薬草の森
冷夏視点です。
ジャガイモは以前の転生者の無双の産物です(笑)。
以前は、魔族の林檎と呼ばれていたとかいないとか(笑)
薬草の森は穏やかで、病院のテレビで見ていた里山っていう感じ。
大地母神の泉のパワースポット感とは全然違う。
「村人が手入れしている森」
ジグさんがそう話してくれたので、そんなふうに感じたのかもしれない。
前世ではピクニックとか無縁だったからな〜。
『ピクニック気分とは呑気な事だ。これからゴブリンと命のやり取りするのに。』
「(う~ん。実感ないんだよね。それに病気で長くないっていうのが日常だったから自分が死ぬって言われても、ああそうか…。って感じで)」
『だが、お前は契約をした。闇に帰らずに、新たな世界を旅することを選んだ。』
そう、あの時、私は旅に出る契約をたしかに結んだ。この口が悪いと神様に言われる魔導書と。
「うん。だから……」
「レイカ殿どうしましたか?」
ジグさんに話かけられた。
デグさんは心配そうにこちらを見ている。
つい声に出ていたらしい。
「あ、その、う~ん。ゴブリンってどのあたりに居るんです?」
「猟師小屋に住み着いたようです。放っておくと、急に増えて、村に被害出ますから。」
「急に増える?」
「ゴブリンは縄張りを持って暮らしていますが、狭くなると、新しい縄張り候補を探して数匹の先遣隊を出すようになるんですよ。はぐれゴブリンと呼んでいますが。」
「そして先遣隊が新たな縄張り候補を確保すると、元の集団からある程度の数が、移住して来て急に増えます。」
「兄者!」
見ると2体のゴブリンが、手に武器を持って全力で駆けてくる。
眼だけで合図して、ジグさんとデグさんは左右に分かれた。
うわ〜。敵だ〜。
『慌てずに、もし前衛が怪我をしたら、癒やす。そうでなければ待機だ。』
そのまま飛び込んでくるからと思ったゴブリンは足を止めた。
片方が小剣。片方は原始人が作ったみたいな石斧を構えている。
『ゴブリンは文字はないが、言葉は持っているし、火も道具も使う。鍛冶や農業はしないが、土器は作るし、それを使う。ちなみに雑食だぞ。』
「(それって縄文時代ぐらいの人間じゃない?)」
『呼び出される前の、どこぞの世界では[人間]だったのかもしれないな。』
そうしているうちに、小剣ゴブリンはデグさんの踏み込んだ一撃で真っ二つになり、石斧ゴブリンはジグさんに剣で突き殺された。
血があたりに撒き散らされ、酷い臭いがする。
このままだと、朝ごはんのジャガイモを吐きそう。
「レイカ殿。祈祷を」
ジグさんがこちらを見て言う。
「ふえ?」
われながら、まぬけな返事。。
『聖句の定形文を唱えるだけで良い。そうすれば、不死者化が防げる。』
呆れた様なマドウの声。まぁ念話だけど。
私は慌てて聖句を唱えた。
神様の力なのか、少し、気分の悪さが減り冷静になれた。
『この世界では、二足歩行の生き物は死後[永遠の神]に魅入られる事がある。そうするとアンデッド化して面倒な事になる。魅入られる可能性はそれほど高くはない。』
『どのレベルのアンデッドになるかは[永遠の神]の御心のまま。だが、他の神々は[永遠の神]を嫌っているし、逆もそうだから、神官が聖句で印をつけておけば魅入られなくなる。』
私の感想は怖いとか、そういうんじゃなかった。
「(アンデッド居るんだ。)」
それが、感想だった。
テレビでみたゾンビ映画の舞台はショッピングモールだったな。
『今度、ターンアンデッドを教えてやろう。[追い払う][祓う][還す][滅ぼす]で、それぞれ意味がかわるし、使う魔力量もかわるぞ』
マドウが良く分からない事を話してくれている。
念話中は喋れないんだけれど、それが分からない2人は私が黙っている事を疲れたと考えてくれたみたい。
ゴブリンを倒したところから少しはなれて休憩になった。
冷夏はゴブリンは知らないですが、アンデッドは知っています。
私の黒歴史がまた1ページ。




