失敗した〜
リリさんは貴族です(笑)
マッサージを続ける下級神官に、次からくる人には薬草を処方するか、マッサージをするか、お話を聞くかにしてください。と伝えて、見習いを連れてテントを出た。
入口で反射的に「次の方……」と言いかけた神官の肩を掴み
「中を手伝って!」
と有無を言わせずに言う。
「わたくしはリリ・アルベロ。こうして外で手伝っているだけでも……」
「それなら、私は鈴木冷夏です。中を手伝って!」
強引に中に押し込む。
「リリさんはマッサージ担当!薬師さんは処方!下級神官さんはお話聞いて!」
言い放つ。
「え、あの……わたくしがマッサージ」
「頼んだよ!」
被せ気味に言ってテントをでる。
マドウ、出撃するよ。診断お願い。
隣で見習いさんが啞然としている。
『栄養失調』
「食堂に案内してあげて」
『高齢による腰痛』
「マッサージお願い」
『ストレス性胃炎』
「胃薬とカウンセリング」
『骨折』
「大地母神よ骨折を癒やし給え」(使1残23)
テントすぐ外で行列に対処始める。
神官見習いさんは、最初ワタワタしていたが、いつの間にかスムーズに対応している。
他のテントに比べ行列の減りが早いからか、見習いさんが汗だくだからか、応援の見習いさんが何人かきてくれた。
「上級神官様から伝令です。」
「テントの内の再配置が終了。投薬、マッサージ、カウンセリング、に振り分けました。」
「ありがとう。振り分け指示出すから案内お願いします。」
有能な上級神官も、ちゃんといるんだ。
夕方の閉門まで頑張っちゃうぞ。
『虫垂炎』
「大地母神よ虫垂炎を癒やし給え」(使用1残8)
私の周りに何人か神官がきて、神聖魔法を手分けしてくれているが行列が、なかなか減らない。
それに治療行列以外にも人だかりが出来ていて、神官戦士や聖戦士が人員整理に駆り出されている。
むぅ、トイレ行きたいし、ちょっと休憩したい。
「冷夏、少し休憩して。デグ、護衛を。」
アヤメ!来てくれたんだ、助かる〜。
アヤメが振り分けを始めた。
人狼の件でもそうだったが、アヤメは医療知識もあるチートキャラなんだよ。
私は現場を離れ、先ずはトイレにむかった。
デグさんがついて来るのが少し恥ずかしいが、この人混みでは是非も無し。
「冷夏様は一時休憩に入られます。」
ん?変なアナウンスしている神官戦士がいるぞ。
トイレを出て水を飲もうと食堂に向かうが、途中で神官戦士に止めらた。
「食堂は危険です。」
そうか、栄養失調多かったもんね。
「冷夏様が顔出したら、暴動になりかねません。」
むぅ、なんか凶悪犯みたいな言われよう。
「上級神官専用食堂が関係者様に臨時開放されてますので、ご案内します。」
デグさんを始め、5人の神官戦士に囲まれ上級食堂に入ると、みんなグッタリしていた。
「もう、無理。もう、無理。」
今日、どこかで聞いた声。
「リリさん、おつかれ〜」
声をかけて近づく、リリさんはまるでオーガを見た様な顔して立ち上がる。
「さっきは、ごめんね。気合い入ってたから。」
リリさんは座り直したが、顔色が悪い。
「いえ、気にしていませんわ。」
目が泳いでいる。
「休憩終わったら、もうひと頑張りしよう。」
頼んだジンジャー水を飲みながら話す。
「ぇっえぇ、アルベロ家の誇りにかけて頑張りますわ……」
「じゃあ、そろそろ戻ろうか。」
リリさんにも声をかけて立ち上がる。
後日、聞いた話では神官戦士に囲まれ連れられて行くリリさんは、処刑台に連行される様にしか見えなかったそうだ。
夕方
閉門時間になり、無料診療日は終わった。
後半はアヤメのフォローも、あって随分楽が出来た。
やっぱり持つべき者は相棒だよ。
ん、神官見習いさんが、なんか跪いている。
あの涙目だった最初の見習いさんだ。
確か、レマナさん。
「聖女さま、聖女さまの奇跡に立ち会えました事、感謝いたします。」
なんだろう泣いている。
感激屋さんなのかな?
「大袈裟だよ。レマナさん。それに私は聖女じゃないよ。」
「そんなことは、ありません。恐れながら隣にて数えてました。レイカ様は22回神聖魔法を使われてます。」
むぅ!そんなに使った?
『使っているぞ』
私の神力は8だよね。
『契約の影響で今は24ある』
24!それって……。
『この世界に通常は10を超える神力の生き物は居ない。歴史上の聖女も12が最高値だ。』
やっぱり、変な影響出てない?マドウ!
「そういえば、10回越えてる……」
他の見習いも、つぶやき跪く。
「ホントだ。伝説の聖女様より……」
指折り数えた見習いがヘタリこむ。
「私が来てから6回」
アヤメが、こっそり教えてくれた。
「数え間違いで押し通すのは厳しい。ここは何とか切り抜けて、依頼にかこつけて一度ハルピアを離れよう。」
気がつくと、アヤメとデグさん以外の大半が跪いて、こちらを見ている。
「聖女さま!」
誰かが叫ぶ。
「て、テントを片付けましょう。夕べの祈りは、それからです。」
むぅ〜失敗した〜。
ベタな、なろうらしい事をやって見ました。
私の黒歴史がまた1ページ。




