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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第9章 再始動

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希少本

ろくな教育機関がなく、印刷技術もない、この世界での知識の習得は時間がかかります。

小さな神殿の内部は思ったより荒れておらず、確かに何物かが住んでいる痕跡があった。

ただ盗賊が住んでいる可能性は低い。

ジャック・オー・ランタンと共存しているのなら盗賊ではなく、死霊術師(ネクロマンサー)になるだろう。

まぁ、何らかの魔導具の力の線もあるが。


ジェーンは迷わず進んで行く。

まるで祈祷書の場所が分かっているかの様だ。

神殿の室内は静かだ、生命有る者の気配はしない。


やがて1つの小部屋に辿り着く、中には棚があり巻物や本がずらりと、並べられている。

「魔術師殿、魔力探知をお願いします。」

ジェーンが指示をしてくる。


「最後の魔力になりますが、よろしいですか?」

もし、ジャック・オー・ランタン以外のアンデッドが出たらどうするのだろう。

中級以上のアンデッドは[通常武器無効]が多い。


「もちろんです。まだ私の聖力は残っています。帰り位なら大丈夫です。」

今更遅いが、この女は信用に欠ける。

自分一人なら大丈夫の意味かも知れない。


「祈祷書さえ手に入れば後の物は貴方がたの自由。魔法のかけられた本なら一獲千金もありえますよ。」

確かに稀少本なら取り扱い単位は金貨だ。

嫌な感じを覚えながらも詠唱に入る。


[魔力探知](使1残0)

本棚の中で光ったのは2冊。

後、棚の片隅の小石。

その本を手に取り確認する。

[不死者の祈祷書]

[ゾンビ作成マニュアル]

どちらも通常の神々の教団では禁書に値する本だ。


「探していたのは、この祈祷書です。そちらの本も希少本ですが、それこそ魔術師殿向けですね。」

ジェーンが暗闇で薄っすらと笑みを浮かべる。


「それは確か[永遠の神]と契約し、ノーブルヴァンパイアになる方法が記載されている禁書では?」

至高神教団では賞金もかかっているはず。


「そうですよ。私は前に申し上げた様に[学問の神]の徒として、あらゆる知識を得たいと思っておりますので。」

一呼吸置いてからジェーンが言う。

「人の寿命では余りにも短すぎます。」



三人(・・)とも、お姉さまの書斎で何をしているのですか?」

後から声がかかる。

いつの間にか扉の所に小柄な人影が立っていた。

3人?室内には4人いるはずだ。


「お姉さまが灰になったのを嗅ぎつけてもう冒険者が来るなんて。やはり人間は駆除すべき害獣ですわね。」

紅い瞳を光らせてその赤毛のハーフエルフが言う。


「まぁ、良いですわ。ノーマルヴァンパイアに昇進した記念に三人(・・)とも殺して差し上げます。」

やはり3人と言った。

ノーマルヴァンパイアには、誰か見えていない。

いや誰かではない、ジェーンが見えていないのだ。


ジェーンは無言のまま悠々と歩み去り、書斎には赤毛のヴァンパイアと[エール樽]が残された。

この世界ではノーマルヴァンパイアが倒されると、そのヴァンパイアが作成したレッサーヴァンパイアの一番古いが個体が昇進します。

ヴァンパイアは中々滅ぼしにくいのです。

例)

ノーマルヴァンパイアAがa.b.cを作って滅び、aが跡を継ぎ、い、ろ、は、を作った。

aが滅ぶとbがAの跡を継ぐと同時に、い、がaの跡を継ぐ。

滅ぼすの、なかなか大変でしょう?


私の黒歴史がまた1ページ。

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