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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第10章 卵料理

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酒宴

新鮮な大根の酵素で血糊が落とせたりしますが……。

「アヤメ、なにやらかしたんだよ」

衛兵詰め所の外に迎えに来てくれた3人で真っ先に口を開いたのは茶渋だった。

衛兵達から宿に連絡が行ったらしい。


リザードマン達と一緒に色々訊かれたが、パライバ商会の本店に雇われている冒険者とわかると対応が丁寧になった。

この島の真の支配者が誰かわかる対応だ。


「アヤメ、船員に絡まれタ」

「絡んだ船員三人を斬り伏せタ」

一緒に開放されたリザードマンが説明してくれる。


赤っぽい鱗がサヴラ、青っぽい鱗がシイ、二人共傭兵をしているそうだ。

ちなみに槍を持ちさらに、リザードマン刀の大小を下げている。


「どういうことだよ。ケガとか大丈夫かよ。」

そういえば返り血に染まった下級神官着がそのままだった。

市場で大根は手に入るだろうか?


「大丈夫、アヤメは達人でス。」

詳しい話は宿に戻ってからすることにした。

まずは二人に迷惑かけたお詫びと、証言のお礼をしなくてはならない。



[灰引屋]に戻り、宿の食堂で食事を取りながら話をする。

リザードマンの二人には好きに食べて飲んで欲しいと伝えた。

二人が気まずくない様に私達も飲み食いする。

もちろん、私は抑えて飲む。

昼間の事があるので気は抜けない。


「アヤメは良い剣士ダ」

「我々は竜牙流だが、竜影流カ?」

酒が入り、リザードマン二人は饒舌に話す。


「衛兵達が取締を厳しくしていル。浮浪者狩りもするみたいダ」

「鉱山の労働者の入荷が少ないせいダ。生き残りの二人は鉱山送りだろウ」

浮浪者狩りと聞いて茶渋の顔が一瞬曇った。


二人は傭兵として商船に乗り込んでいるとの事だが、この海域では最近妖魔軍の軍船が複数見受けられているという。


「近日中に人間族と魔族は戦争になル。傭兵は喰うに困らなイ。」

酔ったサヴラが話す。

シイは酒に弱かったのか、すでに舟を漕いでいる。


「今の魔族にに人間諸国に攻め込む国力はないし、今上の魔王に戦争を遂行する指導力はないと見ますが?」

ブレナも結構飲んでいるが、冷静に指摘する。

飲むと議論したくなるタイプかも知れない。


「だからダ。今回は人間達が魔族領に侵攻するだろウ。北方騎士団の動きが怪しイ。」


「それなら尚更です。人間諸国に魔族領に侵攻出来る国力はありません。指揮もバラバラでしょうし、話になりませんよ。」


「お前は頭よイ。だから分からなイ。大抵の人間は欲に駆らレ、合理的判断出来なイ」

欲で判断を誤る。

竜人である私にも、耳の痛い話だ。


「そして互いに争い、傭兵の我らは旨い酒が飲めル」

ブレナは苦笑いし、サヴラと乾杯をした。



昨夜は少し飲み過ぎたというブレナに茶渋が水を渡している。

リザードマンの二人は昨夜遅く宿に帰っていった。


「どうするよ?アヤメ」

もう少し休むと言って部屋に戻るブレナを見送りながら茶渋が言う。

デグは走り込みに出ている。

念のため武器を持つ様に伝えたら、ジグの形見の片手剣を持って行った。


「六日後船が出るまでは、どうにもなりません。もちろん、調査は必要ですけど……」

そう答えつつ茶渋に目配せする。

今朝からついている監視をどうするか訊かれたのは分かっている。


背後は官憲か、支店長か、三号船絡みか?

どちらにしろ、このままでは厄介事の臭いしかしない。


「私も少し歩いてきます。」

茶渋に告げて宿を出た。

監視は……私についてくる。

しばらく市場を歩くが、何も仕掛けてはこない。

歩き方が官憲ではない。

船乗りでもない。

監視主は支店長か……、つくづく嫌味な奴らしい。


私は港で時間を充分潰してから宿へ戻った。

サヴラやシイの乗る商船などは大変興味深かった。


さて、茶渋が戻るまで詰将棋でもしよう。

茶渋を自由にする為の囮の役割は果たしたのだから。

この辺りやハルピアではリザードマンに違和感を感じませんが、通常の人間諸国ではリザードマンは妖魔だと言われて、いきなり斬りかられたりします。

竜人もリザードマンも、お互いを遠い親戚ぐらいに感じてます。


私の黒歴史がまた1ページ。

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