争に関してだから、建前では相手が山賊なら問題ない。でも実際は、そうだな冷夏の前世で戦術核使うぐらいの大事件だな。』

そうなんだ!

だからヒューヒュとか騒いでたのか。

何か納得した。


「討伐軍の指揮は誰が?」

私がマドウと交信している間にアヤメとロバートさんの会話は進んでいる。


「一応は聖神騎士団長だ。」


「聖神騎士団長?確か……」


「ああ、大司教の愛人の少女。戦に関してはズブの素人だな。実質の指揮は北方騎士団長あたりだろう。」


「魔王はどうだ、ガキだと聞いたが……。」


「まぁ、同じく普通の少女でしたよ。指揮は守り役の魔族でしょうか。」


「違うと思うよ。アヤメ」

私は直感的に違うと感じて口を挟んだ。

何故だかは分からない。


「レイナには冠の力があるよ。直接指揮を取り、魔王レイナが勝つと思う。」

う~ん、マドウ。

やっぱり混ざってきてない?



「そういえばロバートさん。中庭にいた娘は姪御さん?」

私が尋ねると、ロバートさんは困った顔をする。


「それは多分、俺の嫁だな。国王の娘、第12王女を降嫁で、もらったんだよ。伯爵になったのも家格を満たす意味が大きい。」

むぅ!

「でも、あの娘、流石に未成年じゃないの」


「今年で13になるそうだ。後2年はお預けだな。」

ロバートさんは苦笑いする。


「それで中庭で睨まれたんですね。」

アヤメが真面目な口調で返す。


「ん、それって乙女心だよね?」

年の差あっても、政略絡んでも、恋する気持ちなら応援するよ。


「いや、ロバートさんに前科があると見ました。落とし胤騒動は家を傾けますよ。」

アヤメが指摘する。

何か話が生々しくなってきた。


「問題ない、相手にしたのはハーフ……」

微妙な事を言いかけ、ロバートさんが口を、つぐんだ。


もう!男の人って全く(怒)

2023初投稿です。

今年もよろしくお願いいたします。


私の黒歴史がまた1ページ。

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