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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第10章 卵料理

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勝負時

心理学的に、嫌いでなければ、物理的近い人物が……


ムッカ島を出てから三日、俺らの二号船がラチア島に到着すると、港では歓声で迎えられた。

これは困難を乗り越えた事を称えるよりも、積み荷の食料が無事届いた事によると思う。


一号船、三号船は既に到着しており、港には、その二隻の他に竜の島からのリザードマン商人の船が停泊していた。


ただ話を聞くと三号船もついたのは一昨日で、ハーピー岩島沖では積み荷の半分をハーピーの為に投棄したらしい。

そう、積み荷の人間を半分……。


「湯屋に行ってくる。」

デグが一人、パライバ商会にあてがわれた宿、[灰引屋]を出てゆく。

この宿にも金さえ払えば、湯に入れるサービスはある。

デグが行くのは女性が背を流してくれる(勿論それだけなはずがない)湯屋だ。


「レイカが居ないと、途端にかよ。」

俺はデグに聞こえる呟くが、完全に無視された。


「チャシブ、私達は宿の湯殿に行きますよ。」

一人頭、銅貨2枚を払いアヤメとブレナと共に別棟に向かった。

無論、混浴ではない。



「アヤメは肩だけなんだな。」

汗と脂と潮の汚れを落としながら話す。

髪に、こびりついた汚れは中々落ちない。


「そう、だから[竜硬化]は事実上使えません。」

そういえば、アヤメが竜力を使ったのを見たことがない。


「それに剣術の師範から『お前は竜力は極力使うな』と教えられてきました。」

え?

たとえ少なくとも、竜人なら竜力を使えば有利に戦える。

命のやり取りするのだから、使える力は使うべきだろう。


「少ない竜力に頼るぐらいなら、剣の技を積み重ね磨けって、でもミノタウロスには届かなかった。」

溜息を吐いたあと、アヤメはキッパリ宣言した。


「もし冷夏が無事でなかったら、私は腹を切ります。」


「待てよ。アヤメ、レイカは無事だよ。絶対だ!」

もし、レイカを失い、アヤメまで失ったら……。

俺は動揺した、湯に近いのに体が震える。


「では、茶渋はデグを信じてるのですね?」

う、それは……。


「信じてるなら、厳しい態度は改めるべきではありませんか?」

湯で体を流しながらアヤメが話す。


「うん、ああ、善処する。」

俺は汚れを落とし終え、湯船に向かった。



「流石下級神官です。チャシブ、アヤメさんにうまく丸め込まれましたね。」

湯上がり、ブレナの部屋を訪ね、アヤメと話した経緯を話すとそう言われた。

ブレナの入った男湯もリザードマンが3人いただけで、ゆっくり入れたそうだ。


「でも、まぁ、わだかまりはない方が良いですよ。[竜の卵]の仲間なんですから。」

隣にいるブレナから脂っぽい匂いが抜けている


「でもよ。冷夏の為に死ねって……」

俺の育ったスラムでは[俺の為にお前は死ね]は常識だった。

だから、俺はスラムを出て冒険者になったのに……。

スラムの常識に追いかけられてる様だ。


「それはデグさんの誠意ですよ。黙っていれば分からない事だったのですから。」

ブレナは優しい。

冒険者としては駄目な資質かもしれないが俺は気にいっている。


「それに冷夏が居ないからって湯屋に行くのはどうよ」

俺は、この時点では完全に失念していた。


「それは個人差はありますが、男と女で衝動が異なりますから……」

ブレナが早口で話す。


「じゃあブレナはどう……」

そこで気付いた。

この部屋はデグとブレナの部屋だが、デグは居ない。

居るのは湯上がりで薄着の俺とブレナだけ。


「勿論、衝動はあります。でも無理強いや、金銭で解決はしたくありません。」

すぐ隣にブレナがいる。

いやに近い。


「でも、まぁ、互いに誠意と情熱が合うなら……」

どうする?どうするよ?茶渋。

自問自答する。


「チャシブ、その……鱗の位置を……いや、その」

ブレナの顔が紅いのは湯上がりだからではないと思う。

俺の顔も今そうなっているだろう。


「背中だって、知っているだろ……。でも……まぁブレナが改めて確認したいなら……俺も……」


部屋に戻らない事でアヤメには、わかってしまうのが気まずい。

ブレナの部屋に行くと言ってきたからだ。

でも、乙女には勝負しなくてはならない時があるんだ。

この世界は人間は15で成人します。

竜人も成人年齢は準じます。

教育に悪くないよ~(笑)


私の黒歴史がまた1ページ。



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