再会
何故か喜劇風に。
「禿頭の聖戦士。お姉様の仇を殺りに来ましたわ。」
赤毛のハーフエルフが、いや赤毛のノーマルヴァンパイアが紅い眼を灯らし、同じ眼をした巨漢の従者を連れて、雨降る薄闇から現れた。
「魔術が効かずとも、叩き潰す事は出来ますでしょう?」
赤毛のヴァンパイアが何故か高笑いする。
「お姉さまにハーフエルフ屋の廃棄処分から救って頂いた御恩に報いないと。」
「愛しのお嬢様の命だ。我輩の剣の錆になれ。」
巨漢の戦士。かつてサムスと呼ばれたレッサーヴァンパイアが吠える。
「何が、愛しのお嬢様だサムス!お前はデブ好きじゃなかったのかよ!」
チャシブさんが叫ぶ。
「それにアロンはどうした!」
「もう一人は、飛びかかってきましたので、視線で動けなくしてから、短剣で膾斬りにいたしましたの。なかなか面白い経験でしたわ。」
「『止めろ、止めてくれ』って血が足りなくなるまで叫び続けてましたから。」
酷い話だが、ヴァンパイアは殺しを楽しむ。
「さあ、サムス。その禿頭を叩き潰しなさい。」
レッサーヴァンパイアが咆哮を上げて剣を振り下ろしてくる。
大振りしてきた剣を逸らす為に軽く戦斧を当てたが重い。
剣が折れ弾け飛ぶ。
まともに受けていたら受けきれなかっただろう。
「もはや普通の剣では、我輩の力に耐えきれないな。まぁ、まだアロンの剣がある。」
折れた剣を捨て、新たに剣を抜く。
レッサーヴァンパイアはめちゃくちゃに剣を振り回してくる。
今度は足を使い躱す。
その剣筋は、わかりやすいのだがアンデッドは疲れを知らないので、このままでは、いずれ押し切られる。
「ヴァンパイアになっても剣は下手くそなままじゃんかよ。」
チャシブさんが野次る。
レッサーヴァンパイアはムキになって剣を振り回す。
「小娘。お前はヴァンパイアにした後、可愛がってあげるわ。だから黙って見ていなさい。」
赤毛のヴァンパイアは静観している。
「俺にそっちの性癖は、ねぇ!」
チャシブさんがヴァンパイアに言い返す。
「チャシブ殿。サムス殿を滅ぼすが良いか?」
かつて仲間をチャシブさんの眼の前で灰にしてしまって良いのだろうか?
剣を躱しながら訊く。
「あ、当たり前だろ。俺の知っている食い意地の張った、臆病な、気のいいサムスは死んだんだ。もう、死んだんだよ。」
チャシブさんが一瞬躊躇した後叫ぶ。
「ほざくなデグ。我輩の連撃を何時まで凌げるかな?」
レッサーヴァンパイアの剣の振り回しは続いている。
[神聖付与](使1残2)
祈ると戦斧に女神の力が宿った。
隙を見て踏み込む。
大振りの剣の隙を突くのは容易い。
戦斧はレッサーヴァンパイアを楽々と割いた。
「な、我輩が……」
サムスだったレッサーヴァンパイアは、あっけなく灰になった。
怪力も当たらなければ、脅威ではない。
戦斧を構え赤毛のヴァンパイアに向き直る。
「こ、これで勝ったと、思わないことね!」
赤毛のヴァンパイアは霧になり溶けた。
天気はいつの間にか元に戻り、夕焼け空になっている。
「アロンとサムスの事、ブレナには秘密にしてくれないか?」
帰り際チャシブさんから言われ、秘密にすると約束した。
見知った顔がアンデッドになる。ヴァンパイアや感染タイプゾンビの怖さの元ですが使い古されて最近はコント風に……。
日本的なモヤッとして分からない怖さも、「意味わからない、わかりにくい」と一蹴……。
最近のホラーは、なかなか大変だと思いますよ。
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