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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
11章 聖女の足跡

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流行り唄

希少種のハイエルフと珍しいノーマルエルフ

プラティーンはノーマルエルフですが……。

「リーダー。銀200枚受領出来ました。」

ハイレンが報告してきた。

パーティー単独行だと、リキタ領まで銀50はかかる。

向こうで経費受領できなければ戻るのにもう50。

滞在費、工作費、なかなか厳しい。


「隊長、鯨干し肉も混ぜて購入。ただし偏食の餓鬼(ギフト)には豚のみ配布予定。」

と、フィーバーの報告。

移動中は堅く焼いたパンと干し肉か芋と干し肉、たまにスープに乾燥ハーブや根菜が入る。

食べられる野草を摘む時間は今回は少なそうだから食は重要だ。


「[竜の卵]はパライバ商会の商隊と3日後に出発予定だよ。ノウル辺境伯領までの街道に不審情報ないね。」

と、ギフト。

1つ疑問が生じた。


「ノウル家は辺境騎士だろう?」


「つい先日伯爵位を叙勲され辺境伯になってるよ。」

そういえば、ジナリー王国は魔王討伐軍に出兵しているはず。

国境の守りには飴を与えても不思議ではない。


「書庫の緊急事態省扱いの文書に[リキタ大地母神殿の書籍目録]があった。その中に著者不明で[薬学日誌]があったよ。」

と、プラティーン。


「それが先に、わかってさえいれば……この酒飲み無能エルフ……。」

ハイレンが細目でプラティーンを睨む。

このパーティーの中でエルフのプラティーンだけは、緊急事態省からの出向者だ。


緊急事態省。

名前は立派だが王国内では閑職系組織とされている。

ただその実情は王国の諜報機関であり、私がそれを知っているのは偶然の産物による。


プラティーンは機密情報に触れられる貴重な人材のはずだが、パーティー内では酒で身を持ち崩したダメエルフ扱いだし、王国内ではローエルフと揶揄されていた。


「私は港についた聖王国からの船に本国の状況聞いてきた。王都でも石化病が見られる様になり、地方の村では村人の半数以上が石になった所もあるらしい。」

パーティーは無言になった。

状況は悪化しつつある。


聖王国派の諸国は魔王討伐軍に参加してないし、中立諸国も静観しているが、このまま聖神派諸国だけが武名を上げたら情勢は変わる。

その時盟主たる聖王国が疫病で身動取れなければ、どうなるか……。


歩き巫女ムゲットの秘密を得られるかどうか?

王国の命運がかかっている。



20日後

ハルピアを出た我々はノウル伯爵領に無事到着。

久しぶりに宿に泊まり旅の疲れを癒やす。

途中の妖魔の村は宿泊回避し、通過した。

至高神司祭ハイレンの安全に懸念があったからだ。


「今日ぐらいエールを頼んでも良いだろう隊長。」


「エルフが、もう頼んじまってるよ。」


弓と同じで張り詰めすぎると切れてしまう。

出発を明後日にすると宣言し、温かく新鮮な食事と少量の酒を堪能している。


「やぁ、お姉さんがた一曲どうだい。」

若い優男が話かけてくる。

「ここで一曲なら銀貨1枚で3曲、部屋で一曲なら銀貨3枚で何曲でも歌うよ。」


こいつは吟遊詩人兼男娼。

ここで歌わせるのは口上通りだが、部屋でというのは、朝まで何回でも相手するという隠語だ。

女ばかりのパーティーだと見て営業に来たのだろう。


「失せな!優男」

フィーバーが追い払おうとするが、エルフが止める。


「流行り唄2曲と至高神を称える唄を1曲歌って、後エールおかわり。」


「至高神を称える歌からなら……」

ハイレンがいい添えて銀貨を支払う。


歌が始まって、他に居た数組の冒険者も静かになる。

最初の[聖歌]は及第点、次の[勇者の歌]は聖女との愛憎の部分が良かった。

ちなみに[勇者の歌]は同じ旋律で王女との愛憎パターンと王女の侍女との愛憎パターンがある。

そして3曲目は[マンティコア討伐]、新伯爵ロバートが仲間と[黒い鬣]討伐した事を称える歌だ。

宿は大いに盛り上がり拍手で終わった。


エールを奢られ、テーブルに着いた吟遊詩人にエルフが色々質問をする。


「王都から来たんだね。最近のジナリー王都はどう?」


「ジナリー王は兵1500を率いて出陣されました。ランドルト平原で魔王討伐軍と合流されるとか。」


「兵力はどうなの?勝てそう?」


「討伐軍は50000近く兵が集まるそうです。魔王側は直轄領の平民から、ゴブリン使いにゴブリンまで集めさせて20000ちょっと。有力魔族は自領に籠り参戦見送りとの事ですし楽勝でしょう。」

エールを飲み干し、吟遊詩人が言う。

「どうです?もう一曲」


「いや、もう充分だ、ありがとう。」

エール代にと、もう2枚銅貨を握らせると吟遊詩人は去った。


聖王国は遺憾ながら魔王の奮戦を祈る事になりそうだ。

2022最後の投稿です。

今年は色々ありました。

この物語を綴り始めた事も、その一つです。

来年は良い年でありますように……。


私の黒歴史がまた1ページ。



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