追求
権利に差はなくとも、生物としての差はあるのでは?
とも言えない昨今です。
「ブレナ、昨日一緒に飲んでた、あの女達は何だよ。」
謎の宴の翌朝、朝食時にブレナさんがチャシブさんに詰められていた。
「俺らが大変な時に、女5人も侍らせてよ。」
「あれは今回の依頼の関係者で……」
ブレナさんは何か弁明しているが、こういう時に論理的反論をしても意味がない。
ロバートさんがそう言っていた。
「そうだよ。大変だったんだよ。それなのにブレナもデグも席に上がって来なくてさ。」
レイカ様が援軍に出て、こちらにも火の粉が降ってきた。
「お腹空いてると怒りっぽくなるので〜こちらをどうぞ〜」
デポ姐さんが助け舟を出してくれた。
竜の島の炊いた米を丸めて中に具を入れた料理だそうだ。
「わぁ、おにぎりだ!」
レイカ様が大喜びをしている。
チャシブさんとアヤメ殿も、久しぶりだと手を伸ばしていたので、追及は沙汰止みになりそうだ。
「タンポポの竜人料理は合格点もらえてますね〜」
デポ姐さんは安心した様に笑った。
朝食後、
「で、あの女達は何なんだよブレナ。」
再びチャシブさんの追求が始まった。
「だから、チャシブ。やましい関係では……」
「んな事は、分かってる!俺はあの冒険者達が何者か聞いてんだよ。」
チャシブさんが声を上げたタイミングで、その5人組の冒険者が店に入ってきた。
「彼女らは聖王国から来た冒険者[茶色い雪兎]、至高神聖王国派とは関係が深いらしいですよ。」
ブレナさんが説明をする。
「レイカに[石化病]の相談がしたいそうです。」
声を潜めて付け加えた。
リーダーらしき魔術師が階段を上がってくる。
「初めまして[竜の卵]の皆さん。私は[茶色い雪兎]の戦闘魔術師クーア、所属は聖王国第2傭兵隊になります。」
「軍人さん?」
レイカ様が問う。
「はい、私は軍の奨学金で魔術を学んだので、返済を終えるまでは軍人です。」
使い古された装備に油断ない眼つき、実戦派の魔術師で間違いないだろう。
「あちらに控えているのは仲間で、重歩兵のフィーバー、偵察兵のギフト、エルフのプラティーン、従軍司祭のハイレンです。」
皆、女性のパーティーで、こちらを見上げている。
エルフ以外は皆、軍関係者の様だが見た目には冒険者にしか見えない。
「貴女達も薬の本探してるんだよね?」
レイカ様の再度の問いをクーアさんは肯定する。
「なら、なんで神殿は私達にも推薦依頼出したの?」
「部門の違いからです。依頼を出したのは典礼省、我々は軍務省の所属です。」
クーアさんは直立不動で答える。
「聖王国には内務、外務、財務、軍務、典礼、近衛、緊急事態、の七省があり、それぞれ……。」
「つまりタテ割りなんだね。」
レイカ様が話すとクーアさんは沈黙を保った。
「で、俺達への要件は?」
チャシブさんが促す。
「神殿からの依頼を受けていただき、我らと協力して書籍を探していただきたいのです。」
「我らの調査では、このハルピアで手がかりが切れてしまっています。」
「それに聖女候補のレイカ様の治癒魔法なら、石化病を癒せるのではないかと考えております。」
クーアさんが淀みなく話す。
「う~ん、私に特別な力はないよ。」
「いや、冷夏なら癒せるはず。石化病の治癒には聖句の[ちょっとした変更]と神力8が必要だと聞いた事があります。」
今まで沈黙していたアヤメ殿が間に入る。
「そして探しているのは、歩き巫女ムゲット著の[薬学日誌]あたりですか?」
アヤメ殿の言葉にクーアさんが驚きの表情に変わる。
「魔術転写による写本を見せてもらった事がありますが、確かに石化病に関する記述ありましたね。」
「その本はどこで!」
突然の大声に店が一瞬静まりかえる。
[茶色い雪兎]はエルフを除いて全員武器に手をかけている。
自分は戦斧を手に立ち上がった。
「お客様困ります〜」
デポ姐さんが厨房から出てきて場を宥める。
「金貨15枚、前金入れて30枚貰えそうですね。」
落ち着きはらったアヤメ殿が微笑む傍らで自分は立ちつくしていた。
アメリカなどでは軍が大学への奨学金を出してたりします。
もちろん、何かあれば優先的に招集されますが……。
露、朝、韓、台、中、全ての組と縄張りをめぐる諍いがある、日という組は仁義なき戦いをどうするべきですかね。
米の親分は老いて頼りないし……。
私の黒歴史がまた1ページ。




