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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第10章 卵料理

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蛇の道

妖魔族の公用語はエルフ語です。

ちなみにこの世界で1番使われているのはゴブリン語です。(単に数が多いから……ゴブリン語に文字はありません)


尾行を警戒して絶望を抱えたまま、しばらく街を彷徨う。

宿に帰ると、食堂で[竜の卵]が勢ぞろいで待っていてくれた。


「心配しましたよ。チャシブ」

ブレナの声を聞いただけで泣きたくなる。

ギルドから出て、思ったより時間が過ぎていた。


「部屋で話す。」

俺は部屋に戻ると、みんなの前でシーフギルドでの話を全てぶちまける。


「で、チャシブはどう思ってますか?」

ブレナが優しく尋ねてきた。


「わからねぇよ。」

涙を堪えながら答える。

わかっているのは、支店長を殺しても破滅。

時間切れでも破滅。

逃げ出しても破滅が先送りになるだけ、ということだ。


「明日、支店長に会います。」

沈黙していたアヤメが呟く。


「ブレナはリザードマンと交渉して、次出る商船に乗船出来る様にしてください。チャシブはその護衛。デグは私の護衛で。」

アヤメが指示を出す。


「わかりました。」

「わかった。」

ブレナとデグは頷くが、俺は待ったをかける。


「アヤメの護衛は俺がする。アヤメとデグの二人では駄目だ!」

みんなが意外な顔をする。


「アヤメもデグも死を恐れてない。アヤメはイザとなれば支店長を斬り、そのまま死ぬまで戦うだろ?デグも、そうなれば死ぬまで付き合っちまう。」


「アヤメには死ぬ覚悟がない俺がついて行かないと駄目だ。」

アヤメが笑みを浮かべる。


「私は死にたがりに見えますか?チャシブ」

にこやかに笑いながら話すアヤメ。

でも、目が笑っていない。


「ああ、アヤメは眼を逸らすと腹を切りそうだ。」

間髪入れず返す。


「わかりました。では明日は頼みます。でも斬り込みにゆくわけではないですから……。」

アヤメはクスクスと、今度は本当に笑い始めた。



翌日。

俺とアヤメが支店長に会いにゆくと、警戒心が強いはずの支店長にあっさり面会出来た。


「妖魔達の目的がわかりましたか?それとも鱗の位置でも教えに来ましたか?」

あっさり面会出来た理由はわかった。

丁寧に人払いもされている。

このゲス野郎。


「鱗の位置は教えられません。竜の島に許婚がおりますから……」

アヤメに許婚がいるなんて初耳だ。


「だが妖魔の目的はわかりました。」

アヤメは懐から1枚の巻紙を出す。

見た目に高価そうな紙だ。

支店長は残念さと、疑いとを混ぜた微妙な表情で紙を見る。

アヤメは渡さずに広げてみせた。


何か書いてあるが、俺には読めない。

しかし支店長は驚いた顔をしている。


「この命令書にあるように、荒れ地開墾に伴う肥料不足の改善の為、石化した鶏糞を購入しているようです。」

どうやら巻紙の文字はエルフ語らしい。

よく見ると妖魔の族長代行、あの物騒なダークエルフ、ヒューヒュの直筆の署名入りの書類だ。


「どこで、そんな物を……。シーフギルドの奴らは何をしていたんだ!」

支店長はシーフギルドとの関係を隠そうともしなかった。

だがシーフギルドが、いくら有能でも見つからないだろう。

アヤメがヒューヒュと謀って、書類用意していると俺も知らなかったのだから。


「[蛇の道は蛇]と申します。これで、特別手当証明書と依頼遂行証明書をいただけますね。」

冷徹に話すアヤメは得体のしれない迫力がある。


「もちろん発行しよう。その書類とこの証明書2通があれば、本店で多額の報酬が得られるはずだ。」

定型文に支店長が署名して2通の書類をつくる。

だが、こいつは俺等をハルピアに帰す気はない。

どうすんだよアヤメ……。


「後、これは確認と提案なのですが支店長、まだ時間はよろしいですか?」

まだ時間はあるだろう。

このゲスはアヤメと俺が泣きついて来たところを愉しむつもりだったんだから。

支店長はアゴで先を促す。


「鉱山の反乱で銀の産出量が、予定に届いていないらしいですね」

うっすらと笑いながらヤバい事を言う。

アヤメ、美人の薄ら笑いは怖えよ。


「反乱などない。産出減少は落盤事故によるものだ。」

支店長は不機嫌そうに反乱を否定する。


「理由はともあれ、後数日で計画量に達するのは難しいでしょう?ご用意は6〜7割と見ています。そこで、ご提案なのですが……。」

アヤメが一拍置いて話した。


「書類上10割にして、ハルピアに届くのを6割にしませんか?」

え?俺には意味が分からない。

だが、支店長の顔は再び驚きの顔になる。


「我々[竜の卵]は同胞(リザードマン)の船で先んじて島を離れます。大丈夫、妖魔の軍船がウヨウヨしてるのです。分かりはしませんよ。」


「貴方は理由をつけて、三号船の出発だけを1日だけ遅らせる。貴方がするのは、それだけです。」


やっと俺にも分かった。

アヤメは三号を海賊に襲わせ送った銀が無くなった事にしないかと提案しているんだ。


「……報酬は?それに本当に可能なのか?」

支店長が緊張からか、青ざめた顔に顔色変えながら尋ねてくる。


「ハルピアヘ送る予定の一割の量の銀でも、充分大金になりますし、個人的に剣は少しは使えるつもりですが……。」

隣にいる、こいつは本当にアヤメか?

ヤバいヤツに憑依されたりしてないか?


「…………わかった三号船だけ、出港を1日遅らせよう。」

支店長は逡巡の後アヤメの提案に乗った。


「本店に支店長には色々便宜を、はかっていただいて助かったと報告いたします。」

俺達は二通の書類を受け取った後、支店長の部屋を辞した。

アンデッド実在する世界でだと、「憑依されてやったんだ」という犯罪者が存在しそうですね。

まぁ、この世界は人権などないので、たとえそうでも実行犯が断罪されますけど。

え?

現実世界でも人権などないですって?

う~ん……


私の黒歴史がまた1ページ。

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