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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
11章 聖女の足跡

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上位互換

この世界のサキュバスは精神体です。

「レイカさん〜血液を2、3滴ください〜」

アヤメ達に食事を運んだ後、デポさんに頼まれた。


う~ん、なんか嫌な予感しかしないけど……。

魔術ある世界だからね。

呪いとかに使われたら困る。


「突然レイカルが〜居なくなると困るので〜ドッペルゲンガーの素体に〜振りかけます〜」

デポさんの傍らにある小振りな壺で白い塊が蠢いていて気味が悪い。

う~ん、ドッペルゲンガーって名前からして不味いんじゃ……。


『ドッペルゲンガーとは、魔族が開発した本物そっくりに化ける魔獣だ。ただ、技術的問題があり試作が数体造られただけで、実用化されなかったと聞いている』

マドウのウイキ的解説が入る。


「もちろん〜ドッペルゲンガーは造りませんよ~。記憶移植には〜本人の脳を食べさせないと〜いけませんから〜」

デポさんが怖い事をさらっと言う。


「でも〜記憶を移植すると〜自分が本物と思い込んでしまうので〜意味がないんです〜自己とは何かはわかりませんが〜自我と記憶は結びついてますから〜」

自己とは何か?

う~ん、哲学的になってきたぞ。


「自我を保ったまま〜他人の記憶を定着させるのが〜技術的に難しく〜魔術的人工知能入れると〜姿似た他人にしかなりません〜」

それって今回はどうするの?


「レイカルはレイカと他人なので〜」

まぁ、そういう設定だよね。

人工知能って、すぐ出来るんだ。


『高性能人工知能は育成に時間かかるはずだが?技術的ブレイクスルーがあったのか?』

マドウ、とりあえずの給仕出来ればいいんじゃない?


『それは変だろう。突然レイカルが椅子ゴーレム対応では誰でも気づく。』

まぁ椅子ゴーレムはテーブルまで料理を運ぶだけで後はセルフだから……。


前世ではファミレスに似たロボットいたらしいと聞いている。

私はファミレスに行く事なく生涯を終えたけどね。


「人工知能は〜今回は店のサキュバスで代用です〜大丈夫ですよ~身長を少し伸ばし〜ボディーも少しメリハリつけますから〜」

ん?

なんかディスられた気がするぞ?


「レイカは〜ずっと[竜の卵]と一緒だった〜レイカルは私の遠い親戚ですよ~」

少し悩んだが、お世話になってるし血液を提供する事にした。

お店の料理が人気で、最近は人手不足気味だしね。



数日後

「なぁ冷夏、レイカルって大人気(・・・)だよな。」

チャシブが食事をしながら呟く。

う~ん、私が言うのはなんだけど、中の人が変わってから凄く評判が良い……。


「普通に働いているだけですが、仄かに香る色気が堪らないとの噂ですよ。」

ブレナさんが男性の間での噂話を披露した。

でも、チャシブが睨んでる。


「俺は確かに色気なんかねぇよ。」


いつの間にか二人はくっついたらしい。

「あ、あくまで、噂ですよ。噂。」

ブレナさんが、慌ててフォローしている。


中身がサキュバスだからかな?

店にいる男性の大半が目で追ってるのがすごい。

前世のトップアイドルより凄いかもしれない。


「見た目は〜レイカ改ですよ~」

デポさんが小声で[竜の卵]の皆んなに話す。


「冷夏、[誰もが唯一無二だが、世間には上位互換が歩いている]リザードマンの格言にあります。よくある事です。」

むぅ。

アヤメ、慰めたつもりなら、その格言は結構厳しいぞ。

それに上位互換って概念が知られてるリザードマンが凄い。


「たまに流し目してくるよな。ブレナじゃなく、デグにだろうけど……。」


サキュバスさんとデグさんは夢で色々あったんだと思う。

もちろん詳しくは聞けないし、あまり聞きたくもない。


「それでその様子見たリザードマンの吟遊詩人が[騎士や傭兵、弓矢で殺す。魔族のレイカル目で殺す。]っての戯れ歌まで作ったぜ。」

チャシブ、それ元々は昔からある起承転結の歌だよ。


『聖女熱が沈静化して、良かったではないか。新しい珍獣が現れたなら古い珍獣は気にされないだろう。』


う~ん、マドウ。

そうなんだけど、なんだかなぁ~。

魂あるこの世界では自己とは魂の気がしますが、魔獣にされた人間の魂は?とか、アンデッドとは?とか、ゴーレムは魔術羊の夢を見るか?とか、色々ありそうです。

某ゲームの世界は、錬金術士曰く「人間も神も魂は等価で入る(にくたい)で神にも人にもなる」そうです。

様々な、「なろう世界」での世界観比べても楽しそうですね。


私の黒歴史がまた1ページ。

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