豹変
甘い物。
砂糖、超高級品
蜂蜜、高級品
植物性シロップ、高級品
果物、場所や季節によるが安価。保存品は高級品
チャシブが暗い顔をして[魅惑の伯爵夫人]に戻ってきた。
冷夏の方を見て、困惑した顔をしている。
デグは散歩に行くと言って居ない。
たまに散歩にゆくと大抵、白粉の香りをさせて帰ってくるが、散財はしていない様なので自由に任せている。
「冷夏、あのな……いや……」
チャシブは何かを言い澱んでいる。
小部屋を借りて冷夏と一緒に話を聞く事にした。
チャシブは慎重で、また臆病なところがある。
ただ、それが彼女を生き永らえさせてきたのだろう。
チャシブに話を聞いて、びっくりした。
私は溜息をつき、冷夏に尋ねる。
「姉とは、どういう話をしたんです冷夏?」
「う~ん、話というか……。『冷夏様、竜の敵は我らが敵!この紫陽花にお任せあれ。』って言われて、お任せするって答えた……。」
「冷夏、私の姉にそんな答えしたら『全部殺して』と頼んだ様なものです。」
姉の門下が複数人で斬り込みにゆけば暗殺者など簡単に血祭りだろう。
表芸は剣士、裏芸が忍びの猛者達なのだから。
「むぅ、……。」
冷夏の言葉を詰まらせはしたが、問題は解決しない。
姉にどうやって話そうか?
そう考えているとレイカルさんから声がかかる。
「紫陽花さんがお見えですよ〜」
まるで計ったかの様に姉が現れた。
姉は小柄な女性一人を連れていてデポさんと話している。
「デポ殿、蒲公英をよろしく頼みたいのだが……。」
どうやら働き手を一人斡旋中らしい。
近くでは門弟四人が食事をしている。
「蒲公英は接客も出来るが竜人料理も心得ている。有名料理店の[魅惑の伯爵夫人]でも、役に立つと思うぞ。」
竜人の職の斡旋も義兄の商会の業務の一つだ。
「紫陽花さん〜うちは冒険者の店ですよ~」
デポさんは苦笑している。
しばらく話をして、斡旋料金の話を経て、どうやら雇う事にした様だった。
「さて、冷夏様。本日はお手を煩わせました様で申し訳ございません。」
姉が近づいて来て冷夏に謝罪する。
至高神聖神派高司祭を始末した事を示しているのだろう。
「姉上、その件ですが……」
「アヤメ、そなたには関係ない。口を慎め!」
姉は話を聞く気は無いようだ。
「なぁ紫陽花、そう言わずに……」
「黙れ!下郎」
姉はチャシブの問いかけも一蹴しようとした。
「黙らねぇよ!これを見ろ紫陽花!」
チャシブが小袋から金の印台指輪を出す。
「そろそろ手打ちの潮時だ!紫陽花」
チャシブが豹変した。
豹変。
追い詰められたチャシブが見せる真骨頂。
私がミノタウロスに敗れ死にかけた時も見せたと聞いている。
姉が唖然としているのは、あの指輪の力だろう。
どんな意味かは私には分からないが……。
「夕食時にまた来る。」
姉は門弟を連れて出て行った。
数人がその後を追う様に出て行ったが行き先は、それぞれ違いそうだ。
「う~ん、茶渋。頑張った、偉い。」
テーブルに突っ伏したチャシブを冷夏が労う。
「冷夏、喋らないのはズリぃよ。」
「むぅ、ほら、私当事者だから、なんてゆうか、ほら、むぅ……アヤメ!助けて。」
私は三人分の(ちょっと豪勢な)遅い昼食と甘い物をデポさんに頼んだ。
竜影党は敵にすると嫌な相手です。どのくらい嫌かって、新撰組+忍者が敵になってる感じです。
あれ?それって柳生……
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