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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第10章 卵料理

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ひ、酷い話

シンボルは木製です。

このハルピアの名目上の領主。

通称デポさんと話をしてから、ここ数日、聖女(レイカ)様は暇さえあれば、変な筒をいじっています。

また火気を遠ざけ、黒い粉を計ったり、鉛の球を磨いたり。

かと思えば縄に[点火]の魔術で火をつける練習をしたりもします。

聖女(レイカ)様には申し訳ありませんが、変な趣味だと思っています。


「リリさん。作業中に汚すと困るから神官見習いか下級神官の服を用意してもらえる?」


そう言われ用意した下級神官の服を部屋着にし髪を雑に結んで、今も油紙に粉と球を包む作業をされてます。

下級神官服までは洗濯がしやすいのです。


わたくしは大地母神のシンボルに祈り語りかけます。

「私を(この変な状況から)お救いください。」


一歩廊下に出れば4人もの神官戦士が控えているし、昼寝も出来ません。

せっかく上級神官になっても、やっている事は神官見習いと変らないのです。


「もう窓開けても良いよ。」

聖女(レイカ)様に言われ窓を開けます。

粉が飛ばない様に閉めていたのです。

ここは上級神官専用寮の2階。

向かいの神官寮の屋根では瓦の保守点検を2人の職人がしています。


「ごめんね。リリさん。そっちに転がった弾を拾って。」

足元に鉛の球が1つ転がってきました。

私がそれを拾うため屈むと……。

眼の前にあった大地母神のシンボルが砕け散りました。


え!

壁に弩の矢が突き立ってます。


[点火](使1残29)

聖女(レイカ)様は指を鳴らして縄に火を付けました。

無詠唱の中魔法、聖女(レイカ)様はやはり只者ではありません。


狭い部屋に轟音が響きます。

向かいの屋根から驚いたのか職人が1人転げ落ちました。

もう1人の職人は弩を構えています。


「おっと……」

聖女(レイカ)様は窓から身を翻し筒を慌ただしく操作します。

飛来した矢が、わたくしの頭の横を掠めます。

何故でしょう?

わたくしを狙っている?

確かに、わたくしはアルベロ家の一員ですが……


「上級神官服を狙ってるんだよ。気をつけて。」

ひ、酷い話です。


また轟音、耳鳴りがします。

職人、いえ暗殺者が屋根から落ちました。

やはり聖女(レイカ)様ともなるとこんな事は日常的なのでしょうか?

わたくしは殺されなくても、死にそうです。


「お部屋から凄い音がしましたが、どうされましたか聖女様。」

下級神官が部屋に入ってきます。

聖女(レイカ)様は黙って筒を下級神官に向けます。

え!

短剣を抜こうとした下級神官に向けて轟音。


「神官戦士が誰も来ないのは変だよ。」


「クッ」

倒れている下級神官が何か小石を出しました。


「[魔族殺し]?ウソでしょ」

聖女(レイカ)様が荷物を掴み窓から身投げしました。

わたくしも後を追います。


飛び出した後に、大爆発!!

窓の下の植え込みはこの為にあるのでしょうか?

気が遠くなってゆきます……。



眼をさますと、知らない天井が見えました。

聞いた話では神官戦士4名が毒殺され、対して暗殺者側は2名射殺、1名爆死。

そして、聖女(レイカ)様は行方不明とのことです。


わたくしは何故か医療担当の通常神官に降格になりました……。

冷夏が(身を守る為に)次々と敵を殺してますが、銃の恐ろしさは、ここにあります。

刀や槍と違い、引き金を引く事と人が死ぬことが結びつきづらいのです。

生死の狭間でアドレナリン全開してますし……。


私の黒歴史がまた1ページ。

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