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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第10章 卵料理

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嘘をつくな!

「[竜の卵]がまだだ、1番、2番は出せ!3番はギリギリまで待て。」


浜辺に戻ると小舟3艘のうちの2艘は既に浜を離れ、最後の1艘だけが私達を待っていた。

意識のないアヤメさんを乗せ、私とデグさんはギリギリまでチャシブとレイカさんを待つ。


森が騒がしくなってきた。

船員達が目で訴えかけてくる。


「出してくれ。」

デグさんが船員に告げる。


「まって下さい!チャシブとレイカが……!」

デグさんの決断を理性では理解していても感情が追いつかない。


「出してくれ、ミノタウロスが来れば防ぎきれない。」

デグさんの再度の言葉に船員達は海に向かい小舟を押し出した。

直ぐに舟は水に浮き陸を離れ始める。


「ちくしょう!俺は見殺しかよ。」

ミノタウロスに追われたチャシブが砂浜を走ってくる。

後ろからミノタウロスが迫る。


「跳べ!チャシブ」

私は叫んだ。

もし、彼女が竜力を使い果たしていたら……。

嫌な想像が脳裏を過ぎったが杞憂だった。

[竜跳躍](使1残0)

ふわりと跳んだチャシブは舟に楽々と着地した。


「ブレナ、俺だけ見殺しか?」

チャシブが詰め寄ってくる。


「落ち着け。舟は狭いし、アヤメが重傷だ。」

デグさんが呟くように言う。


「あれ?レイカは?」

倒れているアヤメさんに気が付き、冷静さを取り戻したチャシブが訊いてくる。

私は首を振った。

デグさんは波打ち際で咆哮するミノタウロスを見ている。


「まじかよ!見殺しかよ!デグ、お前の聖女だろ!」

デグさんは完全に無視。

ただ一言


「ブレナ、照明魔法を打ち上げてくれ」


真昼の照明魔法にどんな意味があるかわからない。

レイカさんの弔いのつもりか?


「早く!ミノタウロスが森に帰る前に!!」

再度促され詠唱を始める。


[照明弾](使1残4)

打ち上げた明かりが、ゆらゆらと落ちてくる。


「これでいい。」

デグさんは狭い舟に座ると自らの止血を始めた。


「レイカ!!レイカ!!」

チャシブが島に向かい叫ぶ。

船員の誰も、そして私もデグさんの止血を手伝おうとはしなかった。



二号船に回収され、甲板にアヤメさんが横たえられた。

呼吸が浅く早く顔色が悪い。

肺の腑が半分機能しておらず体内に空気が漏れている様だ。


[治癒]×2(使2残0)


デグさんが手を触れて神聖魔法をかけている。

聖戦士で他人に神聖魔法をかけられるのは珍しい。

アヤメさんが眼を覚ます。

飛び起きようとして苦痛に顔を歪める。


「ここは二号船だ。後は自分で癒やしてくれ。」

デグさんがアヤメさんから手を離して言う。

周りを見渡し、アヤメさんが尋ねる。

「冷夏は?」


「島に置き去りにしちまったよ。」

チャシブが泣きながら伝える。

「俺等は聖女を見殺しにしたんだ。」


「チャシブは勘違いしている。聖女(レイカ)は、これぐらいでは死なない。」

デグさんは海を見つめている。

「ミケから聞いた。レイカは転移魔法が使える。今頃ハルピアにいるはずだ。」


「嘘をつくな!なら何故、俺の方を見ないデグ!」

殺気を出しつつチャシブは短剣を抜いた。

船員達が遠巻きに、こちらを見ている。


「レイカが転移魔法を使える様にミノタウロスを引き付ける必要があった。」

デグさんがチャシブに向き直る。


「竜力が残っておらず、お前が砂浜でミノタウロスに殺されても、時間が稼げるなら良いと考えた。」


「自分はお前を見捨てようとしていた。レイカの為に……」


「まじかよ……」

チャシブは短剣を構えたまま動けない。


[大地母神よ、デグの傷を癒やし給え]

(使用1残3)

アヤメさんが突然神聖魔法をデグさんにかけた。


「ここは私が預かります。チャシブは短剣を納めなさい。」

血の気が足りない、青白い顔をしたアヤメさんが宣言する。


「わかったよ。かわりに自分の傷を早く治せよ、アヤメ。」

アヤメさんは自己治癒の詠唱にかかる。

デグさんは再び1人、海の方に向き直った。



夜、

与えられている小部屋で4人、気まずい雰囲気のまま硬いパンを齧っている。

新鮮な食事が恋しい。


「アヤメ、大丈夫かよ」

沈黙に耐えかねチャシブが口を開く。


「まだ完全じゃない、でも明日もう一度自己治癒すれば大丈夫そう。」

痛みは残っている様だが、顔色も回復したアヤメさんが答える。


「ブレナ、ぶっちゃけ、どうなんだよ」

チャシブが今度は私に話を振ってきた。


「あれはミノタウロス。第一次魔王戦争後期に専用装備込みで、開発された魔獣。白兵戦に優れています。」

「一説では魔法の通じない勇者を意識して……」


「ちげえよ。レイカだよ」

苛立ちを隠さずにパンを噛みちぎる。


「転移魔法は決められたシンボル位置に転移します。ただ行った事がない場所には転移出来ないのでハルピアなら妥当です。」

私なら魔術師ギルドに転移する……はずだ。


「じゃあ、ブレナも使えんのか?」


「ええ、理論上は。儀式に最低3日はかかりますし、術師単体での移動なので試した事はありません。」


「3日?」

アヤメさんが確認してくる。


「大魔法なら普通の魔術と変わらない。前に行方不明になった時、同じ様にレイカが帰還したと聞いている。」

デグさんが私のかわりに答えた。

「照明魔法はレイカへの合図のつもりだ。」


「隔離病棟でも、一人なら逃げられたんだな」

アヤメさんが呟く。


「デグ、冷夏の為に俺に死ね!って言ったな。」


「事実だ」

実際は、そこまで言ってない。だがデグさんは弁明しない。


「じゃあ、必要なら俺がお前を殺しても恨むなよ。」

チャシブは精一杯の虚勢をはっている。

口は悪いがチャシブは臆病な性格。

衝動に駆られないなら、人は殺せない。


「好きにしろ。」

デグさんは、ただ一言だけ返した。

デグはジグが死んでから、段々ヤバくなっています。

最初の頃の章を自身で読み返してびっくり(笑)

さらにまだ誤字などが残りびっくり(苦笑)


嘘を言うな! なら伝説のナレーションにありますね。


私の黒歴史がまた1ページ。

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