憤怒
デグ視点です。
デグは喋るのが苦手です。
普通に話せるのはジグぐらいです。
レイカとは会話になっていません。
「ようデグ。戦斧と革鎧が届いてるぜ。」
店に入ると、酒場の主人が話しかけてくる。
兄者が少ない貯えから用意してくれた装備が届いていた。
「お前さんも、親父さんの仲間が到着したら、冒険者デビューか。」
兄者は店のテーブルで薬草取りの娘と話している。
村の娘達に人気がある兄者は自分とはまったく違う。
兄者が村を出るのを惜しむ人は多い。
身に着けた革鎧は自分にピッタリだった。
戦斧を手に取る。
「馬子にも衣装だな。一端の戦士に見える。」
酒場の主人が薄くないエールを出してくれるために店の奥に下がった。
そうすると、酒場にいた呑んだくれから声がかかった。
この当たりをぶらついて日銭を稼ぐ冒険者達3人組だ。
このパーティーが、街から装備を持って来たのだろう。
「そういや大地母神の泉で歩き巫女拾ったんだって?」
下卑た笑い。
「どうよ?試したんだろう?具合はどうだった?」
ニヤついた顔。
「兄貴と違ってお前さんは女に不自由してるんだから……。」
限界だった。
持っていた戦斧をテーブルに叩きつけた。
テーブルが木端微塵に粉砕された。
「レイカさまは、聖女だ。」
それだけ言って店を出た。
これ以上なにかを聞いたら堪える自身がない。
後で店の主人と兄者に謝らないと。
テーブルはジグが弁償しました。
店の手前のスペースにあるエールが薄いのは村人なら皆知っています。
私の黒歴史がまた1ページ。




