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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
11章 聖女の足跡

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抗争

古い映画の音楽が聞こえそうです……。


俺が情報を訊く為、カジノを尋ねると入口のチンピラがシンデレラの所まで案内してくれると言う。


「あのガキゃぁ何者です?」


「馬鹿野郎!あれが[竜の卵]のチャシブだ。例の竜人だよ。」


との声が後ろからした。

冷夏が聖女じゃないと主張する気持ちが少し分かる。

俺は大した人物じゃない。

ヤバいのはアヤメと冷夏だ。


「ようこそチャシブ様、こちらからお伺いしようしていたところです。聖神派との抗争の件ですよね?」


なんだそれ?

全く聞いてないが、何が起こってる?

俺が考えが纏まらず黙っていると、シンデレラは無言で先を促されたと勘違いしたのだろう。

続けて話始めた。


「今のところ、竜影党の圧勝です。抗争が始まって以来、聖神派の裏仕事をしていた連中は半分以上斬られてます。」

まじかよ。


「残りの者達は大半がハルピアを離れ、一部地下に潜った連中もおりますが、このままいけば時間の問題かと思われます。」

え?

アヤメの姉貴はなんで至高神殿に喧嘩売ってんだよ。


俺がそれを聞くと、シンデレラは

「そういえば、他の皆様はお出かけでしたね」

と背景を話してくれた。


「最初に過激宗派の仕業に見せかけ、聖女暗殺を仕掛けたのは聖神派でした。」

どうも至高神の連中は大地母神殿の影響力拡大を恐れ冷夏を暗殺しようとしたらしい。


冷夏は笑いながら、[みんなが帰るまで、珍獣扱いされて、大変だったよ]としか言ってなかったが……。


「ですが、聖女は事前に対応準備していた様で暗殺は失敗。虎口を逃れた後の聖女の反撃は苛烈でした。」


「自らは地下に潜り、竜影党に命じて逆に聖神派の後ろ暗い者達を問答無用で殺戮し始めたのです。」

冷夏が殺戮を命じた?

俺には到底信じ難い。

その事を確認すると、シンデレラは困った顔をする。


「それを証明する事は今はもう難しい事になります。聖女と紫陽花の会見を伝えた同志は到着時、既に重傷を負っており、最後に『聖女が……紫陽花……竜の……、討てと』と伝え、事切れてます。」


「ただその後起こった事実を見れば自明かと……」

多分ヤバいのは紫陽花の方だ。

しかし、傍から見れば紫陽花は冷夏に命じられて行動している様に見えるだろう。


「チャシブ様、最初に『お伺いしようとしていた』と申しあげましたが実はこの件なのです。」

なんだろう?俺には嫌な予感しかしない。


「チャシブ様、至高神聖神派の側から様々なルートを通じて聖女様と手打ちにしたいと。端的に言うと泣きが入っております。」

まじかよ。それって……。


「つきましては、[竜の卵]所属の竜人であり、竜影党の幹部待遇でもあるチャシブ様に手打ちの斡旋をお願いしたいとギルドマスターからお話がきております。」


このハルピアのシーフギルドのマスターから!?

ギルドにいくつかある派閥の幹部にさえ俺の様な下っ端シーフは話さえ出来ない。

島での髭面がギルドマスターだったと知った時でさえ実は冷汗かいていた。

ギルドマスターの指令を受けるなど、俺の立場ではありえない。

それに大きな誤解もある。


「待ってくれ!俺は竜影党の幹部待遇なんかじゃねぇよ。」

シーフギルドの下っ端にして、冒険者に過ぎない。


「チャシブ様、我らも何も調べてない訳ではありません。」


「竜影党を妖魔のヒューヒュが極秘裏に訪問したときの宴にチャシブ様の名前があります。竜影党幹部ではないと出れない宴のはずですが……。」


あの鯛の活造りが出た宴か?

主賓のヒューヒュだけが最初、珍しく挙動不審だったので笑いを堪えるのに苦労した覚えがある。


「俺は……」


「成功報酬にはなりますが、報酬は大きな物になるでしょう。よろしくお願いいたします。」


俺は聞きたかった聖王国派の依頼の話など一言も触れられずにギルドを後にした。

仁義なき戦いのテーマかゴッドファーザー愛のテーマか、チャシブは巻き込まれ型ですね(笑)


私の黒歴史がまた1ページ。

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