カボチャの馬車
シンデレラはこの世界でも、わかりやすい偽名です。
「ここはメスガキが来るとこじゃないぞ!」
「見た目アレだが、商売に来たのか?」
「ちげえよ、三下!」
入口の2人のチンピラに決められたハンドサインを出しながら、俺が言うと「ヶ、同業かよ」と毒づきながら扉を開けてくれる。
交換所で銀貨を木製のチップに交換しながら「情報」とだけ言うとカジノの制服を着た女店員がダイステーブルに案内してくれた。
店員に小銅貨をチップとして渡し、席につくと昼間だというのにダイステーブルは賑わっている。
ダイステーブルはディーラーが振る3つのダイスの出る目や、目の大小にチップをかけるゲームだ。
勿論ディーラーは、ある程度好きな目が出せる技術の持ち主だろう。
適当にチップを掛け待っていると、
「あら、チャシブ、久しぶりじゃない。」
全くの初対面の女が隣に座ってきた。
「覚えてない?シンデレラよ!あっちで飲みながら話しましょうよ。」
少し増えたチップを回収し隅の飲食テーブルに移った。
「初めましてチャシブ、情報屋のシンデレラと申します。」
初めて会ったのに名前で呼んでくるのは、情報収集能力のアピールも兼ねているのだろう。
「デーマンタイト諸島とパライバ商会について聞きたい」
俺が言うと、シンデレラは微笑む。
「銀貨で2〜5枚」
そう付け加えると、シンデレラは話始めた。
「デーマンタイト諸島は大小20くらいの島からなり、1番大きな島はラチア島。ここからでも、竜の島からでも天候良ければ7日で1番端のデーマン島に着く。」
「この諸島は事実上パライバ商会が支配している。ラチア島から銀が産出し、その鉱山を持つのがパライバ商会だから。食料から鉱山で働く奴隷まで輸送しているのはパライバ商会。」
「それ以外の島には僅かな人間の漁民と妖鳥ハーピー、ゴブリンがいるくらい。」
「それで?」
今の所冒険者を雇わなくてはならない事情は見えない。
傭兵でなく、高額な報酬を用意する冒険者を用意する必要性はなんだ?
「しかし、最近妖魔族の商船がラチア島に入港し、しかも諸島でも1番離れたタイト島の鳥の糞の塊を購入してゆく様になった。理由は分からない。」
「本当にわからねぇのか?金の問題か?」
妖魔はよく分からないが鳥の糞を金を出して買うなんて尋常じゃない。
「本当に分からない。探りに行った同志は誰も帰ってこない。」
まじかよ。
だが確かに妖魔族の秘密を探るのはヤバい。
竜影党の影を雇っている噂もある。
「そこでパライバ商会は冒険者を雇い、妖魔達に探りを入れつつ銀塊輸送の護衛もさせる推薦依頼を[魅惑の伯爵夫人]に出している。」
なるほど、謎は解けた。
「銀2枚」
シンデレラは最後にボソりと付け加えた。
要求通り支払う。
が、
「追加の質問もしたし、少し安くないか?」
一応確認する。
「個人的に[竜の卵]とは懇意にしたい。[カボチャの馬車]を合言葉に……」
まじかよ。
初見で情報屋からコード貰えるなんて。冷夏か、菖蒲か、2人共か?わからないがシーフギルドが目をつけるぐらいにヤバい。
「そのチップで飲み物も買えるのよ、チャシブ。」
シンデレラが、わざとらしく振る舞い酒を頼んだ。
その後、しばらくカジノで遊んでから店を出た。
チップが、ちょうど銀貨2枚に交換出来たのはシーフギルドから、俺へのサービスだろう。
なろう読者には鳥の糞ネタは簡単かと。
私の黒歴史がまた1ページ




